04
「あの、シオンさん。この前は素敵なペンダントありがとうございました」
「なんや今更。どうせ、タダで手に入れたもんやし、気にせんでええで」
「いえ、でも、すごく良いものみたいなんで・・・」
スノウに先導してもらいながら、私たちは森の中を進んで行く。
シオンさんがいるので、私は大した装備もせずに森に足を踏み込んでいるけれど、師匠にばれたら、確実に怒られそうだ。
まぁ、昼間だし視界も良好だから、大丈夫かな。
見かける魔物も、ルーニーラビットやドライワームのような大人しい魔物ばかりだし。
ただ、せっかく引っ張り出した一張羅が汚れてしまうのはちょっと気になる。
「あれなー、ヴァンパイアのところで貰てきたものやねん」
「ていうか、シオンさん、そんなところに行ってよく無事でしたね」
「んー?ま、それは俺の剣術が優れとるおかげやなー」
カラカラ笑ってシオンさんは言葉を続ける。
「あのペンダントは、ヴァンパイアが身に付けてたもんなんやで」
「え・・・シオンさん、もしかして、その人殺したんじゃ・・・」
「阿呆なこと言わんといてーな。攻撃してくる奴は斬ったったけど、そいつとは仲良うなったんやで?」
シオンさんは、んー、と口に手を当てる。
「なんや、そいつ、人間と仲良うなりたい変わり種やったみたいで、他のヴァンパイアに迫害されとったんや。んで、助けたときに、それくれた」
「そしたら、あのペンダントはシオンさんが持ってるべきじゃ・・・」
「いんや。『売るけどかまへんな?』言うて貰て来たし大丈夫やろ」
あー、と私は言葉に詰まる。
よくそんな言葉を吐いてヴァンパイアが、許してくれたものだ。
そして、真正面から言ってしまうシオンさんに、呆れを通りこして感心してしまう。
「それになー、もっとええもん貰たしな」
「何か貰ったんですか?」
「ん、髪の毛や」
「髪の毛?」
私が眉を顰めると、シオンさんはざっと説明してくれる。
「ヴァンパイアの髪の毛はな、魔力の伝導率がほぼ100%に近いねん。せやから、武器を媒体に魔法使う人間には重宝されとるんや」
「え?でも、髪の毛だけってどうやって使うんですか?」
「柄の部分に巻いとくだけでも、効果あんねんで。媒介の武器に魔力が流れやすくなんねん」
「へぇー」
全然知らなかった。
師匠は武器なんか使わないし、私だって使わない。
ヴァンパイアの髪の毛にそんな力があるなんて知らなかった。
牙の方は薬に混ぜると効果が長持ちする、というので有名だけれど。
「シオンさんは物知りですね」
「おおう、もっと誉めたってーな。ま、言うても、旦那には勝てへんけどな」
それから、おもむろにシオンさんは腕を組むと、うーん、と唸る。
「せやせや。ずぅっと疑問やったんやけど、旦那て、昔から旦那のままやねん」
「そりゃ、師匠は師匠ですよ」
「そうやなくて、年取ってないんちゃう?俺が5才くらいの時から、あのまんまの姿やで」
「・・・実は、それ、私も思ってました。12年前から師匠ってば姿が変わらないんです」
お互いに目配せして、首を傾げる。
「年取らへんようになる魔法でもあるんちゃう?」
「そうかもしれないです。でも、時を操る魔法はとっても危険ですよ」
「旦那の腕前なら出来るんちゃうか?」
「確かに」
そう頷いたとき、先導していたスノウがピィッと鳴き声をあげる。
目の前には、あの夜のままの姿の石の祭壇が広がっている。
とうとう、着いたのだ。
「ここです、シオンさん」
「おー!灯台下暗しとは、よう言ったこっちゃ!お宝の匂いがぷんぷんするで!」
シオンさんは嬉々として声をあげているけど、油断しない方がいい。
ここには、例のガーディアンがいるのだから。




