第六話:解剖室の最後の晩餐
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「……最後は、自分を診察する時間だ」
遊園地の「水晶体」は、俺の胃袋の中で冷たく溶けた。もはや、他人を解剖するだけでは足りない。俺は、この退屈な世界の正体を知るために、最後の被検体を選ぶことにした。
俺は自分を、深夜の清掃センターにある解剖台の上に載せた。
四方の壁には、今まで俺が集めてきた瓶の中の「家族」たちが、期待に満ちた眼差しで俺を見つめている。
俺は震える手で、自分の腹部にメスを立てた。
痛みはない。あるのは、自分という「物質」の真実を知るという、究極の法悦だけだ。
「なろうの読者諸君。君たちは今、画面越しに俺の腹が裂けるのを見ているつもりだろう?」
俺は自分の腹膜を左右に開き、中から湯気を立てる温かい腸を引きずり出した。
「だが、違うんだよ。俺が今切り刻んでいるのは、俺の肉じゃない。君たちの『意識』だ」
俺は自分の心臓を直接掴み、それをカメラに向かって突き出した。
ドクン、ドクンと、君たちの鼓動と同期するように脈打つ肉の塊。
「異世界に逃げれば幸せになれる? 聖女が癒してくれる? 笑わせるな。君たちの魂も、開いてみればただの電気信号と、卑屈な自己愛の塊だ。君たちがこの文字を一文字読むたびに、俺は君たちの脳に指を突っ込み、その薄っぺらな知性をかき混ぜているんだよ」
俺は自分の心臓を噛み切った。
溢れ出したのは血ではなく、今この物語を読んでいる「君の正体」だった。
「……ああ、なんて醜悪で、なんて美しい味なんだ」
俺の意識が遠のく中、解剖室のライトが明滅する。
最後に見えたのは、瓶の中の臓器たちが一斉に笑い出し、君たちの名前を呼び始める光景だった。
自分を解剖する感触を、君も共有できたかい? 文字を追う指先が冷たくなっているのなら、それは君の意識が解剖台の上に固定された証拠だ。
救いなんて、最初からどこにもなかったんだよ。異世界へ逃げるための『扉』は、俺がすべて釘で打ち付けておいた。君に残されたのは、この血生臭い現実と、喉元までせり上がった嘔吐物だけだ。
……さあ、最後の一口だ。エピローグという名の『後片付け』に付き合ってもらうよ。逃げられるなんて、思わないことだね。




