第17話 アローナの正鍛冶士と宿屋『ラパン』の唐揚げ!
シズクたちはアルハンブラの浄水釜から『多少のけが人』を出しただけで『死者0』で無事に帰還することが出来た。
フィーナの話では、前回は親衛隊がほぼ全滅、賢者・聖戦士も無事では済まなかったらしいのだが……シズクは信じられなかった。
あの『温厚なナキ』が人を殺める事など想像できなかったからだ。
シズクなり考えてみたが、納得できなかった。
素直に『上手く行った』事を今回は喜ぶことにした。
アルハンブラの城下街に戻ると『王の使いの者』が、シズクたち一行を出迎えてくれた。
「おお!お戻りになられましたか!アルバラード様!ご無事でなによりです!」
「して、首尾の方は?」
「侍従長補佐のバルド殿、私の労を労う前に今回の再付与の一番の功労者に対して礼を言うべきだと思うのだが」
「し、失礼致しました。フィーナ様、この度の『浄水釜の再付与』ありがとうございました。港町アローナの……」
フィーナはバルドの口を塞ぐように『バルドからの感謝の意』に口を挟んだ。
「とても不愉快です。シズクさん、今日の所はアローナに戻りましょう。夕ご飯は宿屋の『ラパン』でいただきましょう!あそこのシチューはゼッピンですよ!」
フィーナは『侍従長補佐のバルド』を無視するかのように、シズクを連れてアローナに戻る準備をした。城内では、晩餐会の用意がされていたが、フィーナは断った。
不機嫌になったのは『シズクを蔑ろにした』事であることは明確だった。
シズク自身、ずっと引っかかっていた事があった。
「あのう……フィーナさん。私が鍛冶士として『レリクスのスフィア』の『再付与』することはあまり好ましくなかったのでしょうか?」
――シズクは『本脳的』に感じ取っていた。
――『身分』的な何かが適してないのではないかと。
シズクの考えは『100%』的中していた。
アルハンブラに来てから色々な人から傲慢な態度を取られていた気がしていた。
フィーナはシズクの問いに重い口を開いて答えた。
「……本来であれば、シズクさんはレリクスに入ることができる『身分』ではないのです」
「ある一定の『位の者』しか入ってはいけない事になっているのです」
「それを『私』が無理に通したのです」
「どうして……私の為に……そこまで……」
シズクの表情が重く……暗くなった……。
「シズクさん……嫌な想いをさせて……それもこれも『私が鍛冶士として』至らないからです」
「本来であれば、私がレリクス最深部に行くべき……」
「ですが、鍛冶士としての『適性』は私には無いのです」
「私には到底、浄水釜の再付与など出来ません。そして……失敗して『死者』を出していたでしょう」
「……私は……自分が出来ないことをシズクさんに……これは言い訳ですね」
フィーナはシズクに対して『謝り』はしなかった。
この場の場合は、『利用してゴメンナサイ』と一言ぐらい謝罪があっても良いのではないか?
フィーナのシズクに対する想いに……シズクは……。
「私の今の実力では、フィーナさんの後押しが無ければ、私はレリクスに入ることすら出来なかった」
「仮に入れたとしても、『親衛隊』や『アルバラードさん』の助けは得られなかった」
「何より……失敗した時の責任は私では取れない。レリクス……浄水釜とは、この国にとって重要な設備って事ですね」
「アルハンブラの皆さんに『快く思われない』のは当然だと思います。まだ実績の無い私ですので……」
そして……フィーナが一言……。
「ありがとう。シズクさん……私は貴方を『アローナの正鍛冶士』として胸を張って宣言できるわ」
シズクがファバーダに来て……アローナの街に来て、『たった3日』しか経過していない。だが、フィーナの想いはとても重く、真っ直ぐにシズクに伝わった。
フィーナがシズクの『鍛冶士としての才能』を素直に認めた事を。
……そしてこの場合、『謝罪』ではなく、『感謝……ありがとう』という言葉こそ、フィーナとシズクの間には正しいと二人は感じていた。
「フィーナさん、これから鍛冶士として、よろしくお願いします」
シズクはフィーナの想いを組んで今回のゴダゴダに対してこれ以上詮索しない事にした。
アルバラード、フィーナと共に宿屋『ラパン』で夕食を取ることになった。
◇
「シズクさん!今日の夕ご飯は、協会が出してくれるので、美味しい料理食べちゃいましょう!アルさんは自腹で!」
「えええ!私のも出してくださいよ……」
シズクはフィーナとアルバラードは仲がとても良いことが判った。
シズクは少しだが安心をした。アルハンブラの対応にご立腹のようだったフィーナだが、元のフィーナに戻っているようだった。
……そして……。
「アル、私の分もお前が払っておけ」
「えええ!どうしてですか!?ローズさん!」
3人の宴会に一人乱入してきていた。
彼女はアルハンブラの住人らしいが……。
「あのう……ローズさんって……何者?」
見た目は……シズクよりとても若そうに見える……端的に言うと合法ロリだ!
ゴシックロリータの服を着て『見事なまでのロリ』だった!
「店長!お酒追加!」
……酒豪でもあった!
「相変わらず、お強いですね……」
「フィーナ!水みたいなものよ!……むしろ水を飲む方が気分悪くなるわ……」
「ローズさん、仕事中もお酒飲んでいる……お酒以外の飲み物って飲んでないのでは!?」
『ハイお待ち!大カエルの唐揚げだよ!』
「おおお!きたきた!アローナのラパンの唐揚げはゼッピンだからね!!」
ローズは目を輝かせて唐揚げをほおばった!
シズクは『カエル』という単語が気になった……が、『見た目は鶏肉の唐揚げ』だった。
シズクは『この物語で最大の勇気を振り絞り』試しに食した。
「ほ、ホントに美味しい!まるでケンタ君みたいですね!」
「け、ケンタ君!?シズク殿は『ケンタウロスの肉』を食べた事が!?」
アルバラードは驚きの表情を見せた!
「ほほぅ……アルよ。あの浄水釜の再付与をスカッと片付けるだけの実力の保持者よ。やっちまっていても不思議じゃないぞ!」
ローズはアルバラードをそそのかした!
「ケンタ君は鳥の肉です……私のいる世界では、とても美味しくて有名なのです」
「……ん?ファバーダの西の世界にはケンタ君という店があるって事か……?」
シズクは『ローズはまるで異世界ではなく』、ファバーダの事を言っているように感じとった。
――確か……フィーナは『アローナの街には異世界の人』がよく来ると言っていた……。
「ああ!シズクさん!早く食べないと唐揚げなくなっちゃいますよ!ローズさん、見た目は子供ですけど凄く食べますので!」
「……ああ、はい!唐揚げ頂きます!」
シズクはフィーナが『何かごまかしている』と察し、この場は『会食の雰囲気』に飲まれておくことにした。





