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魔法使いと私  作者: りきやん
みんな仲良くしましょうね

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声、聞こえませんでした?

 シオンさんが祭壇を調べると、ちょうど中心部にルーン文字が書いてあった。


 以前来たときは、暗かったし必死だったので、そんな文字があることに気付きすらしなかった。残念ながら、ルーン文字は勉強中の身なので、私にはなんて書いてあるか分からない。


「シオンさん、ルーン文字読めるんですか?」


「ルーン文字読めへんで、トレジャーハンターが勤まるかいな」


 シオンさんは、二振りある内の片方の剣を抜くと、ルーン文字の真上に突き立てる。


「どうやら、魔力を流し込めば入り口が開く仕掛けらしいで」


 剣の刀身が光を帯びる。しかしながら、それは一瞬だけですぐに光は消えてしまった。


「うーん、あかんかぁ。魔力吸い取る祭壇のくせして、鍵開けるのに魔力必要てどういうこっちゃ」


 困ったように唸るシオンさん。シオンさんにはお世話になりっぱなしだから、ここらで少しは役に立ちたいんだけど……。


 私は未だ服の中に潜り込んでいるスノウに声をかけてみる。


「ねぇ、スノウ。あなたの羽根、シオンさんにあげることってできる?」


 ピィ! と元気な声で返事をしたスノウは、私の胸元から飛び出すと、シオンさんの頭上で旋回してから羽ばたく。


 ひらひらと数枚落ちた羽根は、シオンさんの頭の上に乗った。


 昼間ですら、あの夜のときのように光って見える。その光景は何度見ても美しい。


「おぉ! 魔力が回復しよる!」


 シオンさんは、目をまんまるに開いてスノウを見上げる。私が直接役に立ったわけではないから、少し複雑な気分だけど。


「おおきになー! スノウ言うたか? 後で御馳走したるからなー!」


 シオンさんの呼びかけにスノウは応えず、私の頭の上に再び戻って来る。


「ありがと、スノウ」


 ピッ、と短く鳴いたスノウは、そのままそこに落ち着いた。シオンさんは、それを見て苦笑している。


 そして、二、三回肩をまわして、よしっと気合いを入れた。


「よっしゃ、ほんなら、もっかい挑戦してみますかー!」


 シオンさんは突き立てた剣を握ると、小さく呪文を唱える。


「魔の脈々汝の律に従いここに巡る」


 刀身が光を帯び、祭壇が地鳴りのような大きな音を立てて動き始める。あまりの揺れに立てなくなった私は、その場にぺたんと座り込んでしまった。


 そんな中、シオンさんは平気な顔をして立っている。これが、経験の差、というやつなのだろうか。それとも、ただの運動神経の差、なのだろうか。


 地鳴りの中、シオンさんの剣が突き刺さっている目の前に下り階段が現れた。


「すごい……」


 遺跡や神殿の仕掛け、ってこういう風になっているんだ。文献で読んだことはあるけれど、この目で見たのは初めてだ。思わず感動して、言葉を失ってしまう。


「ほな、下りよか」


 それを当たり前のように受け止めるシオンさんは、ただの守銭奴ではなく、やはりトレジャーハンターなのだろう。世界中を旅して、いろんな場所に行って。


 ちょっと憧れるな。


 へたり込んでいる私の手を取ると、シオンさんは引っ張って立ち上がらせてくれた。そして、私たちは一緒に祭壇の階段を下りて行く。


 中の階段は螺旋階段になっていた。下りれば、下りるほど、外の光は小さくなり視界が真っ暗になっていく。


 頭の上でスノウが小刻みに震えているのを感じて、私は服の胸ポケットに入れてあげた。かくいう私も、少し膝が震えているのだけど。


「リザちゃん、大丈夫かぁ?」


 先を歩いていたシオンさんが振り返って立ち止まってくれる。それから、カチリ、と音がして光の球が浮かんだ。


 街でよく見かけるライトだ。


 大抵の人は火で周囲を照らすランプを使うことが多いけれど、ちょっとお金を持ってる人はシオンさんが使ったような魔力を込めてあるライトを使うみたい。


 私の場合、師匠といれば、ランプもライトも必要ないのだけれど。


「怖かったら、上で待っててもええんやで?」


「大丈夫です! ただ、こういう場所来るの初めてなんで、どうしたらいいか分からなくて」


「せやなぁ、俺も初めての時はビビリまくっとったかんなぁ」


 んー、とシオンさんは笑うと再び歩き始める。


「とりあえず、魔物も気をつけなあかんけど、こういう場所では仕掛けが一番危ないねん」


「仕掛け?」


「せや。遺跡は特にやな。対侵入者用のトラップがわんさかあるさかい、気ぃ抜くと大怪我するで」


「え……」


 思わず足を止めてしまった私に、シオンさんは苦笑する。


「安心せぇ。ここは、そんな大きなトラップはないはずやで。入り口のガーディアン、鍵を見ても危ない遺跡とはちゃうと俺は思う」


「どうして分かるんですか?」


「まず、ガーディアン。本当に誰も入れたくないんやったら、あんなのろまは置いとかへんで。威嚇用、又は侵入者を試すためのガーディアンやろな」


「そんなことまで分かるんですか?」


「勘や勘。こう見えても何百いう遺跡巡ってきとるからな。一番危ないとこやと、魔法も使えへん、物理攻撃も効かへん、打つ手無しのガーディアン置いてあるで」


 そんなガーディアンに出会って無事なシオンさんて、実は師匠より強いんじゃないだろうか?


 実際に剣を使っている姿を見たことはないけれど、おそらく魔法剣士だろう。刃になんらかの付加効果を掛けて攻撃する術がある、というのは知識としては私も知っている。


「お、階段終わったで」


 シオンさんの言う通り、階段の最後の一段に差し掛かった。


 ライトを頼りにそっと足を踏み出す。今、ここでこの光が消えたら、本当に何も見えないだろう。


 一寸先は闇とはよく言ったものだ。


 ごうごうと、風のうなり声がする。ただただ、不気味でしかない。それに、目が見えない分、聴覚が敏感になっているのかもしれない。いつもよりも、音が耳に刺さる。


『……っち……き……』


「え?」


 私はハッとして闇の中を見つめる。


 不審に思ったのか、シオンさんが首を傾げた。


「どないしたん?」


「今……声、聞こえませんでした?」


「声?」


 シオンさんは眉根を寄せて、目を瞑る。しばらくそうしていたけれど、諦めたように首を振った。


「何も聞こえへんで」


「……空耳かなぁ?」


「風の音がそう聞こえたんちゃうか? やかましいで、ここ」


 本当に空耳だっただろうか?


 確かに、誰かの声が聞こえた気がするのだけれど。


 釈然としない気持ちのまま、私はシオンさんと共に奥へと進んで行った。

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新作「グレーテルと悪魔の契約
ちょい甘コメディファンタジーです。
よろしくお願いします〜!
by りきやん

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