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本の世界の鍛冶士 柊シズクの物語  作者: 川崎タイチ
アルハンブラ浄水釜 再付与(うちなおし)編
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第21話 ドール達と鍛冶士の想い

 ――ドールには出来ること・出来ないことがある。


 1.ドールは鍛冶士である『主人』の絆により能力が大幅に変わる。

 ローズのドール達は『主人』である『ローズの精神』を糧に生きている。

 鍛冶士から離れて生活出来ない。しかし、主人と共に行動する事が出来る。

 主人が死ぬと、『継承』をしないと、『主人』と共に灰となる。

 よって、ドール達を愛しているなら『死ぬ前』に新たな主に『継承』する必要がある。


 シズクとって、この問題は大きい。『アース』へ戻った場合、ドールとの絆が大幅に遠ざかる気がしたからだ。


 ――しかし、この問題は次の説明で解決できた。


 2.ドールは『鍛冶士の工房』の精神でも糧にして生きていくことが出来る。

 主の留守中に『武具の合成』が可能である。また、工房に宿る精神力を糧として工房のある街であれば自由に行動が可能。

 ――鍛冶士と街は共存だからだ。

 ローズ曰く、『鍛冶士』は街と共に成長し、街と共に生きる職だからだ。

 街が成長する事もドール達の糧になる。また、鍛冶工房の技術力の高さは、『街の食から防衛力・発展』に大きく影響する。


 まさに、『朝食の目玉焼きクライシス』一歩手前まで行った『港町アローナ』だった。

 当然、街の経済に直結する大問題である。昨日頂いた『宿屋ラパンの美味しい料理』も鍛冶士の『再付与うちなおし』の恩恵があるからだ。

 もちろん、鍛冶士だけでなく、『裁縫士』の存在も街の発展に大きく影響する。裁縫士が使う『ハサミ』も鍛冶士の再付与うちなおしが必要だ。良い裁縫士がいる街には、鍛冶士は必要になる。幸い、アローナにも裁縫士は居るとの事だ。


 3.ドール達には不得意、得意分野がある。

 『主人』の出来ないこと、不得意分野はドール達も出来ない。欠点となる。ローズが『家事』が苦手な為、当然ドールも家事が不得意分野である。

 主人が得意分野は、ドールも得意だ。ローズに例えるなら、『鍛冶士としての能力』が高ければ、合成も得意となる。想像力が豊かであれば、『主人』の想いを形にする能力がある。

 また、『戦闘』が得意ならば、ドール達も戦闘に参加出来る。


「シズクよ、ドールについて判ったか?」


「はい、大体ですけど、判りました……あと、凄く力持ちでもあるのですね」


「ご主人!シズクは判ったみたいだぞ!」

「シズクは頭が良い!頭が良い!」

 ローズのドール達はシズクを気に入ったようだ!

 カサ・ミラは、シズクの周りを愛らしい姿で駆け回っている!


「シズクさんの言う通りで、ドール達は見た目より力持ちで行動力もとてもあります。鍛冶士は力仕事もありますが、お酒のジョッキ以外に重い物を持てないローズさんが、鍛冶士として大成されておられるのも、『カサちゃんとミラちゃん』の功績が大きいのですよ」


「ちょ!私だって魔法使いとして杖ぐらい持てるわ!」

 ローズはフィーナの指摘にとても不愉快のようだ。


「ご主人!杖より『酒の入った樽ジョッキ』の方が重い!」

「ジョッキの重さ舐めるな!舐めるな!」

 味方かと思った『カサ・ミラ』から痛恨の一撃を食らった!



 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 4.どうやら、口の悪さも影響するようだ!


 ――『シズクの鍛冶職人日和 第二章 可愛いドールとの生活開始! 第△節 カサちゃんとミラちゃんメッチャ可愛い!』《執筆中につき後日大幅に変更の恐れあり》

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 シズクのドールは1体で、今まさに裁縫士の手で命を吹き込む準備中だ。

 裁縫士には服を合成するだけでなく、ドールの衣装や体のメンテナンスも行う職業らしい。

 鍛冶士とはまた違った世界だ。

 シズクは、この世界の裁縫士は『錬金術師』に近い事も出来るのではと感じていた。


「それでですが……私のドールは……」

 シズクはドールを『お迎え』出来ることにワクワクしていたが、実際どんな子を譲って貰えるか気になってソワソワしていた。


「ん?シズクのドールなら、工房へ配達するように手配しておいたぞ!」

「シズクの工房に『精神リンク』をする必要があるからな」

 シズクは疑問に感じた。

 ……シズクとドールはリンクする必要が無いのか?

「あの、私とはリンクしないのですか?」


「私たちは、『アトリエの一部』なのだ!ご主人は飾りなのだ!」

「私たちは、ご主人の横暴で馬車馬のように働かされているのだ!ブラック!ブラック!」

 先程の説明では、『主が死ぬとドール達も道連れ』になるようだが……?


「おい!カサ・ミラ!!ワシが死んでしまうとアトリエも潰れる。お前らも死ぬって事だぞ!」

 ローズはカサとミラに対してお怒りのようだ!

「ご主人!心配するな!ご主人が亡くなっても、新たなご主人をアトリエにお迎すれば問題ない!」

「次のご主人は、家事が得意な人が良いのだ!良いのだ!」


 ……ドールの正確は『主人』に似るのである!

 自己主張が激しいタイプだと、ドール達も激しいようだ。


「シズクさんのドールさんは今頃工房のソファーで本を読んでいるかもしれませんね?」

 フィーナはシズクのドールも愛読書になりそうだと言っているようだ!


 ……そして、ローズの表情が少し硬くなった。

「シズク、ドールは主人に対して『とても誠実で忠誠心が高い』のだ。主の行動を的確に捉えサポートしてくれる。」

「鍛冶士にとって無くてはならない存在だ。そして、ドール達も『主』無しでは存在出来ない」

「故に……『主』に危機が迫ると、ドール達は『主』を守る行動を取る」

「……例えそれが、『相手が人間でもだ!』ドール達の行動は『主』の責任になる」


「……シズクのドール……エルシュを幸せにしてやって欲しい……」

 シズクのドールは『エルシュ』という名前のようだが……。

 ローズはエルシュに何か思い入れがあるような素振りをしている。


「ローズさん。エルシュさん……をシズクさんにお任せするのですか?」

 フィーナはエルシュの事を知っていた。

 間違いなく曰く付きのドールであるかのような雰囲気をローズとフィーナは出している。


「あのう……ドールのエルシュさんって何かあったのですか?」


 ローズは重そうに口を開いた……。

「エルシュの主が……死んだのだ」

「まあ、90歳で大往生だいおうじょうだから心配はするな」

「エルシュの器になる人材がなかなか現れなくて困っていたのだ」

「いつまでも眠らせておくのも死んだ『鍛冶士』に悪くてな……」


 ローズ達の会話から、名前は『エルシュ』『元・鍛冶士のドール』だと推測できた。

 シズクはこの世界での生活を送るにあたり、経験があるドールが助けてくれそうだ。

 

 ドールに関してやりとりをしている間にフィーナは手際よくキッチン周りを片付けていた。

 酷い有様だったキッチンは元の姿を取り戻し、お茶を沸かした。

 アトリエに茶葉の香りが漂い出した時……。


 ――『ドンドンドンドン!』

 『けたたましい音』を立ててドアを叩く者が来訪した! 


「陛下!陛下!!定例会議のお時間ですよ!神官様や長老会がお待ちですよ!」

「アトリエに引き籠もるのはいい加減にしてくださいよ!親衛隊の身にもなってください!」

「毎回、毎回『テキトー』な言い訳を考えるのも大変なのですよ!」

「って!フィーナ様とシズク殿も来られていたのですか!?」

 聞き覚えのある声……アルバラードだ!


 そして……シズクは聞き漏らさなかった!

 アルバラードは、確かに『陛下』と言っている!


「ご主人!毎回イヤラシい目付きで私達を観る『アルバラード』が来たぞ!」

「ご主人!『アルバラード』を処刑だ!処刑だ!」


「よし!丁度仕上がった武器があるぞ!試し切りにアルバラードを処刑にする!やれ!カサ・ミラ」


「了解!ご主人!『エアリアルソード』の切れ味試す!」

「ご主人!ご主人!『エアリアル・サイズ』の切れ味試す試す!」


 カサはソードを持ち出し、ミラは鎌を持ち出した!

 カサとミラはアルバラードをアトリエから追い払う為に『本気』で斬りかかった!


「おおおおえええ!カサ・ミラ!止めろ!!私はお前らのご主人が神官様達に説教される所を守っているんだぞ!」

「もう限界だから、ローズ様を迎えに来たんだ!」


 カサ・ミラは『ピタッ』と静止し……。


「アルバラード……いつもすまない!」

「アルバラード、ご主人のいい加減さに苦労かけてる!かけてる!」

 カサ・ミラとアルバラードは『やれやれ感100%』でため息をついた!


「おいお前ら!アルバラードを始末するんだ!」


「……ご主人……長老会の連中が口うるさいからサッサと出頭する!」

「……ご主人……アルバラードの言うこと正しい……出頭!出頭!」


「ええい!面倒くさいな!シズク達とのお茶が終わったら行くから、もう少しご老体共を待たせておけ!」


 ローズとシズク、フィーナの3人で軽くおやつタイムを過ごした。

 その間、ドール達はアトリエの片付けをもくもくとこなしていた。

 ドール達は自分達が使う道具の手入れ、整理整頓はキッチリしているようだ。


 ゆったりとした時間は過ぎ、ローズは『定例会議』への参加のため、シズク達はアローナの『シズクの工房』へ帰る事になった。


 ……戻れば、シズクのドールが待っている。


 シズクの足取りはとても速くなった!

 ……しかし、アルバラードがローズを呼んだ『陛下』を気にしながら……。


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