第四話 念願のラーメン
二郎は、机に向かい、一人で会議を始めた。
――弟完食事件。
もう、あんなことは沢山だ。
これからは、弟にも油断しない。
そうだ。先に口を付けるんだ。
そうすれば、もうあんなことは、起こらないだろう。
そして、今日は、お小遣いも手に入れた。
新しいカップラーメンも手に入れてある。
昨日は、たまたま、失敗しただけだ。
今日こそは、絶対に食べる。
僕は、机から立ち上がると、引き出しに、しまっていたカップラーメンを取り出す。
――よし、行くぞ。
颯爽とリビングに行くと、カップラーメンの袋を剥がす。
――今日は、誰もいない。
しかも、弟は、母と買い物に行っている。
完全に僕のラーメンの日だ。
疾きこと風の如く、食べ切ってやる。
カップラーメンの蓋を開けて、お湯を入れる。
――一分経過。
今日は、本当に邪魔が来ないな。
――二分経過。
もうすぐだ。
今日は、調子が良いぞ。
「three minutes
メン(麺)バー 熱さに慣れる頃〜」
「two minutes
メン(麺)バー 祭りを始める〜」
「one minute
メン(麺)バー 最高に騒ぎ出す〜」
――残り十秒。
もう何が何でも、食べてやる。
「ただいま。」
――この声は、三郎だ。
だけど、時は満ちた。
今なら、間に合う。
カップラーメンの蓋を開けると、急いで、一口目を口にした。
久しぶりの一口。
そして、念願の一口。
このまま、最後まで、走り抜けてやる。
「兄ちゃん。ただいま。美味しそう。」
――美味しいさ。
今日は、もうやらないぞ。
このラーメンは、僕のだ。
マイ、ラーメン。
「ただいま。」
――この声は、母だな。
だが、もう遅い。
半分にする前に口を付けたんだからな。
僕は、勝ち誇った顔で、ラーメンをゆっくりと味わった。
三郎は、貰えないことが分かったのか、母の方に歩いて行く。
――今日は、一段と美味しいな。
母が、手荷物をテーブルの上に置くと、見慣れない袋があった。
「ハンバーガー買って来たわよ。」
――ハンバーガー!!
しかし、今の僕は、ラーメンを裏切る訳には行かない。
ラーメンを愛する僕が、ラーメンを蔑ろにしては、いけない。
三郎は、袋からハンバーガーを一つ取り出して、大きな口に頬張る。
僕は、思わず、母の顔を見た。
「あんたの分もあるわよ。後で、食べなさい。」
――今日は、なんて良い日なんだろう。
ラーメンを食べて、ハンバーガーを食べる。
最高のコース料理だ。
ハンバーガーも温かいうちに食べなければ。
急いで、ラーメンを食べるが、久々のラーメンの味に自然とゆっくりになっていた。
――よしっ、食べ終わった。
次は、お前の番だ。
カップラーメンを脇に寄せると、ハンバーガーの袋に手を伸ばす。
――軽い。
昨日の悪夢が蘇る。
袋の中にはナフキンしか残っていなかった。
――僕のハンバーガーは?
ラーメン記録帳
出来事
ラーメンは食べられたが
ハンバーガーが無くなっていた
教訓
ハンバーガーを食べたかった
命名
幻のハンバーガー事件




