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魔法使いと私  作者: りきやん
後日談

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月夜の散歩

ありま氷炎さんからのリクエストです!ありがとうございます!

体を取り戻したアリーセとエーデルが甘い会話をしている話。大人な雰囲気にしてみました。

満月の光が森を優しく包み込む夜だった。

冷たい冬の空気が肌を刺すようだが、森の静寂は心を落ち着かせる。

木々が月光を浴びて青白く輝き、足元には光と影が織りなす複雑な模様が広がっている。


「こんなに普通に歩けるなんて……夢みたい」


アリーセはそっと口元を緩め、地面を確かめるように慎重に一歩ずつ歩いた。

その表情は、久しぶりの自由に触れる喜びで満ちていた。

かつて身体を失い、虚空を漂うだけの日々を思えば、今こうして自身の足で歩けることは奇跡だった。


隣を歩くエーデルは、そんな彼女の様子をちらりと横目で見る。

アリーセの顔には柔らかい微笑みが浮かび、目は月明かりに輝いている。

それを見て、エーデルの口元にも微かな笑みが浮かんだ。


「はしゃぎすぎて転ばないようにね」

「ふふ。それなら、転ばないように、手でも繋いでくれる?」


アリーセが冗談交じりに返した言葉に、エーデルは軽く肩をすくめた。

そして何の躊躇もなく、彼女の手を取った。


「えっ…?」


アリーセの手がぴくりと震える。

本当に手を繋がれるとは思っていなかったのだろう。

驚いたようにエーデルの顔を見上げるが、彼は特に何も言わずに歩き出した。

アリーセも少し恥ずかしそうにしながら、繋いだ手を解こうとはしない。


静寂に包まれた森の中、二人の足音が響く。


「夜空って、こんなに綺麗だったんだね」


ふと立ち止まり、アリーセが星空を見上げる。

満天の星と満月が夜空を埋め尽くしている。

その景色をじっと見つめながら、彼女は小さくため息をついた。


「やっぱり、身体が無い時とは違う?」

「そうね。夜の森の匂い、風の冷たさ、見上げたときに首が痛いと思う感覚……全部が違うわ」


アリーセは少し笑いながら言葉を続けた。


「本当に、生きてるって感じがする。リザとリュルザには感謝しなきゃね」

「それとアルノーにも」


エーデルが素っ気なく付け足すと、アリーセは微笑んで「もう一人忘れてるわよ」と言った。


「誰?」


首を傾げるエーデルを見て、アリーセはいたずらっぽく微笑む。


「あなたよ、エーデル」


その言葉に、エーデルは一瞬驚きの表情を浮かべる。

しかしすぐに視線を逸らし、「大げさだよ」と照れ隠しのように鼻を掻いた。


「本当にありがとう。あなたがいなかったら、私はここにいられなかったわ」


彼女の真剣な言葉に、エーデルは少しだけ視線を戻し、柔らかく笑った。

その笑顔に安堵を感じたアリーセは、少し照れくさそうに視線を月に向けた。


「召喚した頃は、こんな風に一緒に夜の散歩をする日が来るなんて思ってもみなかったわ」


アリーセの声は、どこか懐かしさと安らぎを感じさせるものだった。


「あなたに頼りきりで、いつ契約をやめたいと言われるか不安で仕方なかった」


そう言ってアリーセは苦笑いを浮かべる。


「でもね、こうして数百年も一緒にいるなんて、不思議よね」


彼女の赤い瞳がエーデルをじっと見つめる。

エーデルは少し間を置いてから柔らかく微笑み、彼女に答えた。


「そうだね。もうアリーセがいない人生なんて、想像できないかも」


その言葉にアリーセは驚いたように目を見開いたが、すぐにふわりと笑った。


「ふふ、実は私も。ねぇ、エーデル。これからもずっと一緒にいてくれる?」


彼女が一歩エーデルに歩み寄る。

繋いだ手に力を入れたエーデルは、もう片方の手でアリーセの髪を優しく梳いた。


「お望みなら、死が二人を分かつまで」


エーデルの低い声が静かに響く。

その言葉にアリーセは目を細め、微笑みを浮かべる。


二人の影が月明かりの中で重なり、寄り添うように森の奥へと消えていった。

森には夜の静けさと、満ち足りた空気だけが残された。

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新作「グレーテルと悪魔の契約」
ちょい甘コメディファンタジーです。
よろしくお願いします〜!
by りきやん

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