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26 残されたもの

「…ちょ、おい!起きろ!!」

 ヨハンが眠っていた俺を揺さぶる。

  

「ん…な、に…?」

 



「バルコニーに子竜と子犬がいるんだが?!」





「…………………え?」

 



「ほら、あれ…!!」

 

 声量はなんとか抑えているが、さすがのヨハンも興奮を抑えられないようだ。

 そんなヨハンがまだ半分眠っている俺に向かって何度もバルコニーを指さす。


 


 俺はヨハンに促されるままに起き上がり、窓の外を見る。 

 俺の目に入ったのは___



「わふわふ!!」

「ぎゃっぎゃ!」


 別れる前となんら変わらない、二人の相棒の姿だった。



「な?!いるだろ?!」

「え、な…なんで…」

 ……これは夢…か?

 

 俺はゆっくりと立ち上がると窓際に向かった。




「わふ!」

「ぎゃあ!」


 俺の姿を見るなり二人が窓に駆け寄る。

  

 その姿を見ていた俺の頭が、一気に覚醒する。



「クロ………ニヴラ……」


「わふっわふっ!!」

「ぎゃっぎゃ!」 

 二人も声量を抑えているらしい。相変わらず優秀な相棒だ。


「お前の使役魔獣…なのか…?」

「うん…」

 

 『何故』『どうやって』

 俺の頭は聞きたいことでいっぱいだった。

 

 けれど気づいたときには俺は、二人を力いっぱい抱きしめていた。




「クロっ、ニヴラっ……会いたかった…!!」

「わふわふ!!」

「ぎゃあ!」




「………おいおいおい……一体どうなってんだよ……?!」

 







「こっちの黒い犬はクロで、こっちの小竜はニヴラだよ」


「わふ!」

「…ぎゃぁ」


 二人は床の上にちょこんと座っている。

 まだ俺は少しだけ夢なんじゃないかと思っているが、ひとまずヨハンに二人を紹介した。


「お、おう…。よろしく」

 ヨハンはかなり戸惑っている。


「わふ!」

「…ぎゃ」


「二人とも僕の大切な相棒なんだ」

「竜が相棒かよ………じゃあ、本土から飛んできたってことか…?それとも、他に人間がいる…?」


「…ぎゃぁ」

 ニヴラが『やれやれ』という感じでため息をついた。

 

「…たぶん、この子たちだけだ。ニヴラがクロを連れて飛んできてくれたんだよね」

「ぎゃあ」


「……やはり竜という生き物は規格外すぎるな。こんな小さな体で数十万エルの距離を移動するなんて……まだ信じられそうもない」

「ぎゃ!」

 『そんなこと、朝飯前だわ!』とか思っていそうだ。ニヴラは得意げな顔をしていた。

 


「お前も海を越えてご主人様を助けにきたんだな。犬の忠誠心は凄いとは聞くが…」

「わふ!」

 クロが首をコテンとしてから、元気いっぱいに尻尾を振っている。


「…え、可愛すぎる」

「そうでしょ?」


 ヨハンがクロの可愛さに悶えていたので、俺は力強く同意しておいた。

 クロの可愛さはみんなを魅了してしまうらしい。 



「…しかし、このタイミングか…。見つからなければいいが……」


「どういうこと?」


「あぁ、昨日お前にも話そうと思ったんだが……」

「あ、昨日はごめん。僕眠ちゃったみたいだ」


 ロロと【ツウワ】していた俺がこの部屋に戻ったのは、夜の八時ごろだった。

 ヨハンはその時部屋にいなかったし、俺も眠かったのでそのまま眠ってしまったようだった。

 



「今日の貨物船にルゼ様が同乗しているらしいんだ」


「貨物船?」

「あぁ、この島には週に一度物資を運ぶ貨物船が来るんだ」

「へぇ、そうなんだね」



「……気をつけろよ?ルゼ様が直接この部屋に来るとは思えないが…」

「分かった。気を付けるよ」


「朝食はどうする?」

 ヨハンがクロとニヴラを見る。


「僕はいいや」

 はやくニヴラから話を聞きたい。



「じゃあお前らの分は何か貰ってきてやる」

「ごめん。助かるよ、ヨハン」

「気にするな」


 クロをひと撫でしてから、ヨハンは大食堂へ出かけて行った。

 俺は本当にヨハンはお世話になってばかりだ。フルゥもそうだが、俺は人に恵まれていると思う。




    …パタン。




 ヨハンの足音が遠ざかったのを確認した俺は即座に【遮蔽網】を展開した。

 そしてその流れで【隠ぺい首飾り】も錬成する。【隠ぺい首飾り】はその名の通りつけた者の姿を見えなくするものだ。


「ニヴラ、クロ。ここで行動するときは、絶対にそれをつけてください」

「わふ?」

「何故だ?」


「色々と理由はありますが…クロはともかく、ニヴラは目立ちすぎます」

「…まぁ、致し方ないな。ここは『悪の秘密結社』の島なのだろう?ロロがそう言っておったわ!」

「ははは…『悪の秘密結社』か…ロロらしいですね」



「というか、貴様はこんなところで何をのんびりしておるのだ?!こんな小さな島、とっと出ていけば良いものを…」

「…え?ロロから何も聞いてないんですか…?」


「何のことだ?まったく、貴様のせいでロロも大分弱っておったのだぞ。これだから人間というのは…!」

「え、ちょっと待ってください。じゃあ、ロロからこの島の場所を聞いたからここまで来たんじゃないってことですか…?」


 

 



 昨日の【ツウワ】中、ロロはすぐさま俺がいる場所を特定してくれた。


 『【魔法の地図】で、ずっとずっとリュカのこと探してたんだけど~、さっき初めて()()()()()浮かび上がったんだよ~!!』 

 

 【魔法の地図】とは、ロロが造った特別な世界地図だ。

 この地図に『登録』した者の位置を、その地図は示してくれるらしい。



 ロロによると、この島の名前は『バレアス島』。


 本土から200,000エル(200km)離れたところにある離島だった。

 持ち主は『コーネリウス侯爵家』。中部地方を治める有力な貴族のひとつだ。



「そうだ。昨日の晩飯のとき、クロが突然我輩に言ったのだ」


「…クロが?」

 俺はクロを見る。


 クロは俺の膝の上で丸くなって眠っていた。

 とてもかわいいので起こさない程度に撫でた。

 


「突然遠吠えしたかと思えば、『あっちからリュカの耳飾りのけはいがするっ!!』と叫んだのだ」

「そのことをロロは知ってるんですか?」

「いや、ロロも突然いなくなったから、話してはおらぬ。念のため魔法で書置きしておいた」

「さすがですね」

 恐らく俺がちょうどロロに【ツウワ】した時だったのだろう。

 


「そうだろう!我輩も最初は半信半疑だったのだが、クロがどうしてもと、聞かぬのでな」


 俺はもう一度クロを見た。

 こんな小さな体で俺の為に頑張ってくれたのかと思うと、また泣きそうになってしまった。


「クロはまだ幼いが四霊獣の子孫だ。これくらいのことは造作でもない」

「それは、そうかもしれないですね」

「しかし、なぜあの時になってクロが気付いたのかについては解らぬと申しておった。というか……貴様は耳飾りはどうした?」 

「荷物は全部取られてしまったんです」

「馬鹿者!いつもぼんやりしておるから、そういうことになるのだ!」

「……返す言葉もないです」

 言い訳したい気持ちもあるが、ニヴラがいうことも間違ってはいない。


「まったく、さすがの我輩も少し疲れたぞ。クロもいたのでいつもよりかなりゆっくり飛んでやったのだ!」

 ニヴラがふわぁと、あくびをする。


「ニヴラ」



「なんだ?」

「僕を見つけてくれて、ありがとう」

「………ふん。クロに言え」



 ナハロ村からバレアス島までは恐らく300,000エル(300km)以上は離れている。

 それを半日で来てくれたのだ。そして二人が俺の為にこんなにも頑張ってくれたことがどうしようもなく嬉しかった。


 


「…にしても、やはり貴様は生きておったようだな。ぎゃっぎゃっぎゃ!」


「え、何で僕が死んでいることになってるんですか…?」

  

 確かにあの時はかなり嫌な別れ方をした。



「こちらも色々とあったのだぞ!貴様と別れて我輩はひとまずクリスをギルドに送ってやったのだ。……まったく、暴れて大変だったのだぞ?!」

「そうですよね。ニヴラには感謝しきれません」


「帰ったら覚えておくのだぞ!……それで、その後なのだが…」





 ニヴラは、俺がいなくなった後のことを詳しく話してくれた。




 クリスをギルドに届けたニヴラたちは、そのまま俺のところへ戻ろうとした。

 しかし、クリスがそれを止めたらしい。

 

 お前(ニヴラ)が本気を出せばルッジェーロ(あの男)なんか簡単に殺せるだろう。

 でもそれは、人質がいない場合だ。それに、リュカは絶対にアリッサも他の人間も見捨てることは出来ない。


 それを聞いたニヴラは、ギルドに留まざるを得なかった。



 そして、クリスはレイに全てを話そうとしたが、レイは依頼で遠方へ出かけていることをギルド職員に告げられる。

 


「…うまくいかないものですね」

「…本当にな。クリスはツィアーノに残りフィリップらに協力を要請した。だが我輩はとりあえず一度ナハロ村に戻ることにした」



「ニヴラとクロはロロのところへ向かったんですね?」

「そうだ。あ奴が一番信頼できる」

「それを聞いたら、ロロが喜びますね」

「はっ」



 ロロのところへ戻ったニヴラは、眠っていたロロを起こし全てを話した。

 ロロはかなり動揺していたようだが、俺の居場所を探そうと【魔法の地図】を開いた。

 しかし、【魔法の地図】から『リュカ』の文字だけが消え失せてしまっていた。



「もしかして、それで僕が『死んだ』と思ってたんですか?」

「それもある。しかし、貴様の”魂の輝き”が見えなくなったことなど、これまで一度もなかったからな…」

「”魂の輝き”…?」


「…まぁ、それはひとまず置いておけ。錬金術においてロロが解らないのならば、他の人間も解らない。そうであろう?」

「その通りです」



 大前提として、おそらく俺はまだ生きているだろう。

 しかし、俺の氣力が何らかの力によって妨害されているということにロロは気づいた。


 伝説級の錬金術士であるリュカの力を無効化せしめるもの。

 いったいどんな『伝説級』の錬成物なのか。

 ロロはすぐに調べ始めた。


 そしてロロは、朝方になってやっと目ぼしい答えに辿り着いた。

 


「それが【隷属の耳飾り】と【独裁者の指輪】なるものだったのだ」

「状況証拠しかないのに…ロロは本当にすごいですね」



「だが、そうはうまくはいかなかった」

「……」


 現状の原因が予測できたとして、一体誰がそれをリュカにつけたというのか。

 『ルッジェーロ』なのか。はたまた『あの屋敷』の誰かなのか。


 それに勿論これらは”禁忌の錬成物”だ。錬成したことが知られでもすれば、一生牢屋から出てこれないだろう。

 しかし、6歳の一見普通の少年であるリュカに軽々しく使えるほどの手持ちがあった。

 それはつまり、かなりの数の【隷属の耳飾り】が存在することを意味する。

 

 そこでロロは、ジェドを頼ることにした。

 



「ジェドなら何か知っているかもしれませんね」


「そうなのだ。だが、あ奴も不在だった」

「ジェドさんも…」


 確かに俺はツィアーノへ行く日の早朝に馬宿でジェドに会っているし、あの時ジェドはよそ行きの格好をしていた。

 きっと大事な用があるのだろうとは思ったが…


 

「困ったロロは今度はパースとテオのところへ相談に行った」

「それは良い案ですね」


 ロロがパースとテオに協力を要請すると、二人は二つ返事で快諾した。

 特にテオは、ツィアーノの”怪しい屋敷”のことを知っているようだった。

 

 テオによるとあの屋敷は『奴隷商人の店』として商人の間で噂をされていたようだった。たった一度だけ行方不明になった子に似た子が屋敷に出入りしているのを見た、という話が出たが、泡のようにその話は消え去ったのだという。

 それを聞いたロロは、それはもう、盛大に取り乱して大変だったらしい。



 パースは衛兵に掛け合うことを、そして、テオは商人の伝手を使って聞き込みをすることを約束してくれた。そして、ロロはその足でルーシュのところへ向かった。



「…ルーシュは大丈夫なんでしょうか?」

「ただの心労だ。もろに貴様のせいだがな。まぁ、ゴルじじいが看てるからとりあえずは大丈夫だろう」

「………そうですね」


 ロロから話を聞いたルーシュはその場で倒れてしまったらしい。

 店の手伝いに来てくれていたターニャとロロでなんとかルーシュをベッドまで運んでくれたようだ。

 

 なので俺はまだルーシュと話を出来ずにいた。

 ルーシュにも、本当に申し訳ないことをしてしまった。



「そして、貴様がいなくなってから二日後だ。ジェドがルーシュの家に突然やって来た」


 ジェドは衛兵の姿ではなかったらしい。

 恐らくジェドも私用を済ませて戻ってきたばかりだったのだろう。

 

 ロロの文を兵舎の使用人から受け取ったジェドはその足でうちへ来た。

 そのあまりの顔色の悪さにニヴラもさすがに心配になったそうだ。

 


「ぎゃっぎゃっぎゃ!思い出すだけでも笑けてくるわ……どうやら貴様は、色んな人間の弱みらしいな」    

  ニヴラが楽し気に笑っている。

 

 みんなが俺の身を心配してくれている。なんて優しい人たちなのだろう。俺はまた少し泣きそうになった。



 ロロから話を聞いたジェドは、すぐさまどこかへ【伝書バト】を飛ばした。

 

 それから間もなくしてテオが合流する。

 テオによると、”ルッジェーロ”なる男は、『フラウド商会』と関わりのある男だということが判明する。フラウド商会はイメストラの事件の時に名前が挙がった黒い噂の絶えない商会だ。

 


 『人探しの依頼』 『消えた少女と獣人族の少女』 『奴隷商人の店』 『ルッジェーロ 』 『フラウド商会 』 『隷属の耳飾り』と『独裁者の指輪』



 つまり、リュカは力を無効化された状態で、”ルッジェーロ”によってどこかへと誘拐された__

 しかし、その場所がどこなのか、今は見当がつかない。

 ならば、フラウド商会に潜入すればいいのではないか。


 ロロ、ジェド、テオの三人の中でその結論に達した。

 その時だった。



「レイとクリスが来たのだ」

「そうなんですね、レイさんがわざわざナハロ村まで…」


「レイはジェドの親の仇か何かなのか?かなり面白いことになっておったぞ!ぎゃっぎゃっぎゃ!」

「何ですかそれ…?」


 レイとジェドは顔を合わせるや否や、ジェドがレイの胸倉を掴んだそうだ。


 驚いたのは、ロロ、テオ、クリスだった。

 やり場のない怒りを感じていたジェドはレイと殴り合いを始めそうな勢いだったらしい。

 しかしクリスとテオがその場をなんとか収めてくれたそうだ。

 

 


 レイたちギルドの方も衛兵を引き連れツィアーノの”怪しい屋敷”への立ち入り調査を申し入れたそうだが、『コーネリウス侯爵家に申し入れを行うように』の一点張りだったらしい。

 ギルドとしてもクリスの証言と状況証拠しかないため突入に踏み切ることも出来ない。

 だからと言って正規の手順を踏み、コーネリウス侯爵家の回答を待ったところで、かわされるのが関の山だ。

 

 しかし、まずはリュカの唯一の家族であるルーシュに現状を説明をする必要がある。

 リュカの育成官であるレイはクリスに案内されてリュカの家までやってきた。


 そしてそこに、偶然ジェドたちが居あわせた、というわけだ。




 ロロから話を聞いたレイはしばらくの間考え込んでいたが、そのうちに重い口を開く。

 

 そして、もう一度『あの依頼』を受けてみるのはどうか、と提案したのだった。

 ロロもそれは考えていたが、その為には自分以外にもう一人冒険者が必要だ。

 そしてその()()()冒険者が誰なのかもわかっていた。

 しかし、それをテオの前で口に出すのはさすがのロロにも躊躇われた。


  

 沈黙の中、レイが手を上げた。『あいつが攫われたのは俺の責任だ』と。

 しかしすぐさまジェドが食い掛る。あんたに任せておけるか、それならば自分がやる、と。

 

 だが、どう考えても二人が適任ではないのがその場の誰もがわかっていた。



 すると、こちらも考え込んでいたテオが、重い口を開いた。

 そして、『ヴォルフしかいないだろう』と、小さくもはっきりとした声で言った。



 ロロは齢こそ20だが、見目の年齢はヴォルフと同じくらいかそれよりも下に見える。

 それに、ヴォルフの見目の良さは抜群だし、魔法の才能もとびぬけている。

 誘拐される基準が何なのかは解らないが、ヴォルフを欲しがるのは想像に難いだろう。 

 

 しかし、それではヴォルフを『囮』にすることになる。そうジェドとレイが強く反対した。



 『これはヴォルフの意思だ。俺は絶対に認めたくなかったのだが…』と、テオが静かに言った。

 テオからリュカのことを聞かされていたヴォルフは、真面目に仕事に取り組みながらも、四六時中リュカのことばかり考えていたのは明白だった。

 『こうでもしなきゃ、ヴォルフは今度こそこの村を出ていっただろうな…』と、テオは困ったように笑ったそうだ。





 

 翌日、冒険者登録を済ませたヴォルフとロロはビリーの家を訪れた。

 ヴォルフの気合は相当のものだったし、勿論レイたちも少し離れたところから二人を見守った。




 …だが


「…誰もいなかった、というわけだ」

「…そうですか」


 確かに前日まではビリーはいたのだ。他の冒険者が確認している。

 

 しかし朝の漁に出てからビリーがこの家に戻って来ることは、なかった。



 作戦の練り直しを迫られたロロたちは、一度ナハロ村へ戻ることにした。

 そして、ロロがルーシュの顔を見にうちへ寄ってくれたとき、俺からの【ツウワ】がきた、というわけだった。



「これが貴様がいない間に起きていたことだ。我輩の天才的な理解力に感謝しろ!」

「ニヴラ。本当にありがとうございます」

 本当に、ニヴラには頭が上がらない。


「まぁ良い。貴様にはいずれ我輩の下僕として目一杯働いてもらうからな?」

「下僕…」



「とりあえず、ニヴラにはまだ言ってませんでしたが僕はロロの読み通りこの【銀のピアス(隷属の耳飾り)】のせいで錬金術が使えなかったんです。それにこの棟のどこかに【独裁者の指輪】もあってですね…」

 俺は朽ちた銀のピアスをニヴラに見せた。



「おい、リュカ」


「何ですかニヴラ」




「貴様、錬金術を使えているではないか?」


「…だから………あれ?」


「何を寝ぼけておるのだ貴様は…」

 貴様は我輩がいないと、とか何とかニヴラが言っているが、今はそれどころではない。




「【創造の神ケイオスよ。我が名はリュカ。我が血に流るは貴方の『意志』。今こそ其の力我に与え給え

】【〈クリヲラ〉を見渡す【地図】を我が手に】」



_ファサ...


 俺たちの目の前には、確かに【世界地図】が顕現している。



「ほら見ろ。いつものように錬成出来ているではないか!」


「……そうみたいですね……」



 【独裁者の指輪】をまだ見つけていないし、【英雄王の指輪】だって錬成していない。しかし【銀のピアス】を破壊したことで、全てが良い方向に変わり始めたのは確かだった。

 


 そして、これから先俺の前に『鉄の壁』が再び姿を現すことはなかった。

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