第18話 ラパンのレシピと暗黒騎士
大カエルのから揚げを平らげ、次々と美味しい料理のフルコースだった。
時々飛び込んでくる『モンスター的材料』に少し戸惑ったが、どれもこれも美味しかった。
――そして最後のデザートが運ばれてきた。
『あいよ!ラパン自慢のチーズケーキだ!』
「おおおお!これが伝説のチーズケーキか!?」
「某国の技術を使ってミルクから生成されたチーズをたっぷりと使用したケーキなのだ!」
シズクは『チーズケーキ』に違和感を持った……。
「あのう、これチーズ……ケーキですよね?」
間違いなく、『シズクの世界』のケーキそのものだった!
「そうです!そうです!このラパンに伝承されている『秘蔵のレシピ本』で忠実に再現されたデザートなのですよ!」
フィーナは目を輝かせていた!
……しかし、シズクの口に合いすぎるこの『ラパンの料理』が、もしかすると『日本人の料理本』の可能性を感じた!
材料こそ、この世界の物ではあるが、『レシピ』がシズクの世界の家庭料理すぎだ!
……宿屋ラパン……。
……見渡すと……。
「フィーナさん、この『ラパン』のオーナーって……『私と同じ世界』の人ではないですか?」
そう、宿屋ラパンは、日本人が田舎暮らしを憧れて作った『ペンション』のようだった!
シズクは、シズク以外の日本人がこの街『アローナに住んでいる』と思った。
「おいおい、シズク。何を訳の判らない事を言っているのだ?」
シズクがフィーナに訪ねたが、ローズが口を挟んだ。
「ラパンの店主は、『元々、アルハンブラの生まれ』だぞ!」
「そうですよ、鍛冶士シズク姉さん」
奥からラパンの店主が出てきた。
……見た目は……。
……ウサ耳の……。
オッサン……!?
「おお!バニラ姉!久しぶりだな!」
ローズの知り合いのようだ!
姉さんというより……オネエだ!
新人類……地球人ではないことだけは確定した。
「バニラさん!お世話になっております!」
アルバラードは若干凍り付いているようだ!
「おう!アル!久しぶりだね!」
「バニラさんが現役を退かれて以来ですね」
「シズクさん、彼……おっと……姉さんは、我々親衛隊の長だった人でして、私が親衛隊に選ばれた時にバニラさんの最後の弟子としてお世話になった方なのです」
「そうだったわね!あの頃のアルは生意気で可愛かったわね!」
「ということは、バニラさんも聖戦士だったのですか?」
シズクは屈強な肉体のオッサン……おっと……おねえさんに質問をした。
「わたしは……暗黒騎士だったわよ《ハート》」
「え!?聖戦士の真逆……ですよね?」
「えーと、シズクさん、勘違いされてそうなので解説しますが、聖戦士と暗黒騎士は兄弟みたいな感じですよ」
「闇の属性の騎士が『暗黒騎士』で、光の属性の騎士が『聖戦士』ですので」
「得意とする属性の違いだけで、本質的には一緒なのですよ」
「あ!丁度良かった!バニラさん!」
「ん?私に何かあるのかい?カレシを紹介して貰えるなら大喜びだわ!」
フィーナはオモイッキリスルーして……。
「シズクさんのパーティーに入って貰えませんか?」
「アルさんは全くアテに出来ませんので……」
「ええ!僕アテになりませんか!?」
「ならないでしょ……だって、アルハンブラ動き出したら何処かへ行っちゃうでしょう!」
「ああ……そうですよね……」
「アルよ、アローナに残りたかったら、残ってもいいぞ!」
ローズにどういう権限があるかは判らないが、アルバラードがこの街に残る許可がでた!
「というより、私も『シズクに興味がある』からこの街に残る!」
「ええええ!ローズさん絶対ダメです!ご自分の立場判っていますよね!アルハンブラどうするのですか!」
「数年程、私が留守にしても問題ないだろう?」
「大ありです!」
「……チッ」
ローズは舌打ちをした。
「フィーナ嬢よ……その『意味』判って言っているのだな?」
「ええ、シズクさんは、この街の鍛冶士です」
「是非、お守りください。アローナの仲間として」
「ワシはいいぞ!フィーナ。微力ながら力を貸そう!」
「ローズさん!だから……アルハンブラを降りるのですか!」
ローズとアルバラードが重要な話をしているであろう『フィーナとバニラ』の会話に割り込んできた。
「……まあ、フィーナ嬢が言うなら断る理由はない」
「鍛冶士シズク・アローナに、『宿屋ラパン店主・バニラ』は全面的に協力を惜しまないとするわ。よろしく!シズク《ハート》」
「あの!ありがとうございます!鍛冶士としてまだまだですけど……よろしくお願いします!」
シズクは、『宿屋・お食事処兼、暗黒騎士のバニラ』の協力を得られる事になった!
「よし!では、私も協力を約束しよう!こう見えても『ウィッチLV100』だからな!」
ローズはドヤ顔をキメた!
「いや、だから!ダメです!ローズさん!」
アルバラードは呆れている。
……だが、シズクはふと考えた……。
賢者『フィーナ』……協会の用務員
聖戦士『アルバラード』……親衛隊隊長
魔法使い『ローズ』……???
暗黒騎士『バニラ』……宿屋の店主
魔法剣士『シズク』……アローナの鍛冶士
――バランスが良いのではないかと?
「もし、叶うなら、この5人で一度は『冒険』してみたいですね!」
「シズクさん、その『物語』叶うといいですね!」
「ですが、皆さんお仕事バラバラですよね」
「ん?全員……バラバラでも無いかな?」
ローズは意味深な事を言った。
「あ、そうだ、シズク。明日私の家に来るといい」
「アルハンブラの浄水釜の再付与の礼をしたい」
「あの、ローズさんのそれは構いませんが……十分なお礼は、アルハンブラから協会を通して頂けるとお聞きしていますけど?」
「ああ、そうだが。個人的にシズクには感謝している」
「私は、浄水釜の再付与は出来ないからな」
「あと、うちの者がシズクに『無礼』をしたとアルから聞いた。十分な礼を個人的にしたい」
――ローズは『とても美味しいペンダント』を『アルバラードだけ』に見せるかのように……そっと取り出し……。
「……アル、明日シズクを私の『別邸(アトリエ)』に案内しろ」
「……承知しました。『ローズ・アルハンブラ様』……」
――一瞬だけ『二人の』雰囲気が変わった。
シズクはその様子に気付いていないようだったが――。
フィーナとバニラは、ローズの行動を認識していた。
――正しくは、フィーナが『ローズたち2人の様子』にシズクを気づかせないように計った。
明日、再び『アルハンブラの別邸(アトリエ)』に行くことになった。





