第16話 『ナキの本』と『浄水釜のスフィア』
フィーナは加護を2つ以上同時に付与するのは難しいとは言わなかった。
むしろ、出来ないと言いたそうだった。
しかし、シズクが再付与したポットには『火属性と水属性』の加護が宿っていた。
――シズクは不可能だと思われていた事を成し遂げた!
しかも『火と水』だ。対極にある属性を付与したのだった。
だが、考え方を変えれば、コーヒーという嗜好品を楽しむ道具だ。
理に適っているのではないかとシズクは考えていたのだ。
「ナキさん如何でしょうか?」
「元々は火属性の加護を受けていたポット、水属性のドリッパー、そして火属性のサーバー」「この3つは本来であれば『火と水』両方の加護を受けるべきだと……」
シズクが出した答えに対し、ナキは語り出した。
「これらの道具は『戦いの道具』ではない……したがって『火と水』が対立ではなく、お互いを称え合い、助け合い存在するべきだということかな?」
シズクが言いたかった言葉をナキは的確に紡いだ。
「はい、私はこう考えました」
「ポットは熱を求め、そして癒しの水を求め……」
「ドリッパーはコーヒーを美味しく、そして湯の温度を落とさず、適温で抽出し、香りを立て、楽しませて……」
「サーバーはベストな状態でコーヒーを最後の一滴が落ちるまで支える器だと」
「これらを実現するには『火と水』の力が供に協力する必要があると想いました」
「だから、『火と水』両方の加護を与えるべきだと私は……想い……加護を与えました」
シズクはナキに自分の出来る精一杯で『コーヒーとお菓子のお礼』をした。
「シズク……貴方の想い、とても嬉しいわ……」
「では、折角なので水瓶の再付与が終わったら、コーヒーを淹れてみましょうか」
水瓶の再付与は『水属性低下』の回復をした。
元々キレイな『井戸の湧き水』を汲み置きして、使い勝手が良いようにと設置された物だ。
シズクはナキのいる部屋の『玄関』から出て、井戸から水を汲み、補充もしておくことにした。
――外は不思議な空間だった……。
――満点の星空……。
――微かに見覚えのある『神社』……。
シズクはぼんやりとだが……『この場所を知っている』気がした。
……この世界は『神様の世界』ではないかと感じた……。
井戸の湧き水から水を汲みナキのいる部屋へと戻った。
再付与をした水瓶に水を入れ、再付与は無事終わった。
……シズクとナキは『コーヒー』もう一杯楽しむことにした。
「ありがとう、シズク。これで私の大好きな『癒しのひととき』を楽しめるわ」
「お礼として、この『本』を差し上げるわ」
ナキは『人では理解できない』言葉を紡ぎ……一冊の文庫本を出した!
「色々な本を読んでいるシズクからしたら『よくある悲しい物語』かもしれないけど、もしよかったら読んでね」
「ありがとうございます!」
シズクが『読んだことが無い本』を貰うことが出来た。
……しかし、表紙の『字』が読めなかった。
「この本を読むには、その世界へ行けば読むことが出来るわ」
「あのう……他にも異世界があるって事ですか!?」
「ええ、あると想えばある……ないと想えば無いわね……でも、その本はファバーダでは読めないから、自分の世界に戻ってから、『興味があれば』読むといいわ」
「では、私はそろそろ『浄水釜』に戻ります。フィーナさん達を待たせしておりますので……」
「お別れの時間ですね、また会える日を楽しみにしているわ」
そして、シズクが部屋を出ようとした時……。
――来たときのドアが無い!
――元々……ドアは一つだけだった?
記憶が曖昧だった……。
「シズク、私が渡した『本』の最後のページを開くといいわ」
ナキの言う通り『よくある物語の本』の『最後のページ』を開いた!
……そして最終ページを開くと……!
最後のページを開く瞬間に、ナキから一言……
「そちらの世界の……『私』……仲良く……」
シズクは、彼女の言葉を最後まで聞くことは出来なかった……だが、彼女の想いは『ふんわりとだが』受け止めた。
シズクは本の最後ページを見てはいるが、『とても大切な事が書かれている』が、シズクは確認が出来なかった……。
そして、『本能的』に本を閉じ、目線を上げると……!
目の前には『巨大なスフィア』とスフィアを支える『大きな台座』の前に立っていた!
スフィアに大量の水が流れ落ち、伝って水が台座に流れ落ちている。
――まるで流れ落ちる水を浄化しているかのように……。
◇
シズクは早速浄水釜の再付与を始めようと思った……。
――っと、その時。
「シズクさーん!再付与無事に出来たみたいですね!」
フィーナが最深部まで入ってきていた。
「フィーナさん、私……まだ何もしてないですけど……?」
シズクは『ナキサワメ』とコーヒーとお菓子を楽しんで、ついでにコーヒーグッズの再付与を実行しただけだ。
一連の出来事をフィーナとアルバラードに説明すると。
「シズクさん!その方は……このレリクスを守護精霊様ですよ!」
「ええ、ナキさんからその事は伺っていますけど……」
シズクは『とても優しい老婆の精霊』の話を語った。
「あのう……シズクさん?そのお話本当ですか?」
「前回の再付与は『死人』が大量に出るほどの惨劇があったくらいですよ!」
「ああ、だから我々は、第二階層で皆待機していたのだ」
シズクは二人に対し、人生で最高の『ジト目』をキメた!
「でも……シズクさんの話だと、前回と大幅に違いますね」
「私の父が行ったときは、精霊様とスフィアの前で『壮大なバトル』がありましたけど」
「まあ、だから今回は『年頃の娘の鍛冶士を……』っと、フィーナさんからの提案で……」
――電光石火のスピードでアルバラードの腹部に蹴りが入った!?
……アルバラードはその場でうずくまっている。
「シズクさん、完璧120%の再付与ですよ!」
「父がやったときよりスフィアの輝きがキレイですよ!」
フィーナはシズクの仕事に大満足のようだ!
「私、本当に何もしてないのですけど……」
「そうなんですか?何か心当たりありませんか?」
心当たりあるといえば……。
「強いて言うなら、水瓶を再付与したぐらいかな?」
「丁度、スフィアの台座になってる……よく似てはいますが、大きさがかなり違いますよ?」
フィーナはとても驚いた顔をした!
「それって!コアですよ!浄水釜の心臓部ですよ!」
「今まで外装の再付与出来れば及第点だったんですよ!」
フィーナはシズクの働きにとても満足している。
「アルさん、起きてください!戻りますよ!」
シズク達は事故・けが人も最小限で再付与が終了した。
今夜は、『浄水釜の再付与成功』と、『シズクの歓迎会』が『アルハンブラの迎賓館』で開かれることになった





