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魔法使いと私  作者: りきやん
みんな仲良くしましょうね

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23/154

文字が書いてありますよ

『こっち、こっちに来て』


 聞こえる。やっぱり聞こえる。


 ちょっと待って、これ幽霊とかそういうオチだったら笑えない。本当に笑えない。


「シ、シオンさん」


「なんやー?」


「あの、やっぱり声が聞こえるんですけど……」


 私が真っ青になって、そう報告している間にも、声が何かを訴えてくる。


「声? なんて言うとるんや?」


「こっち来て。って、さっきから、ずっと……」


 シオンさんは、立ち止まって振り返ると、うーん、と口に手を当てて悩む。


「リザちゃん、ちょいと失礼」


 スッと、二本指を私の額に当てて、シオンさんは小さく呪文を唱えた。


「彼の者に掛けられし呪の言、我の前に晒さん」


 ふわり、と額が温かい光に包まれる。


 呪いが掛けられてるのだと、シオンさんは踏んだのだろう。呪い晒しの呪文を唱えたようだ。


 師匠だったら、何の呪詛かも確かめずに解いちゃうんだろうけど。当たり前だけれど、普通の人はそんなことできない。


 というより、シオンさんって魔法使いまがいのことも出来るんだ。そして、外と違って、ここは魔力は吸い取られないのね。


「うーん、呪い掛けられてる感じではなさそうなんやけどな」


「あ、あの、もしかして、幽霊……ってことは……」


「十分に有り得るで」


「うわぁ……」


「なんにせよ、正体の分からん声には耳を貸さんことや。間違えても呼びかけに応えたりしたらあかんからな」


「はーい」


 シオンさんは自然に私の手を取ると、つないだまま進んでくれる。怖かったから、ちょっと嬉しいかも。


 ごうごう、と音が酷いだけで、ここにはどうやら、魔物もいないようだ。


「シオンさんて、魔法使いなんですか?」


 さっきの呪い晒しの呪文を思い返して、私は質問する。

 けれど、シオンさんは私の質問を一笑した。


「ちゃうちゃう、俺は魔法は大して使えへんで。攻撃魔法なんか、発動すらせぇへんもん」


「でも、さっきの魔法は?」


「あー、職業柄必要な魔法はなんとか使えるようになったんやけどな。呪い自体を解いたりはでけへん」


「でも、武器は魔法剣ですよね?」


「残念ながら、かなり素材に頼っとるけどな」


 シオンさんは、空いてる方の手でかちゃり、と剣を鳴らす。


「さっき話した、ヴァンパイアの髪の毛だけやのうて、それこそ月光鳥の羽根からピクシーの粉まで、ありとあらゆる魔法素材で強化しとんねん」


「強化すると、どうなるんですか?」


「俺の魔力が微量でも大きく反応して、増幅してくれるんや」


「私も、何か道具使えば、魔法が上手く扱えますかね?」


「うーん、どうやろな。俺みたいな武器使う人間やったらいくらでも手段はあるけど、呪文を使う人間は限られてくるんちゃうか?」


 さすがのシオンさんでも、畑違いのことは分からないか。


 師匠に聞けば、知ってるんだろうけど、あの師匠のことだから「自分で調べろ」って言うに決まってる。まぁ、師匠の言う事は最もだけどね。


 帰ったら、スノウと一緒に何か媒体になるものでも作ってみようかな。


 真っ暗な通路を進んでいると、私たちは大きく開けた円形の場所に出た。ドーム型にくり抜かれたその空間は、じめじめと陰気で、どうしようもなく闇に包まれている。


 シオンさんのライトでは、ちょっと心許ない。


『こっち。ねぇ、こっちに来て』


 まただ。


 シオンさんと話していたからか、無視できていたけれど、また声が聞こえて来る。


 生気のない、けれど、叫んでいるように悲痛な声。訴えるように、私に自分の居場所を知らせて来る。


「シオンさ……」


「おー! なんやあれ!」


 私が話しかけようとした矢先、シオンさんは嬉々とした表情で真っ暗な中を歩いて行く。もちろん、手を引かれている私がそれに抗えるはずもなく、仕方なしについて行く格好になった。


「おぉ! 見てみぃ、リザちゃん! 石碑に宝石が埋まっとるで!」


「ほ、ほんとだ……」


 開けた場所の中心にぽつん、と立っていた石碑。その表面には、美しいクリーム色の宝石が埋まっていた。まんまるのその形は、まるで満月のようだ。


 こ、これは、ちょっと感動するかも。


『ようやく、来てくれた! さぁ、早く! 早く! ここから出して!』


 言葉が変わった。


 今まで、こっちに来いとしか言わなかった声が、今度は出して、と。なんだか不気味になって、宝石を見つけた感動も薄れてしまった。


「シオンさん……」


「なんやー?」


「声が、ここから出してって……」


「無視しときぃ。応えなきゃ、向こうはなんもできひんから」


 そういうものなのだろうか?


 全く以て疎い私には、不安しかない。


「大丈夫やて。呼びかける。っていうのは、相手が言葉を返さへん限り、成り立たへん魔法や」


「そ、そうなんですか?」


「こっちが応えると、向こうは認識されたことを自覚する。ほんで、悪さしてくんねん」


 シオンさんは、いいながらクリーム色の宝石に手をかける。そして、私があっと言う間もなく、それを外してしまった。


「それ、外して平気なんですか?」


「ん? あぁ、特に仕掛けがしてある訳でもあらへんし、大丈夫やろ」


 そして、それを鞄にしまう。


 クリーム色の宝石を失った石碑は、心無しか寂しく見える。それをじっと見つめていて、何か文字が書かれている事に気づいた。


「シオンさん、その石碑、文字が書いてありますよ」


「んー? どれどれ?」


 シオンさんは、ライトを近づけると石碑を照らす。どうやら、ルーン文字ではなく、古代ギリヤ文字のようだ。


「あかん、この文字読めへんわ」


 お手上げ、と降参ポーズを取るシオンさん。


 これは……役に立てる時が来たかもしれない!


 私、古代ギリヤ文字は読めるんだ!

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新作「グレーテルと悪魔の契約
ちょい甘コメディファンタジーです。
よろしくお願いします〜!
by りきやん

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