第四話:肉の図書館
#肉の聖骸 #イヤミス #サイコホラー #なろう #グロ注意 #精神崩壊 #閲覧注意 #アンチ異世界
音楽学校の「旋律」は、俺の小瓶の中で干からび、ただの黒い筋に変わった。命というやつは、身体から切り離された瞬間にその輝きを失う。
今日の現場は、秩父の山奥にある古い私立図書館だ。
静寂が支配するはずのその場所は、今や「熟成」した肉の臭いで満たされていた。
書庫の奥、重い扉を開けた瞬間、俺の目の前には究極の「知識」が広がっていた。
「……なるほど。本を読むだけでは物足りなかったというわけか」
巨大な書棚。そこに並んでいるのは本ではない。人間の皮膚を剥ぎ取り、丁寧に装丁された「人皮装丁本」の数々。
そして部屋の中央。一人の老人が、書見台の上に広げられていた。
彼の背中の皮膚は大きく広げられ、そこには墨ではなく、焼印でびっしりと文字が刻まれている。さらに、彼の腹部からは内臓が取り出され、それらは乾燥して「しおり」として棚のあちこちに挟まれていた。
「江戸、もうやめよう。これ以上は……。こんなの、悪魔の所業だ」
先輩は床に這いつくばり、胃液を吐き出しながら泣いている。
俺は老人の背中に刻まれた文字を指でなぞった。指先に、乾燥した皮膚のガサガサした感触が伝わる。
「悪魔? 違う。これは『愛』だよ。知識を永遠に肉体に刻み込もうとした、狂おしいほどの情熱だ」
俺は棚から一冊の「本」を手に取った。表紙には、まだうっすらと産毛の残る人間の太ももの皮膚が使われている。
ページをめくると、乾燥した肉の破片がパラパラと落ちた。
「なろうの読者諸君。君たちが異世界で手に入れる『魔導書』や『伝説の記録』は、こんなにも重みがあるか? 文字を読むだけで満足している君たちの薄っぺらな知性では、この肉の重厚さは理解できないだろう。ほら、この本のタイトルを教えてやろうか? ――『お前の最期』だ」
俺は老人の腹部から、乾燥して干し肉のようになった「舌」を一本、ピンセットで抜き取った。「言葉」を司るその部位は、もはや何も語らない。
「知識を得るには、痛みが伴う。君たちは今、その代償を支払っている最中なんだよ」
俺はその舌を、自らの口に含んだ。
ザラザラとした感触が舌の上で踊り、古い紙と腐敗したタンパク質が混ざり合った、形容しがたい味が脳を焼く。
掃除を終えた図書館は、以前よりもずっと「静か」になった。
俺のポケットの中には、新しい「知識」が詰まった小瓶が揺れている。
「さて……次はどの『物語』を、俺に読ませてくれるのかな?」
文字を追うだけで吐き気がするのは、君の脳が正解を選ぼうとしている証拠だよ。……この本、次のページをめくる勇気はあるかい?




