家族
Asaさんからのリクエストです。ありがとうございます!
シオンさんのおはなし。
いつものように、手紙が来ていないか確認するために、ポストを開けた時だった。
ひらひらと、1枚のチラシが滑り出てくる。
私は慌ててしゃがむと、汚れを払って、その内容を読んでみた。
「街にサーカス来たる?」
私の頭の上にいるスノウも、不思議そうにピィ?と鳴いている。
ポストにチラシが入っていることも珍しければ、サーカスだって珍しい。
見たことがある興行といえば、ルーカスさんの見世物小屋くらいだ。
「リュルザ!ねぇ、リュルザ!」
私は、すぐさまソファで寝転がっているリュルザのもとに向かう。
案の定、読書の邪魔をされたリュルザは不機嫌そうに眉をしかめた。
「うるさい」
「これ見て!」
「チラシがどうした」
「街にサーカスが来るんだって!一緒に見に行こうよ!」
満面の笑みでそう言えば、リュルザは興味無いとばかりに鼻で笑って読書に戻る。
「謹んで遠慮しておこう」
「えー、行かないの?」
「行かない」
なんとなーく、そうじゃないかなー、と思っていた、予想通りの返答に、私はがっくりと肩を落とす。
一人で行くのも虚しいし、これは諦めかな。
落ち込んだ私を慰めるように、スノウが肩に降りてきて、その身体をぐりぐりと頬に押し付けた。
◆
シオンさんが街に来るというので、リュルザと一緒に買い物に向かう午後。
スノウは森で過ごすつもりらしく、今日はお留守番だ。
私はと言えば、サーカスに行くのを断られた手前、街に行くのが億劫で仕方がない。
自分の買い物には、人を付き合わせるくせに、私の行きたいところには付き合ってくれないのは酷いと思うんだけどね!
と思いつつも、シオンさんとハルさんに会いたいから、一緒に来たんだけど。
「いい加減、その不貞腐れた顔をどうにかしろ」
「酷い。サーカスへのお誘いを、あんな無下に断ったくせに。私はいつも買い物に付き合ってあげてるのに。だいたい・・・」
「おーい、旦那ぁ!リザちゃーん!」
往来のど真ん中で、ぶんぶんと、こちらに向かって大きく手を振っている姿が見える。
そして、その隣にはフードを目深にかぶった長身。
間違いなく、シオンさんと、ハルさんだ。
「ご無沙汰やなぁ。2人とも元気しとった?」
「はい。シオンさんとハルさんは?」
「シオンが元気すぎて、私は疲弊しています」
「そないなことないやろ!さっきまで、リザちゃんに、はよ会いたい~。言うて、その辺うろうろしてたくせに」
フードに隠れて表情は見えないが、きっと、その下でくすくす笑っているのだろう。
ハルさんの肩が小さく揺れている。
「今回は何か珍しいものはあるか?」
いつも通り、挨拶もそこそこに、リュルザがそう聞けば、待ってましたとばかりにシオンさんが懐から怪しい紫色の小さな袋を取り出す。
それは、きっちりと紐で結ばれて口が閉じてあった。
「じゃじゃーん。雄の人狼の毛!」
「いくらだ?」
「これで」
「高い」
即決で買うことにしたものの、価格に文句を言うリュルザとぼったくろうとするシオンさんを横目に、私はハルさんに問いかける。
「人狼の毛、ってどうやって手に入れたんですか?」
「ちょっとした野暮用で、人狼の集落に行ったんです。そこで頂いたんですよ」
「え?!まさか2人で大暴れしたんじゃ・・・」
「お師匠さんじゃあるまいし、そんな野蛮なことしませんよ。合意の上で、頂いただけです」
肩を竦めたハルさんに、私は疑念の目を向けた。
リュルザが暴れている姿は容易に想像できる。
そして、シオンさんとハルさんが人狼相手に大立ち回りする姿も、比較的簡単に想像できる。
「一体どうして、人狼の集落なんかに行ったんです?」
「うーん、人探し、ですかね。シオンの知り合いを探しに行ったんですよ」
「なんというか、相変わらず交友関係が広いですね、シオンさん・・・」
ヴァンパイアに加えて、人狼の知り合いもいるんだ。
最早、スライムに友達がいると言われても、驚かないかもしれない。
シオンさんの知り合いを集めてみたら、見世物小屋なんか目じゃないくらい、いろんな種族が集まるかもしれない。
そこまで考えて、そういえば、と私は良いことを思いつく。
リュルザが駄目なら、ハルさんとシオンさんがいるではないか。
「ハルさん、もし、良かったらなんですけど・・・」
「なんですか?」
「サーカスとか興味あります?」
そう聞いた途端、今までリュルザとやり取りしていたシオンさんが、ものすごい勢いで振り向く。
「サーカス?!」
「うわっ・・・急になんですか、シオンさん」
「すまんすまん。え、なに、リザちゃん、今、サーカス言うた?」
「えぇ・・・もし、良かったらなんですけど、一緒に行かないかなーって・・・」
リュルザが物言いたげに、こちらを睨んでいるが気にしない。
断ったのはそっちなんだからね!
「行く。絶対の絶対に行ったるわ」
「ほんとですか?!」
「私も一緒に行きますよ」
「やったー!」
待ち合わせはどうしましょう、と話していると、今まで無言だったリュルザが口を挟んでくる。
「僕も行く」
「え、でも、興味ないって言ってたのに」
「気が変わった」
「別に、無理しなくても」
「僕が一緒だと不満か?」
「そうじゃないけど。急にどうしたの?」
聞いても、リュルザは答えずにそっぽを向いてしまう。
返事をする気は無いようだ。
ま、気が変わったなら、それで良いか、と思ったところで、両肩をぽん、と叩かれる。
右にはシオンさん、左にはハルさんが、興味津々といった感じで佇んでいた。
「なぁなぁ、リザちゃん?旦那にタメ口?」
「私たちがちょっと離れた間に、どんな進展があったんですか?」
忘れていた。
すっかり忘れていた。
この2人は、リュルザの名前も知らないのだった。
きっと、野次馬根性丸出しのこの2人は、全て話すまで解放してはくれないだろう。
私はこの後の質問攻めを想像して、リュルザの買い物に付き合うのは、やっぱりやめた方が良かったんじゃないかと心から後悔した。
◆
賑やかな音楽に、客を呼び込む声、色とりどりの光。
ゆっくりと回っているメリーゴーランドには大人も子供も群がり、簡易設置された観覧車はぐらぐらと揺れていて、傍から見ていてもスリル満点だ。
深呼吸をすれば、甘い匂いで胸が満たされる。
これは、キャラメルポップコーンかな。
初めて来たサーカスは、とても活気に溢れていて、私はついきょろきょろ周りを見回してしまう。
「リザちゃん、ほい!」
ふらふらと何処かに姿を消していたシオンさんが、丸くて赤いものが刺さった棒を手渡してくる。
「これは?」
「リンゴ飴や!リザちゃん、好きやろ、こういうの」
「わー!ありがとうございます!」
このまま、齧ればいいのかな?
表面がキラキラしていて、まるで宝石みたいで、食べるのが少しもったいない。
「シオン、私の分は?」
わくわくとしているハルさんに、シオンさんは、肩をすくめた。
「あるわけないやろ」
「えー!なんでですか?!」
「男に奢ったる趣味はない」
ぎゃいぎゃいと騒ぐシオンさんとハルさんを横目に、リュルザは始終無言で歩いている。
うーん、やっぱり無理して来なくても良かったんじゃ…。
私の言いたいことが分かったのか、リュルザはふん、と鼻を鳴らした。
「君とそこの2人を一緒にしておけるわけないだろう」
「でも、楽しくないなら、無理して来なくても…」
「別に楽しくないとは、一言も言ってない」
「ってことは、リュルザも楽しんでるの?!」
あんな仏頂面で楽しんでるも何も無いよね?!
思わず私がそう言えば、リュルザはそっぽを向いた。
これは照れ隠しなのか?!
思わずイジりたくなったところで、シオンさんが、あっと声を上げた。
「始まるまで、まだ時間あるみたいやな。せっかくやし、ちょいと裏の方行ってこようかと思うねんけど」
さらっとおかしなことを言うシオンさんに、私は一瞬、思考が停止する。
一体全体、どこへ行こうというのか。
「裏って・・・。シオンさん、何言ってるんですか?」
「まーまー。リザちゃんたちは、屋台でも楽しんでおいたらええよ」
「私はシオンについて行きますよ。悪さでもしたら大変ですからね」
「せぇへんて!」
ぎゃいぎゃい言いながらも進んでいくシオンさんに、ついて行くべきかちょっと迷う。
でも、ちょっとだけ、裏方とか覗いて見たい気持ちもあったりする。
果たして、そんな場所に忍び込んでいいのか良くわからないけど、好奇心に負けてシオンさんについて行くことにした。
「リザ・・・」
「リュルザも行こう」
強引に手を引っ張れば、観念したのか、呆れて物が言えないのか、どうでもいいのか、リュルザは素直についてきた。
一方、シオンさんはびっくりするほど、迷いなく突き進んでいく。
立入禁止の札もなんのその。
その姿には驚きを通り越して、感心してしまった。
「シオンさん、ここ、立入禁止って・・・」
「ええのええの。あ、ここ右」
「よくまぁ、迷いもせずに進めますね」
「んー、まぁ、知っとるというか・・・」
口ごもったシオンさんの言葉に、ハルさんがハッとしたように息を呑む。
「シオン、まさかですが」
「いや、あんま期待させんといて。ちゃうかったら、さすがの俺もへこむ」
一体、何に期待するというのか。
シオンさんとハルさんは、何か分かり合ってるみたいだけど・・・。
そう思った時、後ろからグルルル、と唸るような声が聞こえてきて、私は思わず小さく悲鳴を上げる。
慌てて振り向けば、体格の良い、茶髪の男の人が立っていた。
あれ、おかしいな・・・。
確かに、唸り声だったと思ったけど。
「君たち!ここは立入禁止だよ!」
「あ、えっと、ごめんなさい!」
立入禁止だと知っていただけに、非常にバツが悪い。
これはもう平身低頭、全力で謝るしかないだろう。
「そこの前進んでる2人も・・・」
「ヨニ!」
名前を叫んだシオンさんは、人間の脚力とは思えないジャンプで私と男の人の間に割って入る。
ヨニ、と呼ばれた男の人は、戸惑った表情をした後、何かに気づいたのか、目をまんまるにした。
「シオン!嘘だろ?!ゴーストか?!」
「あほう!ちゃうわ!生きとるわ!」
「本当の本当にシオンなんだな?!まさか、生きてたなんて!墓まで作っちまったのに!」
「勝手に殺さんといて!」
何がなんだか分かっていない私をよそに、リュルザとハルさんは特に驚いた様子もなく、シオンさんとヨニさんの姿を見守っている。
あれ、もしかして、何も知らないのは私だけ・・・?
こそっ、とリュルザの服の裾を引っ張り説明を促してみるが、首を横に振られてしまった。
「おとん、おかんは生きとる?」
「そりゃ、お前、ピンピンしてるよ!」
「今から会いに行ってもええ?」
「駄目、っていうはずないだろ!」
シオンさんは、顔の前に手を立てて、謝る素振りを見せてから、私達を置いてヨニさんに着いて行ってしまった。
「・・・結局、何が起きたんですか?」
「んー、行方不明だったシオンの家族が見つかった、ってところですかね」
そう笑ったハルさんは、心なしか、ちょっと寂しそうに見えた。
◆
あれから、シオンさんは戻って来なかった。
というより、驚いたことに出演者としてサーカスに参加していた。
サーカスの目玉であるショーの開演時間になっても姿を現さなかったシオンさんに、私達は諦めて3人だけでショーを見ることにしたのだ。
ハルさんの話によると、シオンさんは幼い頃、家族とこのサーカスで生活していたらしい。
それが、山賊に襲われたせいで、シオンさんはサーカス団とはぐれてしまい、結果として、アリーセさんの孤児院に保護されたとのことだ。
長年、生死不明だった家族に会ったのだ。
一緒に観れないことは残念だけど、ショーを観るよりも、積もる話があるだろう。
そう思っていたのに、あろうことか、シオンさんはトップバッターとして舞台に出てきた挙げ句、魔法と二刀流の剣舞を披露し、とんでもない身体能力を見せつけて、観客を魅了したのだ。
最後に退場するときには、こちらを見て、ばっちりとウィンクしていた。
「シオンさん・・・」
「リザ、言いたいことは分かりますが・・・。まぁ、シオンは相変わらずシオンですね」
「あほらしい」
思わず3人で同時にため息をついてしまった。
「まぁでも、公演はすごかったじゃないですか!あの、ヨニさんって人、狼男だったんですね。あ、もしかして、人狼の集落に行ったのって・・・」
「その通りです。ヨニさんの出身の集落に行ったんです」
「初めて人狼が変身する姿を見ましたけど、すごかったです」
「あ、それなら、ヴァンパイアが吸血する姿も、見世物になったりしますかね?」
「お前は何を言ってるんだ」
珍しくリュルザが、スルーせずに突っ込みを入れる。
いや、リュルザが言ってなかったら、私が言ってたけど。
公演が終わったものの、シオンさんを置いて黙って帰るわけにもいかず、とりあえず、裏手に回ってみる。
予想通り、そこには、シオンさんとヨニさんがいた。
「シオン」
ハルさんが声をかければ、シオンさんはやっとこちらに気づいたのか振り向く。
「おー、ハル。俺の演技どうやった?」
「ご家族と感動の再会を果たしているのかと思えば、まさか、出演しているとは。夢にも思いませんでしたよ」
「すごかったやろ~。あ、せや。改めて紹介するわ。こちら、ヨニ」
シオンさんがそう言うと、ヨニさんは、ぺこっと頭を下げた。
「見てもろたから知っとるとは思うけど、狼男やねん」
「シオンとは小さい頃にはぐれて、それっきりだったんだけど。また会えるとは思わなくて。ごめんな、君たちと一緒にサーカス見に来てたんだろう?」
「いえいえ、シオンがあなたたちのことを探していたのも、知っていたので。友人として、再会できたのが自分のことのように嬉しいですよ」
「君が、ハルさんか。シオンがさっき話してくれたよ。そちらは、リザさんと、旦那さん、だね?」
旦那さん・・・、と思わず私が吹き出せば、リュルザにどつかれた。
ひどい。今のは、私は悪くないと思う。
「さん、は、つけなくていい」
「あ、そうかい?そしたら、俺もシオンと同じように旦那って呼ばせてもらうね」
ヨニさんが笑うと、八重歯がその口元に除く。
シオンさんが、その背中をバシバシと意味もなく叩いた。
そして、やり返すヨニさん。
じゃれている様子からも、とても仲が良いことが伺える。
「ハル、悪いんやけど、今日は俺、ここに泊まるわ」
「えぇ、分かりました。せっかく会えたんですから、ゆっくりしてください」
ハルさんはニコニコとそう告げ、では、行きましょうか、と私達を促す。
「おやすみなさい、シオン」
「おう、おやすみ!」
さっくりと別れを告げて背を向けたが、ハルさんの顔はちょっと寂しそうだ。
「ハルさん、大丈夫ですか?」
こそっと聞いてみれば、ハルさんは、それはそれはとても綺麗な笑顔を浮かべる。
「大丈夫ですよ。ただ、このままシオンがサーカスの人と一緒に行くと言い出したら、私には止める権利は無いのでしょうね」
私はなんと答えて良いかわからず、言葉に詰まる。
考えあぐねていると、リュルザが鼻で笑った。
「その時は、お前も一緒にサーカスに入ればいいだけの話しじゃないのか?」
「うーん、まぁ、そうかもしれませんね」
そう言って笑うハルさんの表情は、やっぱり寂しそうだった。
◆
次の日、私はハルさんが心配で、街に行くことにする。
リュルザは仕事があるから、家でお留守番だ。
いや、仕事が無くても一緒には来なかっただろうな・・・。
ハルさんとシオンさんのことに、あまり興味はなさそうだった。
シオンさんが、サーカスに戻ることを決めたら、ハルさんはどうするんだろう?
サーカスに加わるのか、はたまた、ここでお別れするのか。
ハルさんが泊まっている宿へと向かえば、すでに入り口にはフードを目深にかぶった黒いローブ姿があった。
私が一番遅かったようで、シオンさんとヨニさんも一緒にいる。
シオンさんがヨニさんと並んで、ハルさんに向かい合っている様子に内心ドキッとする。
「おはようございます!」
「ありゃ?おはようさん」
私が来たことに、シオンさんが不思議そうな顔をする。
ハルさんも、びっくりしてこちらを見ていた。
「お見送りに来てくれたんですか?」
「え、あ、えっと、まぁ、そんなところです」
ハルさんが心配で来た、とは言えずに私は口ごもる。
昨日の寂しそうな表情は何だったのかと思うほど、ハルさんはご機嫌だ。
「リザさん、昨日は俺たちのショーを見に来てくれてありがとうね」
「こちらこそ、とっても楽しかったです」
律儀にお礼を言ってくれるヨニさんに、慌てて答える。
もっと気の利いたことが咄嗟に言えれば良かったけど、私の語彙力では無理だった。
「そんじゃ、シオン。ハルさんに迷惑かけるなよ」
「ハルに迷惑かけられとんねん」
「どの口が言いますか」
じゃぁな、と足取りも軽く去っていくヨニさんの後ろ姿を、私は呆然と見つめた。
「リザちゃん、何を呆けとんねん」
「えっと、あれ?ヨニさんだけ帰るんですか・・・?」
私の言いたいことが伝わったのか、シオンさんはケラケラと笑った。
「俺がサーカスに戻るんちゃうかと思って心配しとったん?」
「え、だって、ご両親は?」
「いやー、もう、親と一緒にいるような歳ちゃうからなぁ」
どうやら私の杞憂だったようだ。
シオンさんはサーカスに戻る気は、全く無かったらしい。
「おとんも、おかんも元気そうやったし。これからは、安心してトレジャーハントに励めるっちゅうもんや」
「私もご両親に挨拶できて良かったです。ヴァンパイアだと知っても、驚かない良い人たちですね」
「そりゃ、まぁ、おかんは人狼のハーフやしなぁ・・・」
「え?!」
驚きの事実に、思わず声を上げてしまう。
そして、私もシオンさんのご両親に会ってみたかった。
ハルさんだけずるい。
「んぁ?リザちゃんは、知らんかったっけ?おとんは、ちょびっとだけ魔法使える人で、おかんは人狼のハーフやねん。俺の運動神経は、おかん譲りやな」
「道理で、人間離れした動きが可能なわけですね・・・」
アクロバットな動きはサーカス仕込みだろうか。
なんだか、シオンさんに対して長年抱いていた疑問が一気に解消された気がする。
「ほんじゃ、俺たちも行こか」
「そうですね。日が沈む前に、次の街にたどり着きたいですし」
「リザちゃん、またな。旦那にもよろしゅう言うといて」
街を去っていく2人の姿を見送りながら、私は軽く息を吐く。
私が心配するようなことは、何もなかったようだ。
偶然誘ったサーカスに、まさかシオンさんの生き別れの両親がいるとは思いもしなかったけど。
シオンさんは家族と再会できたし、ハルさんもまだまだ2人で旅を続けられるようだし、結果オーライかな。
家族、かぁ。
なんだか無性にリュルザに会いたい。
私は踵を返して、家への道のりを、いつもより、ほんの少し早めに進むことにした。




