第七話 ラーメン流儀
二郎は、机に向かい、一人で会議を始めた。
――最近、僕は弛んでいる。
ラーメンに対する情熱が、足りない。
ラーメンを愛している?
本当に、好きと言えるのか。
昨日までの僕は、口だけの男だった。
ハンバーガーに浮気しそうだった。
人任せにしてしまった。
今日から、心を入れ替えよう。
一つ、ハンバーガーよりラーメン。
二つ、ラーメンは自分の手で作れ。
三つ、麺から目を離すな。
これを忘れてはならない。
これを、ラーメン流儀と名付けよう。
これが僕の全てだ。
僕は、ノートに流儀を書き込むと、目を閉じて、心を落ち着かせる。
ラーメンに始まり、ラーメンに終わる。
今日の一杯を始めよう。
「二郎。ラーメン食いに行くぞ。」
――耳を疑った。
あの兄が、ラーメンを食べに誘うなんて。
「この前、ラーメン台無しにしただろう。だから、俺が奢ってやるから、食いに行こうぜ。」
――やった。
今日は、何も心配しなくていいぞ。
「何してんだ。行かないのか?」
「行く行く。ラーメン食いたい。」
商店街まで歩き、数分もすると、老舗のラーメン屋に着いた。
「ここだ、ここ。この店で、好きなもん、奢ってやる。」
兄が、店内に入ると、カウンター越しに強面の店長が顔を覗かせる。
「ちっす。弟連れて来たんで、何か食わしてください。」
兄は、カウンターに座ると、僕を横に座らせた。
「ラーメンで良いか?」
僕は、すぐにうなづいた。
「じゃあ、ラーメン2つ。」
兄の言葉に、店長は、持っていた中華鍋とオタマを離す。
「一郎。ちょっと来い。」
兄は、店長の元へ駆け寄ると、二人で何かを話してから、静かに戻った。
「二郎。ここのチャーハン美味いらしい。お前、チャーハンな。」
「えっ、だって、なんでも良いって。」
「ここのチャーハン、滅多に食えないんだから、チャーハン食っとけって。」
店長を見ると、笑っていたが、目は笑っていなかった。
「分かった。チャーハンで良いよ。」
「そっか、チャーハン食いたいよな。うまいもんな。」
店長は、再び、中華鍋とオタマを使って、数分でチャーハンを仕上げた。
「これっ、美味いな。だろ?」
――美味しい。
だけど、僕にはラーメン流儀がある。
裏切る訳にはいかない。
……それでも、このチャーハンは、僕が食べた中で一番美味しい。
……よし、チャーハン流儀も作ろう。
兄と僕は、チャーハンを平らげると、そのままお店を出た。
ラーメン記録帳
出来事
ラーメンの代わりに、お店でチャーハン食べた。
チャーハンは、美味しかった。
……いや、ラーメンも美味しい。
僕は、ラーメンを裏切っていないはずだ。
命名
新星チャーハン事件




