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魔法使いと私  作者: りきやん
ずっと一緒にいたいのです

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136/156

15

「うぅ・・・」


痛む身体をさすりながら、私は立ち上がる。

くらくらとする視界に、豊かな緑が写り込んだ。

私の良く知っている、優しい木漏れ日のある森の中だ。


「戻って・・・来たの?」


呆然と辺りを見回せば、そこが師匠に時送りされた場所だということに気付く。

足元に生えた花が、咲いては枯れている。

師匠は、アイリスは、どうなったのだろうか?


(へぇ、ここがリザのいる時代か)


突然聞こえてきた、聞き覚えのある声に心臓が止まりそうになった。

どこにいるのかとその姿を探すも、彼の姿は見当たらない。


「アルノー・・・さん?」


ぼそり、と呟いてみれば、今度はアルノーさんから驚きの声が上がる。


(あれ?声聞こえるの?)

「そうですけど・・・。どこにいるんですか?」

(おっかしぃなぁ。さっきまで、全然答えてくれなかったのに)

「ちょっと待って下さい。何が起きてるんですか?」


とりあえず、胸ポケットに入ったままだったスノウを出してやる。

いつもなら、すぐに飛び立つ彼女だが、今は疲弊しているのかすぐに私の頭の上に収まった。


「私、戻ってきたんですよね?」

(そうじゃない?オレのいたところは、こんなんじゃなかったし)

「アルノーさんは、どこにいるんですか?リュルザと融合したんじゃ・・・?」

(身体だけね。どうやら、アイリスの乖離魔法が中途半端にかかちゃったみたい)

「じゃ、魂が抜けて・・・今はどこにいるんですか?」

(リザの中)

「えぇっ?!」


からからと、アルノーさんが笑う声がする。

私は思わず自分の身体をぐるりと見回した。

言われてみれば、アルノーさんが融合した直後、何かが身体の中に入り込む気配がしてような気がする。

必死すぎて、記憶が曖昧なせいで、確証はないけれども。


(心配しなくていいよ。むしろ、良いことだらけだから)

「信用できないです・・・」

(誰がアイリスを拘束呪文で足止めしたと思ってるの?)

「まさか、アルノーさんが?」

(大正解。でも、リザの魔力が少ないから、しょぼいのしか出来なかったよ)


しょぼい、と言う割には、しっかりしたツタが絡みついていた気もするのだが。

それに、はっきりと、自分の魔力が少ないと言われて良い気はしない。


「でも、どうして突然話せるようになったんですか?」

(さぁ?でも、リザとオレが話せば話すほど、魔力が減ってるみたいなんだよね)

「私の魔力ですか?」

(君以外に誰がいるの?)


もしかして、と私は感づく。

無意識に魔力を使っているのだとしたら、同調しか考えられない。

そういえば、先程アイリスの過去を覗いた時は、普段の同調とは少し違った。

もしかして、力が強まったということ?


(さっき、オレが拘束呪文も使っちゃったし、そろそろ魔力が底を尽きそうだけど)

「え!困るんですけど!」


力が強まった代償に、流れ出る魔力も増えたということか。

どうしようかと焦っていれば、頭の上のスノウがパタパタと羽ばたいて羽根を1枚分けてくれた。

今まで、いろんな人に魔力を分け与えていたけれども、実際に私が分けて貰うのは初めてかもしれない。

じんわりと、握った指先から温かいものが体内に流れ込んでくる。


「ありがとう、スノウ」

「ピィ!」

(ねぇ、リザ。この月光鳥とは契約していないのかい?)


以前も、アシール君に同じようなことを問われた気がする。

私は素直に契約していない、と答えた。


(なら、契約した方が良い。どうやら、リザは魔力が垂れ流し状態みたいだし、この子と契約すればそれが緩和できるかもしれない)

「特性の共有ですか?」

(うん。きっと、月の光による魔力回復か、魔力の蓄積量の増加、と言ったところかな)

「スノウは、私と契約を交わしても良いと思ってる?」


一応、彼女の意思も確認しなくては。

そう思って聞いてみれば、愚問だとばかりに頭を軽く突かれた。


「ピィピ!」

「え、あ、うん、ありがとう!」


今更すぎる、拒否するとでも思ってるの?と、お怒りの言葉を頂き、私は苦笑する。

早速、と思い、私はスノウを指先に乗せ、随分前に勉強した契約の呪文を口にした。


「我、誓約の下、彼の者と契約を結ばん」


小さな光が、私とスノウを結ぶ。

呆気無いほど簡単に、契約は完了した。


「これからも、よろしくね、スノウ」

「ピィ」


お互いの特性を共有することになったせいか、より明確にスノウの言葉が分かるようになった気がする。

きっと、彼女には私の特技である同調が共有されているのだろう。


(・・・リザ、非常に申し上げにくいんだけれど)

「何ですか?」


私の魔力も増えたかな、と期待をしているところに、アルノーさんが苦しそうな声を出す。


(君の魔力に、何の変化も見られない)

「え?!」

(少なくとも、蓄積量はさっきと同じままだ。こうなると、月の光による魔力回復を期待したいところだけど・・・あまり実用性は無さそうだね)


スノウのいる手前、何も言えないが、確かに、夜に外を歩き回ることは、ほとんど無い。

期待していた効果は無かったものの、スノウとの意思疎通がよりスムーズになったと考えれば、契約を交わしたことは無駄ではなかっただろう。


「まぁ、良いです。今までと変わらないだけですから」

(そうかい?)

「問題ありません」

(よし、じゃぁ、まずは、今の時間軸を確かめようか。君のいた時代の数年後にいる可能性もあるし)

「そうなんですか?!」

(リュルザが、あんな状況下で魔法を使ったんだ。失敗していても、おかしくはないよ)

「と、とりあえず、アリーセさんたちのところに帰りましょう」


私は覚えている限りの道順を思い出しながら、今いる場所を後にする。

それにしても、姿の見えないアルノーさんと話しているのは不思議な気分だ。

静まり返った小道を辿りながら、私はどうかリュルザの魔法が成功しているように祈る。

視界の奥に見えてきた白い壁の家に、緊張が高まってきた。

誰もいなかったら、どうしよう?


(うっわ。ツタがびっしり)

「そりゃ、アルノーさんの時代より、時が経ってますから」

(この時代のアリーセとエーデルに会うの、楽しみだなぁ)

「そんな暢気なこと言ってる場合じゃないんですよ。アイリスが来てたら・・・」


師匠は、どうなったのだろうか?

あの場にいなかったということは、全てが終わってしまった後なのだろうか?

家に近づくに連れ、子供の泣き声が大きくなる。

聞き覚えのあるその声に、どきりと胸が高鳴った。


(どうかした?)

「アルノーさん、きっと、私は自分の時代に戻ってきてます」


間違いがなければ、あれはダーナちゃんの声だ。

体感時間では、数十日前になるが、確かダーナちゃんとアシール君が泣き止まず辟易としていたことがあった。

自然と急ぎ足になり、急ぎ足は駆け足へと移る。

何も考えずに、大きな音を立ててドアを開けば、泣き声がより一層大きくなった。


「アリーセさん!エーデルさん!」


私は大声でそう叫びながら、家の中へと入る。

振り返ってドアを閉めることすら億劫で、そのままにして広間へと駆け込んだ。

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新作「グレーテルと悪魔の契約」
ちょい甘コメディファンタジーです。
よろしくお願いします〜!
by りきやん

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