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魔法使いと私  作者: りきやん
ずっと一緒にいたいのです

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126/156

05

「ピーィ」


森の中の様子を見てまわってきたスノウが、私に報告をしてくれる。

どうやら、緑がとても少なく、彼女が食べられそうな実はほとんどないそうだ。


「お腹すいた?大丈夫?」

「ピュイ・・・」


大丈夫、とは言っているものの、固くて飲み込めない黒パンにじゃがいもでは、スノウには厳しいだろう。

水に浸してパンは食べさせているものの、本当なら木の実の方が嬉しいに決っている。


「ごめんね」

「ピィピ」

「でも、あの時スノウが私の元にいなければ、こんなことにはならなかったんだし・・・」

「ピ!」


怒ったように軽く手を突かれる。

私はあなたの相棒なんだから、一緒にいて当たり前でしょ!と言われ、嬉しさに顔が緩んだ。


「ありがとう」


スノウがいてくれて、どれだけ心強いだろうか。

きっと、1人でこの時代に来ていたら、挫けていたに違いない。

嬉しくなった私は、スノウに頬を寄せる。

ぐりぐりと頭を押し付けてくる彼女に、くすぐったくて笑いが零れた。


「ねぇ、リザちゃん。その子とお話できるのかしら?」


同じ部屋にいたアリーセさんが、我慢できなくなったのか、そう質問してくる。

私も人がいるにも関わらず、気にせずに話していたのに気づき、小さく謝った。


「すみません」

「別に話しているのは構わないのよ。でも、どうやって意思疎通をはかってるのかと思って・・・」

「私には良くわからないんですけど、同調という魔法らしいです」

「同調?」


師匠に言われたことを一生懸命思い出しながら、私は説明する。


「確か、えーっと、無意識に相手に調子を合わせてるとか何とか・・・」

「じゃぁ、スノウちゃんの言語を理解しているわけではないの?」

「はい。ピィピィ言っているように聞こえてますけど、なんとなく何を言っているかわかるんです」

「不思議な魔法ね」

「たまにですけど、物の記憶を見たりすることもあります」


驚いたようにアリーセさんは目を丸くする。

そして、興奮したようにまくし立ててきた。


「凄いわね!一体、どんな仕組みなのかしら?リザちゃん、身体に魔法陣を刻んだりしているの?」

「いえ・・・どうやら、遺伝らしいんですけど」

「あなたのお父さんかお母さん、もしかして、人間じゃない種族なのかしら?」

「2人とも、たぶん、人間だったと思うんですけど・・・」

「じゃぁ、祖父母の方かしらね?」


楽しそうに推測するアリーセさんに、私は苦笑する。

アリーセさんも、やはり魔法使いなんだな、としみじみと感じた。

いつも、子供たちの世話をしているので、どちらかと言うとお母さんとかお姉さんと言った様子だったのに。

魔法が大好きなところは、師匠によく似ていると思った。


「アリーセさんは、召喚術師なんですよね?」

「あら?どうして知っているの?」

「あ、その、私がいた時代で知ったんですけど・・・」

「なるほどね。まぁ、召喚術師とは言っても、大したこと無いんだけどね」


アリーセさんは肩を竦める。

謙遜しているのか、本当にそう思っているのかは、分からない。

けれども、あまり嬉しそうではない表情に、私は首を傾げる。


「だって、エルフを召喚できる実力の持ち主でしょう?」

「召喚したから凄い、って訳じゃないのよ。召喚するだけなら、誰だってできるわ」


アリーセさんはきょろきょろと視線を彷徨わせて、近くに誰もいないのを確認すると声を落としてため息をついた。


「エーデルとね、どう接したら良いかわからないの」

「え?」

「仲良くしたい、と思うし、彼とは上手くやりたいんだけど、召喚しておいて孤児院の手伝いばっかりさせてて、もしかしたら不満なのかなぁって」

「そういう風には見えませんけど・・・」

「彼、いつもにこにこしているものね。どうして私と契約を結んでくれたのか分からないし、私が契約主になったのかも分からないの」


本当なら、知識も魔力も豊富な彼の方が主になりそうなのに、とアリーセさんは付け加える。

そういえば、以前、あの時はあまり仲良くなかった、というようなことをアリーセさんとエーデルさんが言っていた気がする。

あの時、というのは今の時代のことなのだろうか?

けれども、未来では2人はとても仲良しで息がピッタリなことを私は知っている。

だから、自信を持ってこう言えるのだ。


「心配しないでください。アリーセさんと、エーデルさん、すっごくお似合いですから」

「えっ?お似合い?!」


素っ頓狂な声を上げて顔をパッと赤くしたアリーセさんに、私はおや?と勘ぐる。


「アリーセさん、もしかしてエーデルさんのこと・・・?」

「何のことかしら?!」


慌てて咳払いをし、立ち上がった彼女に、私は笑顔になる。

仕事が残っていたわ!と言いながら、逃げたアリーセさんの背を見送り、私はスノウに話しかけた。


「ね、アリーセさんとエーデルさんが息ぴったりだったのって、やっぱり2人はもう夫婦みたいな間柄だったからなのかな?」

「ピ」


そうかもね、とスノウが同意する。

アリーセさんは、まだ知らないだろうけれど、私はエーデルさんがアリーセさんのために、本気で怒る場面を知っている。

口や表情に出さないだけで、きっとアリーセさんのことを慕っているに違いないのだ。

そこまで考えて、ふ、と胃が落ち込む。

この先、アイリスが現れた時、彼女の身体は奪われてしまうのだ。

霊体になってしまったアリーセさんは、ものに触れることも出来ず、食べることすら不可能になる。

それは、アリーセさんは一生、エーデルさんと手を繋ぐことすら許されないということだ。

今、2人に忠告をすれば、未来を変えることが出来るのだろうか?

けれども、変わってしまった未来で、私は元の場所に戻れるのだろうか?


一度気付いてしまうと、考えずにはいられない。

忠告をして、アリーセさんが身体を奪われなければ、きっと、エーデルさんと一緒に幸せに暮らせる。

ケルベロスを召喚することもなかったアイリスは、私の両親を殺さないかもしれない。

そして、師匠とも出会わず、家族で幸せに過ごせる未来が待っているはず。


師匠と、出会わない。


なんて恐ろしい選択肢なのだろうか。

そんな未来ならいらない、と思うと同時にスッと心臓が冷える。

私がいた世界はたくさんの犠牲の上に成り立っているのだ。

それを、簡単に望んでしまう自分自身の浅ましさに、知らず握った拳が震えた。

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新作「グレーテルと悪魔の契約」
ちょい甘コメディファンタジーです。
よろしくお願いします〜!
by りきやん

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