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戦いになった時点で、終わりだ

――一時間後。


扉が、乱暴に開かれた。


「……持ってきたぞ」


男が戻ってくる。


その背後には、先ほどより明らかに多い人数。


足音が重なる。


机の上に袋が叩きつけられる。


金貨、紙幣、宝石――

かき集められるだけ集めたのが分かる。


「これで全部だ」


マスターは、一瞥する。


そして、男の後ろに並ぶ連中にも、軽く視線を流した。


「……足りないな」


その一言で。


男の顔が歪む。


「ふざけるな……! これ以上はねえ!」


「十億だ」


淡々とした声。


「足りないものに、水は売らない」


沈黙。


やがて。


男の口元が、歪む。


「……そうかよ」


低く、笑い一歩、下がる。


その動きが――合図だった。


背後の連中が、一斉に武器を構える。


銃口、魔導具、殺気。


「一時間あったんだ」


男が言う。


「馬鹿が、準備くらいするに決まってるだろうが」


歪んだ笑み。


だが。


マスターは、微動だにしない。


「……そうだな」


短く、返す。


「そのために、やった」


「……あ?」


男の表情が固まる。


「逃げる時間も、用意する時間も」


視線を上げる。


「どちらでもよかった」


静かな声。


「選んだのは、お前だ」


空気が、凍る。


「――やれ!!」


男の怒号。


引き金が引かれる。


魔導具が光る。


だが――


遅い。


次の瞬間。


音は、なかった。


ただ。


人が、消えた。


水が走る。


刃となって。


見えない速度で、すべてを断つ。


一人、また一人と。


反撃する間もなく。


悲鳴すら続かない。


数秒。


それだけで。


店の中から、命の気配が消えた。


最後に残った男が、崩れる。


「な……なんだよ……これ……」


震える声。


理解が追いつかない。


マスターが、ゆっくりと近づく。


「戦いになった時点で」


静かに言う。


「もう、遅い」


水が、集まる。


「俺の力を知った人間を」


刃が、形を成す。


「生かしておく理由がない。仮に逃げたとしても結果は同じ」


男の顔が、絶望に染まる。


「や、やめ――」


その言葉は、最後まで続かなかった。


一瞬。


それだけで。


男の存在は、消えた。


静寂。


マスターは、机の上の水を手に取り、一口飲む。


ぽたり、と。


赤く染まった水が、床に落ちた。




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