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魔法使いと私  作者: りきやん
ずっと一緒にいたいのです

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137/156

16

「リザちゃん?!」

「リザ?!」


振り返った2人が、驚きの声を上げる。

トリス君とナナちゃんも、びっくりしてこちらを見つめているし、アシール君はダーナちゃんと一緒になってすすり泣いていた。

しかしながら、師匠の姿は無いのかと、辺りを見回せど、見つけることは出来ない。


「どうなってるの?アイリスに連れ去られたわよね?あの子は?」

「1人で帰ってきたってことは、何かあったの?!」

(アリーセはどうして透けてるの?)


アルノーさんが問いかけてくるが、私は無視をする。

あなたの幼馴染みのせいだ、と大声で喚き散らしたかったが、そんなことをしている場合でもない。


「待ってください、それって、今、私が連れ去られたということですね?」


ということは、あの花畑で入れ違いになったのか。

今なら、まだ、師匠を助けられるはずだ。

安堵すると同時に、早く戻らないといけない焦燥に駆られる。

アリーセさんとエーデルさんは、不思議そうな顔をしていたものの、合点がいったのか大きな声を上げた。


「じゃぁ、僕らに会ってきたんだね?」

「その話は後よ、エーデル。とにかく、リュルザの後を追わないと・・・。リザを助けるって言って、本当に1人で行ってしまったんだから」

「行きましょう、花が咲いたり枯れたりしている場所です!」


私はくるりと踵を返すと、説明するのももどかしくて、そのまま玄関の外へと飛び出す。

スノウも頭の上でじっとしているのに耐えられなくなったのか、パタパタと空を飛んで私についてきた。


(それで、アリーセはどうしたの?)

「アイリスのせいです。アイリスが、アルノーさんとリュルザが融合した後、アリーセさんの身体を奪ったんです」


もし、アルノーさんの表情を見ることが出来たのなら、彼は驚きに目を見張っていたことだろう。

言葉を失くす、というのはこういう時に使うのか、と人事のように思った。


「言いましたよね。私、アイリスとは仲良く出来ないって」


よっぽど、私の両親も殺したんだ、と言ってやろうかと思った。

けれども、アルノーさんがいなくなって苦しむアイリスに、いい気味だと思った自分が情けないと感じたのに、それに輪をかけて酷いことをするのは嫌だった。

飛び出しそうになる言葉をぐっと抑えて、私は違う話を振る。


「アルノーさん。乖離魔法、使えますか?」

(魔法陣はアイリスの胸元にあったやつだよね?それは再現できるけど・・・。詠唱は途中までだったから、分からないよ)

「詠唱なら、私が知ってます。そしたら、魔法陣の方、お願いします」

(ちょっと待ってよ。君に発動できる魔法だとは思えないんだけど)

「私の身体に取り憑いてるんですから、アルノーさんも助けて下さいね!」


いつか、ティロの前でただの詩だと思いながら口にした詠唱を思い返す。

耳の奥ではアイリスの声で、その呪文が小さく木霊した。

魔法陣を覚えているアルノーさんがいて、詠唱を覚えている私がいてこそ成り立つ魔法。

乖離魔法を知っているのは、アイリスと、そして、アルノーさんが取り憑いている私だけなのだ。


先ほど歩いた小道を駆けながら、肩で息をする。

追いついてきたのか、アリーセさんとエーデルさんがいつの間にか隣に並んでいた。


「リザ、さっきから独り言激しいけど、どうしたの?」


エーデルさんが問いかけてくるが、私は息も絶え絶えなため、まともに応答ができない。


「ピィピ!ピ!」


代わりに、スノウがアルノーさんのことを説明してくれているが、エーデルさんたちには分からないだろう。

そう思っていたのだが、彼女の言葉は同調のおかげで他の人にも伝わるようになっていた。


「アルノーがいるって、というより、スノウの言葉が僕にも分かるんだけど・・・」

「あたしにも分かるわ」

「ピ!」

「リザと契約したの?!」

「なるほどね。特性を共有したから、あたし達にも理解できるようになったのね」


スノウが説明してくれて、助かった。

走っている状態で、話せるほど私は器用ではない。

例え、私に何も共有がなくても、契約して正解だったと心の底から思う。


走り続けた小道の先に、開けた場所が見えてくる。

花が咲いては、枯れ、再び目を吹き出す場所。

私は足を止めて、息を整えると、そっと忍び寄る。

アリーセさんはその必要はないが、エーデルさんは私に倣うように息を潜めた。


「さぁて、カナヘビちゃんも魔力を吸い取られて動けないようだし、あなたはもういらないわぁ」


間延びした声が、聞こえてくる。

私の中で、アルノーさんが息を呑んだ気がした。


「Aptl...」


師匠の声がする。

もう、すでに魔力を吸い取られて、真っ青になって蹲っているはずだ。

大丈夫だ、まだ間に合う。

今なら、助けられる。


「アルノーさん、頼みますよ」

(善処する)

「ピュィ」


使って、とばかりにスノウが羽根を私の手に落としてくる。

本当に頼りになる相棒だ。

指先から、じんわりと魔力が伝わってくる。

この短時間でも、アルノーさんと話していたせいで、随分と魔力を消費していたようだ。


「P hzr fvb av zluk oly av tl pu vsk lyh.」

「ばいばぁい」


ここで、私が時送りされるはずなのだ。

さらに近づこうと、茂みからそっと様子を伺う。

エーデルさんとアリーセさんも続こうとしたが、はた、と足を止めた。

どうしたのか、と振り返れば、2人共首を横にふる。


「ダメだわ・・・。これ以上近づいたら、結界に触れてしまうの」

「僕たちの存在に気づかれる」


そういえば、エルフとゴースト避けの結界を張ったとアイリスが言っていた。

そうなると、この場で気付かれずに近づけるのは、私だけなのだ。

不安と緊張で胸がいっぱいになるが、師匠を助けられるのは、私しかいないのだ。


「分かりました。私とアルノーさんで、アイリスの魂とアリーセさんの身体を引き剥がします」


私が乖離魔法を知っていることに、エーデルさんとアリーセさんは驚いたようだったけれども、追求はしてこなかった。

呑気にお喋りしている場合ではないと思ったのだろう、ひとつ頷いただけで、黙りこむ。

一方、花畑では私が丁度、時送りをされたようだ。


「あらぁ。お得意の時送り?ま、あんな子いてもいなくても良いんだけどねぇ」

「・・・っ」

「さぁ、アルノーを返してもらうわよぉ」


師匠はしゃべることも出来ないのか、口を小さく動かしただけで、地面に頭を伏せてしまう。

どうやら、意識を失ってしまったようだ。

アイリスが、師匠に近づく。


(いくよ)


小さく、アルノーさんが呟いた。

光の軌道が、アイリスの立っている場所に浮かび上がる。

驚いた彼女は辺りを見回すが、すでに陣は完成していた。

私は祈るように両手でスノウの羽根を握りしめる。


「相交わる自然の理、解きて別離の道を辿れ!」


いつか、ティロに見せてもらったメモに書いてあった呪文。

アイリスがアリーセさんの身体を奪った時に使った呪文。

そして、彼女がアルノーさんを失う原因になった呪文。

その呪文を、私は口にする。


青い羽根が、一際、強い光を放った。

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新作「グレーテルと悪魔の契約」
ちょい甘コメディファンタジーです。
よろしくお願いします〜!
by りきやん

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