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魔法使いと私  作者: りきやん
会いに行くのです

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113/156

06

トリス君とナナちゃんに引っ張られて連れてこられた先には、師匠とエーデルさんがいた。

アリーセさんも、エーデルさんの隣に立っているけれども、その足は地面についていない。

その周りを取り囲むように、子どもたちが十数名いる。

どうやら、遊んでもらおうと集まっているようだが、師匠の顔は面倒そうな様子に歪んでいる。

子供をあやす師匠の姿を見たことがないな、と思ったけれども、小さい頃は私は師匠にあやされていたはずだ。

その時の様子を全く覚えていないのが、心の底から悔やまれる。

絵に描いたような師匠の仏頂面も意に介さず、子供たちはきゃいきゃい言いながら珍しい客人に群がっている。

トリス君は、その中でも背の低いコバルトグリーンの髪の少年に話しかけた。


「アシール!」


ぴくり、と肩を揺らして振り返った彼は、口を開きかけてから、私を見て言葉を飲み込む。

あらん限りに目を見開き、まじまじと見つめてくるアシール君に私は苦笑いを返した。

その視線から、頭の上にいるスノウが気になっているのは明らかだ。


「えっと・・・この人は?」

「ほら、前に話したろ?俺たちのこと匿ってくれてた人」

「この人が、リザさん?」

「うん。リザさん、こいつはアシール。俺の友達」

「あ、あの、初めまして、ぼく、アシール」

「リザです。よろしくね」


手を差し出せば、おどおどとした様子で握り返してくる。

髪と同じコバルトグリーンの瞳は、驚くほど透き通っていて、肌もとても白くて綺麗だ。

ピィ、と鳴いたスノウを手に乗せて、その流れでアシール君に紹介する。


「こっちは、スノウ。私の友達」

「青い鳥・・・月光鳥?」

「そうだよ」

「リザさん、すごい。月光鳥、普通は人間に懐かない」


そっとアシール君が手を出して、スノウを撫でようとする。

彼には悪いが、スノウは嫌がって私の頭に戻るかな、と思ったが、大人しく撫でられていることにこちらが驚いた。


「スノウ、他の人に触られるの嫌がるのに珍しい」

「僕、シルフだから。月光鳥は友達」

「シルフ?」


私が首を傾げれば、アシール君よりも先にトリス君が得意気に説明してくれる。


「こいつ、風の精霊なんだ!ね、すごいよね?」


もじもじと恥ずかしそうに俯いたアシール君を見て、私は目を見張る。

風の精霊の子供だなんて、初めて出会った。

彼らは、森の奥深くに住んでおり、人間の前に姿をあらわすことは滅多にない。

私が驚いている横で、トリス君が得意げに続ける。


「風の魔法が得意なんだ。あと、召喚魔法も得意だよな?」

「う、うん・・・。あ、そうだ」


ちょっと待ってて、と言われて、私たちはそこでアシール君を待つ。

スノウは私の頭に舞い戻り、ナナちゃんはトリス君の肩へとよじ登った。

その様子を見ながら、私はあることに気づく。


「トリス君、背が伸びた?」


以前、ナナちゃんが肩に登っていたときは、肩幅はもう少し狭く、高さもなかった気がする。

私の言葉がよっぽど嬉しかったのか、トリス君は耳と尻尾をパタパタと忙しなく動かした。


「ほんと?そう見える?」

「うん。前より大きくなってるよ」

「やったあ!」


ガッツポーズをするトリス君に、ナナちゃんも良かったね、とばかりにキィキィ言っていた。

子供の成長は早いものなのだと、感心していると、そこに、シクシクと違う声が混ざる。

誰が泣いているのかと訝りながら音源を探せば、アシール君ともう1人、女の子が彼に手を引かれながら、こちらに向かっていた。

黒くて長い髪が顔を隠しており、手をつないでいない左手で懸命に目を拭っている。


「あらら、泣いちゃってるけど大丈夫かな?」

「あー、あいつね。いっつも泣いてるから」

「いっつも?」


トリス君が私の問いに答える前に、アシール君が戻ってきた。

しくしく、と泣き続ける彼女に、私はどう接したら良いのか迷う。


「えっと、あの、大丈夫かな?」

「心配ない・・・ダーナはバンシーだから」

「バンシー?」


人間じゃなかったのか、と納得するも、まさかシルフだけでなくバンシーにも会えるとは思わず私は驚きの声を上げる。

アリーセさんのところには、本当にいろんな子がいるようだ。

ダーナと呼ばれた女の子は、しゃくり上げながら、アシール君の後ろに隠れた。


「うっ・・・・うっ・・・だ・・・だれ・・・」


すすり泣きの声から、辛うじて言葉を拾う。

驚くほど警戒されているようで、私は苦笑いを零した。


「リザって言うんだ。しばらく、アリーセさんのところにお世話になるの。よろしくね、ダーナちゃん」


アシール君の時のように手を差し出せば、ダーナちゃんの挙動が目に見えて固まる。

背中に彼女を隠しているアシール君は、困ったように首を傾げた。


「ダーナ、人見知り。ごめんね、リザさん」

「ううん、構わないよ。初めての人は、怖いよね」


私は差し出していた手を引っ込めて、その代わりに笑顔を向けておく。


「よ・・・ろし・・・く」


アシール君の背中の後ろから声が聞こえてきたので、嫌われているわけではいないようだ。

しくしくと泣き続けるダーナちゃんをよそに、トリス君が話を続ける。


「ダーナは、アシールが召喚して契約したんだ」

「うん。でも、たまにホームシックになって、ダーナ泣いてる」

「こいつ、いっつも泣いてんじゃん」


トリス君がそう言ってケラケラ笑うと、ダーナちゃんがむっとしたように言い返す。


「だ・・・だって・・・そういう・・・・種族・・・」

「わーかってるって。バンシーは泣くのが仕事、だろ?」


なんだかんだ言って、仲の良い人にはダーナちゃんも遠慮はしないようだ。

分かってるならいいのよ、とばかりに鼻を啜って、つん、と横を向く。


「リザさんは、月光鳥と契約してる?」

「ううん。スノウとはしてないよ」

「契約、しないの?」


そう言われて、私はうーん、と唸る。


「召喚魔法で呼び出した訳じゃないからなぁ」

「違くても、契約、結べるよ」

「そうなの?」

「契約、とっても便利。お互いの特技、共有できるから」


アシール君に言われて、そういえば、契約にはそんな特典があったな、と思い出す。


「アシールとダーナは何を共有してるんだ?」


まさに疑問に思ったことを、トリス君が尋ねてくれたので、私は聞きに徹する。


「ぼくと、ダーナ。なんだろ」

「わ、私・・・風魔法・・・得意に・・・なった」

「うん、ぼくの特技だ」

「た・・・ぶん・・・アシールは・・・人の・・・死」

「人の死?」


思わず聞き返せば、ダーナちゃんがびくりと肩を跳ねあげて、身を竦ませる。

驚かせてごめんね、と言えば、ふるふると首を横に振ってくれた。


「バンシー・・・人の死に・・・敏感・・・。誰かの・・・死が近いと・・・泣いちゃう・・・」

「そっか、じゃぁ、ぼくはまだダーナの特技を使ったことがないんだ」

「うん・・・。いい・・・こと」


なるほど、と私は頷く。

もし、私とスノウが契約したら、お互いにどんな特技を共有するのだろうか?

頭の上にいるスノウの喉元を指先でくすぐれば、知らないわ、とばかりに彼女は暢気に欠伸をした。

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新作「グレーテルと悪魔の契約
ちょい甘コメディファンタジーです。
よろしくお願いします〜!
by りきやん

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