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魔法使いと私  作者: りきやん
ずっと一緒にいたいのです

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131/156

10

アルノーさんとリュルザは、毎日外に出ては植物の実験を繰り返している。

つい先日、寝込んでいたばかりだというのに、アルノーさんはどれだけ注意しても聞いてくれない。

たまに、うわぁ!とか、しまった!とか、悲鳴が家の中まで聞こえてくる始末だ。


アルノーさんが元気でいてくれれば良いと思う反面、アイリスのことを大切にしている彼に複雑な思いばかりが募る。

そして、アイリスにとっても、アルノーさんは大切な人物のはずだ。

もし、彼が死んでしまったのなら、アイリスにとって、どれほどの打撃になるのだろうか。

私から奪い取ったように、アイリスからも奪い取れたら、良い気味だと笑えるのだろうか。

救いの無い仄暗い願望が、じりじりと胸の内でくすぶっている。

想像するだけにしても、あまりにも酷い内容に、自己嫌悪に陥ることも多くなった。


その一方で、アリーセさんとエーデルさんは、私が知っている彼女たちと同じく、子供たちの世話に追われていた。


「ねぇ、リザちゃん。リザちゃんは好きな食べ物とかある?」


午後の日差しを浴びながら、最早、日課になってしまった、じゃがいもの皮剥きの最中に、アリーセさんに問いかけられる。

一体どうしたのだろう、と思いながらも、真っ先に浮かんできた食べ物を伝えた。


「ショートケーキが好きですけど・・・」

「ショートケーキ?」

「はい、ショートケーキです」

「それって、どんな食べ物?」


なぜ知らないのか、と驚きの気持ちで彼女を見つめたが、この時代は食物が貧しいのだった。

私は慌てて説明を付け加える。


「えっと、小麦粉、バター、卵、砂糖、生クリーム、いちごを使う食べ物で、お菓子の一種です」

「それだったら、なんとか手に入りそうね」

「え?」

「好きな物を食べたら元気が出るかな、と思ったんだけど・・・。どうかしら?」


自覚はなかったものの、傍目から分かるほど気落ちしているように見えたのだろうか?


「そんなに落ち込んでいるように見えます?」

「えぇ」


間髪入れずに肯定されて、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

こんなにも、親切にしてもらっているというのに。


「あの、ありがとうございます。でも、私は元気ですよ!」


へらっと笑顔を浮かべれば、アリーセさんはより一層困った顔をした。


「無理に笑わなくても良いのよ。何があったか詳しくは分からないけど、いきなり時送りなんかされたら、私だったら絶対に落ち込むもの」

「アリーセさん・・・」


私は口角を下げると、重くため息をつく。

帰り方が分からないのはもちろん、アルノーさんとアイリスのことが更に負荷をかけてくるのだ。

きっと、今、この場で元の時代に帰っても、私は釈然としない気持ちのまま、今後を過ごすことになるだろう。

とは言え、面倒を見てくれているアリーセさんたちに、気を使わせるなんて、あってはならない。


「ごめんなさい。こんなに良くして頂いているのに」

「仕方ないわ。わからないことだらけで、不安でしょう?」

「はい・・・。でも、アリーセさんたちがここに置いてくれたこと、本当に感謝してるんです。自分で言うのもなんですが、かなり怪しい人間だったのに」

「そのことなんだけど・・・」


じ、とアリーセさんの視線が私の胸元に注がれる。


「あなたから、リュルザの魔力を感じたのよ」

「リュルザの?」

「えぇ。その胸元にあるものよ」


指を差された先には、師匠にもらったペンダントがあるだけだ。

私はどきりとして、胸元のそれを服の上から握りしめる。


「でも、これは私が師匠から貰ったもので・・・」

「見せてもらえるかしら?」


言われて、一瞬どうしようか迷ったものの、大人しく首からはずし、アリーセさんに手渡す。

師匠の髪色と同じ深緑の魔石が、光を浴びて美しい輝きを見せた。

裏面を眺め、表面の石をなぞり、鎖を指で辿ったあと、アリーセさんは私にペンダントを返してくれる。


「どうでした?」

「少し混じり気があるけど、リュルザの魔力にそっくりなのに変わりはないわね」


魔力が、似ているだけなのだ。

似ているだけで、本人ではないのだから。

けれども、先日から浮かんでいた疑問が、より色を濃くする。

それは最早、確信に近い確固たるものに変わっていた。


「あの、アリーセさん。そっくり、ってどういうことですか?魔力が似ることなんて、あるんですか?」

「少なくとも、ドラゴンの魔力に似てるなんて、人間ではほとんど無いわね。あなたの師匠ってどんな方なの?」


私の師匠。

魔法が得意で、きっと、知らないことなんか何もないに違いない、凄い人。

でも、私をいじめるのが何よりも大好きで、性格はねじ曲がっているけれど、困ったときは絶対に助けてくれる。

そして、リュルザのように深緑の髪、そして、金色の双眸を持った人。

それから、無表情のときのアルノーさんにとても似ていて、最初は彼を師匠だと思ったのだ。

点と点が、線で結ばれる。

もう、目を逸らし続けることはできない。


「師匠は・・・」


ごくり、と唾を飲み込む。


「師匠は、アルノーさんとリュルザを足して、2で割ったような・・・」

「アルノーとリュルザを?」

「いえ、融合魔法を掛けたような・・・人、です。」


アリーセさんが、息を飲む。

今までの師匠の言動、トリス君やナナちゃんへの対応、アルノーさんそっくりな姿に、龍語を話せる知識。

いつまでも見えないふりをする訳にはいかない。

認めなくてはならない時が、来たのだ。

どこかで、アルノーさんがリュルザと自身に融合魔法をかける未来を。

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新作「グレーテルと悪魔の契約」
ちょい甘コメディファンタジーです。
よろしくお願いします〜!
by りきやん

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