第六話 良くできた弟
二郎は、机に向かい、一人で会議を始めた。
――父と弟の茶番劇事件。
あのラーメンタイムを返してくれ。
父も、弟も大嫌いだ。
こんな時は、ラーメンだ。
机の引き出しを開くと、昨日、食べるはずだったラーメンを取り出す。
――よし、行くぞ。
「兄ちゃん。」
――今度は、なんだ。
三郎、今、お前に用はない。
……しかし、あれは、なんだ。
まさかっ、ラーメン王。
本格的なお店のようなカップラーメン。
割高だから、買えなかったラーメン。
なんで三郎が持っているんだ。
「お前、その手に持っているのは、まさか。」
「そうだよ。兄ちゃんの好きなラーメン。父ちゃんに買ってもらったんだ。」
――ハンバーガーだけでなく、今度は、ラーメン王まで。
……またかよ。
「この前、ハンバーガー食べちゃったから、これ兄ちゃんにあげるよ。待ってて。今、作ってくるから。」
――僕は、間違っていた。
今なら、言える。
三郎は、良くできた弟だ。
机の上で、三郎のラーメンをじっと待つことにした。
――ラーメン王の出汁の良いスープ。
歯ごたえのある麺。
久々に食べられる。
なんて、幸せなんだ。
二郎は、いつものカウントダウンも忘れ、待ち続けていた。
――おかしいな。
そろそろ五分、経ったはずだ。
まだ、出来ないのか。
三郎のことだ。
まだ、ラーメンを作るのに時間が掛かっているのだろう。
まだまだ、僕の域に辿り着くまで、修行が足りないな。
今度、作り方を教えてあげよう。
「兄ちゃん。お待たせ。特製ラーメンだよ。」
「三郎。」
大喜びで、三郎が机の上にラーメンを置くのを待つ。
――こぼすなよ。
心の中で、そう願い。
その願いは、叶った。
「ありがとう。三郎。お前は、本当に良い弟だ。」
三郎の頭を撫でると、息を吐いて、心を入れ替える。
――よしっ、ラーメンに集中だ。
静かに蓋を開けると、すぐに口に放り込んだ。
――これっ……何味だ。
ラーメン王に新しい味が出ていたのか。
ベースは、醤油だけど、なんか、脂っこいし、甘い。
それに、コンソメみたいな味がする。
これ……本当に、美味いのか。
開けた蓋の表紙を確認する。
――醤油味って、書いてあるよな。
「どうっ、兄ちゃん。美味しいでしょ。僕の特製マヨネーズバニラチップスだよ。」
「ああっ、なかなかの味だね。」
顔を見られないようにカップを持ち上げて、一気に食べ干した。
――正直、まずい。
だけど、ラーメンを捨てる訳にはいかない。
過去の僕に言ってやりたい。
「ラーメンは、自分の手で作れ」と。
ラーメン記録帳
出来事
三郎が作ったラーメンを食べたが、不味かった
教訓
ラーメンは、三郎に作らせるな
命名
ラーメンアレンジ事件




