↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いと私  作者: りきやん
後日談

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
146/156

侮ってはいけません

ありま氷炎さんからのリクエストです。ありがとうございます(*´∀`*)

アリーセさんとエーデルさんの孤児院から帰って来て、私達はやっといつもの生活リズムに戻っていた。

たくさんの子供たちに囲まれて過ごしていた日々を思い返すと、リュルザとスノウと私だけ、という空間はやけに静かに感じる。

また遊びに行きたいなぁ、と零せば、スノウも同じ気持だったのか同意をしてくれた。


「僕はもう行かないからな」


スノウが何を言っているのか、分かるようになったリュルザは、私達の会話を聞いて不機嫌そうに眉をしかめる。

その様子に、苦笑して肩をすくめた。


「それなら、スノウと2人で行ってくる」

「薄情者め」


ふん、とそっぽを向く様子が可愛いと思えるのは、私とリュルザの距離が縮まったからだろうか?

師匠として仰いでいた頃は、怒られると思えば冷や汗だらだらだったし、理不尽な振る舞いにも黙って耐え忍ぶしかなかった。

今のような行動に対してだって、きっと、すみませんごめんなさい冗談です。と、繕っていただろう。


けれども、アリーセさんやエーデルさんの様子を見て、気付いたことが多々ある。

リュルザは、基本的に素直じゃないのだ。

いや、素直でないのは知っていたけれど、それに加えて存外寂しがり屋である。

でも、それを決して口にしない。

過去のドラゴンだった頃の様子も見た私からすると、その捻くれた感じも可愛く見えてしまう。

今だって、ふてくされて尻尾を身体に巻き付け、丸まっている姿が目に浮かぶようだ。


「…何を笑ってるんだ?」


おっと、つい顔に出ていたらしい。

私は慌てて表情を引き締め、首を横に振る。


「なんでもないよ」

「なんでもないのに、ニヤニヤしていたのか?」


気持ち悪い奴め、と軽口を叩かれる。

その言葉、口元を歪めて笑っているリュルザにそっくりそのまま返したい。

私をいじめる切っ掛けを見つけられて、喜んでいるのだろう。

アリーセさんとエーデルさんが「子供だなぁ」と言ってる声が聞こえてくるような気がした。

ふむ、と私は考える。

人とは不思議なもので、誰かが子供扱いしていた姿を見ると、自分もそういった扱いが出来ると思えてしまうのだ。

リュルザが可愛く見えてきたし、これは、関係の変わった今ならば、私が丸め込むことも可能なんじゃないだろうか?

なんて、思ったことを後に、死ぬほど後悔するのだけれども、この時の私はとても愚かだった。

時魔法が使えたならば、きっと時送りをしてでも止めただろう。


「リュルザが、可愛いと思っただけですー」


言いながら、ひょこひょことリュルザの座っているソファに近づく。

スノウは気を回したのか、私の頭の上から窓の桟へと移動した。

ちら、と振り返った金色の双眸と視線がぶつかる。

リュルザの真後ろに立って、ソファの背に手をついた。


「僕が、可愛い?」

「うん。だって、ほら」


わしゃわしゃ、とリュルザの髪を撫でてみる。

片眉を釣り上げて、不信感丸出しでこちらを見上げているが、上目遣いだからか怖くはない。

大人しくされるがままになっているのに気を良くした私は、そのまま撫で続けた。


「ドラゴンだった時の姿を知ってるからかな?わからないけど、なんだか微笑ましく思えちゃって」


リュルザは黙ったまま、気持ちよさそうに目を細めている。

頭を撫でて貰って、喜ぶのは私だけなのかと思っていた。

けど、そうじゃないのかもしれない。

ぼけっとしながら、私は完全に気を抜いてリュルザを撫でていた。


「まぁ、悪くはない、けどな」


そのせいで、彼が呟いた言葉に反応するのが遅れてしまう。

ん?と思った時にはもう遅い。

がっしりと手首を掴まれて、強く引っ張られた。


「ちょ、ちょっと…」

「僕が、可愛いんだろう?」


掴まれた手が、リュルザの頬に導かれる。

すり、と手の平に頬ずりをされて、心臓が飛び上がるほどに跳ねたのを自覚した。


「大人しくしててやるから、存分に撫でるといい」


いや、待って、確かに、可愛いとは言ったけど、頭も撫でてたけど、これはなんか違う。

怪しく金色の双眸が煌き、ちろりと乾いた唇を舐めた舌がやけに妖艶に見える。

私がおののいて手を引こうとしても、掴まれた手首はびくともしない。


意図せずに、私の手がリュルザの頬を往復する。

手首を掴まれているとは言え、撫でているのは私の方なのに。

決して、私が撫でられている訳ではないのに。

ぞくぞくと不思議な痺れが背筋に走った。

頭が真っ白になり、全身が燃えるように熱くなる。

視界が反転したのかと思うほど、目が回って、真っ直ぐに前を見ることができない。


「あ、あ、あの、し、ししょ…」

「呼び方」


指摘されたけれど、私が何て口走ったかなど覚えていない。

師匠、と言ってしまったのだろうか。

ほんの数秒前のことなのに、そのことが分からない。

ただ、手の平に伝わってくる体温が、柔らかくするりとした感触が、どうしようもなく私を混乱させる。


「ほら、呼んでみろ」


囁くように言われる。

掴まれた手首はそのままに、リュルザが私の手を好き勝手動かすのを止める。


「僕の、名前は?」


じっと見つめられて、息を詰める。

まるで懇願するように、名前を呼んでくれと強請る様子に、気づかぬうちに生唾をごくりと飲み込んだ。

口の中が一瞬で乾いていく。

細く息を吸い、唇を震わせて、からからになった喉で、私は乞われるままに、名前を呼んだ。


「リュルザ」

「よくできました」


そう呼べば、リュルザは満足気に笑みを浮かべたあと、手の平にちゅ、と音を立ててキスを落とした。

そこで正気に返った私は、ものすごい勢いで手を引く。

リュルザが力を緩めたのか、私が火事場の馬鹿力を発揮したのか定かではないが、今までが嘘のようにすんなりと解放された。


「はは、真っ赤だ」

「し、信じられない!」

「可愛がられるのも、たまには良いな」


とんでもない。

金輪際、誰が可愛がるものか。

私がじりじりと後退するのを見て、リュルザが楽しそうに笑う。


「牙を抜かれたドラゴンとは違うんだ。あまり侮っていると、痛い目を見るぞ?」


目を細めて、口の端を上げているリュルザに、私がしばらく警戒して近寄らなかったのは言うまでもないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作「グレーテルと悪魔の契約」
ちょい甘コメディファンタジーです。
よろしくお願いします〜!
by りきやん

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。