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魔法使いと私  作者: りきやん
会いに行くのです

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118/156

11

アリーセさんの言ったとおり、師匠はすぐに見つかった。

庭の裏側にある食料庫の前に座って、ぼんやりと宙を見つめていたのだ。

家では滅多に見れない様子に、私は言葉を掛けるのを躊躇う。

けれども、気配で気がついたのか、師匠がこちらを振り返った。


「どうした」

「あの・・・」


おずおず、と切り出す。

一方的な八つ当たりをしただけに、バツが悪い。

ごくりと、唾を飲み込んでから、私は勢い良く頭を下げた。


「ごめんなさい!」

「顔を上げろ」

「でも、私、師匠に酷いこと・・・」

「いいから。こっちへおいで」


師匠がぽんぽん、と自分の隣を叩く。

今度こそ、愛想を尽かされたかと思ったけれども、どうやら許してくれるらしい。

私はほっと胸を撫で下ろして、師匠の言うとおりに、そこに腰を下ろした。


「僕こそ、黙っていて悪かったな」

「そんなことないです。私のためを思って、黙っていてくれたんですよね?」

「まぁ・・・な」


師匠が曖昧に頷く。

他に何か理由があったのだろうか?

歯切れの悪い言葉に、首を傾げると、師匠は長い溜息を吐いた。


「いや、正直に言おう。半分以上は自分のために黙っていた」


金色の双眸が、伏せられる。

師匠の長い睫毛の影が、目の下に落ちた。


「アイリスが両親の敵だと知れば、君はあいつのことを辿り始めるだろうと思った。そして、そこから僕のことが知れるのが怖かったんだ」

「どういうことですか?師匠は、アイリスと何か関係があるんですか?」

「多少の文献を漁ったくらいじゃ、分からない。けれども、アリーセやエーデルは知っている」


師匠が黙る。

言おうか、言うまいか、悩んでいるようだった。

私はそれをじっと見守る。


「以前、言ったことがあるな。君に隠していることが、沢山あると」

「その時、私も言いましたよね?今更だって」

「あぁ、今更かもしれない。けれども、君が僕のことを知った時、離れていくんじゃないかと思うと不安で仕方がないんだ」


師匠の手が地面に置いた私の手の上に重ねられる。

気のせいだろうか、その手が震えている気がした。


「でも、君が全てを知っても尚、それを受け入れた上で、共にいてくれることを僕は望んでいる」


欲張りすぎだな、と自嘲するように師匠が笑う。


「異質な物として、見られるのが怖いんだ。リザに蔑まれて、存在を許されないことが、一番恐ろしい」


そこには、いつもの自信たっぷりな様子も、意地悪の欠片さえも、見えない。

今まで、どんな時だって、微塵も不安な様子を見せなかった師匠が、後悔するように顔を歪めて笑う姿に、初めて、素顔に触れたような気がした。

どうして、この人は、こんなにも泣きそうな顔で私を求めるのだろう。

同じくらい、私も師匠を求めているというのに。


「・・・師匠が、何を悩んでいるのか分かりませんけど」


私はそっと師匠の肩に凭れ掛かる。

ぴくり、とその身体が跳ねた。


「私は師匠と一緒にいたい、師匠は私と一緒にいたい。それだけじゃ、ダメなんですか?」

「リザ・・・」

「師匠はきっと、いろんなこと、難しく考えすぎなんですよ」


きゅ、と師匠に手を握られる。


「以前も、君に同じことを言われたよ」

「・・・言いましたっけ?」

「あぁ。言っていた」


師匠が小さく笑う。

触れている手が、温かい。


「もう少し、簡単に考えるにはどうしたら良いんだろうな?」

「素直になればいいんですよ。師匠は捻くれてますから」

「言ってくれるな」


師匠の手が離れて、腰にまわる。

そのまま引き寄せられて、力強く抱きしめられた。


「僕は、君の気持ちを尊重したい。受け入れてくれるなら、それに越したことはないが、もし、君が・・・」

「心配しないでください」


師匠の言葉を遮って、はっきりと告げる。

迷いなど、あるはずがなかった。


「私はどんな事実が待っていようと、師匠を受け入れますよ」


無言のまま、背中にまわった師匠の手に入る力が強まった。

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新作「グレーテルと悪魔の契約
ちょい甘コメディファンタジーです。
よろしくお願いします〜!
by りきやん

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