91.謎調味料
犬猫二人に翻弄されつつ、実際に会うなんて面倒だとしか思っていないミズキは適当に流しつつ、少しオンラインゲームに恐怖…までは届かない程度の、ちょっとした怖さを感じる。
メグミだけなら何となく理解も出来なくもなかったのだが、るぅも多少興味がある様な口ぶりだった事に少し驚く。二人揃ってフリーな時間をゲームに費やすもの同士であるなら、ショッピングセンターを面白そうにでも感じたのかね…程度にしか考えないのがミズキだが。
「まぁ、引きこもってゲームばかりするのも考え物なんじゃないです?」
と、ミズキは自分では大した事とは思っていなかった一言を投げる。
「言うねぇ…?」
瞬間…小悪魔的とでも言うのか…メグミのそんな表情を見た気がした。
それも束の間、メグミ自身がその話を伸ばすわけでもなく、別の話に切り替え始めた。
「まぁそれはそれとして、ワールドレイドが無くなったのは君の仕業だよね?話を聞かせてよ。」
「それですよね。呼ばれた理由がそれだと思ってましたよ。」
こうして、ワールドレイドが無くなった経緯を説明し始める。
・戦争を回避したかった理由
↓
・エディンの下見
↓
・水棲人の砦
↓
・プロデューサーとの交渉
↓
・領主面談と水産物ギルドの設立
くらいの流れで簡単に説明をしてみたが、ミズキが当たり前として扱う事柄をメグミとしては理解しがたい様で、何度も頭を傾げる様子が見られたのだが、るぅは少し食いつき気味で事あることに、るぅにしては大袈裟な感じで感嘆しつつ聞き入っていた。
メグミは多少理解しつつもそんな事出来るの?…的な受け止め方に対して、るぅはミズキなら出来て当たり前だと言わんばかりに納得するのではなく素で受け入れている感じだろうか。
そしてメグミが想定内の処に喰らいついて来る。
「僕達ギルド服のこと、すっごい楽しみにしてたのに…どうしてくれるのさぁ…?」
「あぁ、それはリチャードさんに俺がお願いしますよ。約束は出来ませんけど。」
「なんで…いつも…君は安心する言葉をくれないのかなぁ…」
「出来もしない事を期待だけさせられた挙句に、ガッカリさせられるのがお好みですかね?」
「うぐぅ…わかるけど…わかるけどぉ…」
「…めぐ…だいじょうぶだよ…ミズキちゃんだから…ね?」
「アンタのその妙な信頼もなんなのよ…」
「なるようにしか、なりませんよ?」
「君のその上から目線が好きじゃないよ…僕は…」
「嫌いじゃないなら大したもんじゃないですか、俺も。」
「…そう言う処はキライだよ…」
「面白い話もありますよ?こっちも半分くらい確定じゃないですけどね。」
そうして、テンがミニNPCとして仮想世界内で物理的に存在するかもしれない話、そしてそれが無理でも立体映像位なら実現するかもしれない話をする。
こっちに関して重要なのは、るぅとメグミが実際にテンと会話出来る可能性がソコソコあるのではないかと言う事だ。
「マジで?」
「…テンちゃんと…おはなしできるんだ…たのしみだね…♪」
「面白そうでしょ?100%じゃないですけど。」
「いや…面白そうだけど…君はホントに何をするかわからない子だね…」
「…ミズキちゃん…だからね…」
そして、水産物ギルドの設立に関して、二人のフレンドになったリザードマンが商業ギルドに来る話を付け加えて、とりあえず、タラとサーモン、そして将来的にマグロ辺りが獲れるかを相談したいと思っている事を伝えるとともに、調味料不足の嘆き節をこぼす。
そうすると…意外に出来る子が本領を発揮する。
「…おさかなに…あじを付けたいの…?」
「そうなんですよ…サーモンとかあっても、醤油が無いんですよね…」
「…いまでも…かんたんにつくれるものは…あるよ…?」
「ホントにっ!?」
こうした自分の興味の比重を大きく占める事柄に接した時のミズキは周囲が見えなくなる。るぅと対峙し、両手を両手で握りしめ、顔を近づけてるぅに迫る。少し動揺するものの昔に比べれば慣れたもので何とかそのまま話を続ける。
「…塩レモンとか…みずしお…とかなら…ここでもつくれる…たぶん…」
聞きなれない単語が耳に入り、一旦興奮が収まる事で落ち着く事になったミズキ。
メグミに視線を向けるも、メグミも解らない様子で首を傾げ両手の掌を上に向けている。
「なんですか?それ?」
そう問われて、るぅはミズキの両手を優しく振りほどいてから、調味料の説明をし始める。
「塩レモン」はブツ切りにして種を除いた物と塩を交互に盆に詰めて熟成した物。ぬか床は続かなかったそうで、毎日一回瓶を振る程度の作業を1週間位続けて作る物だそうだ。
説明を聞いてもピンとこないが、マリネや蒸し物、焼き物など遣い勝手は良いらしい。正直言ってレモンを絞って塩を振るのと何が違うのかすらわからない。
「みずしお」…は「水塩」…要は塩水何じゃないかと思ったのだが、るぅ曰く、出汁を取ったお湯で塩を煮詰めたり、塩を入れて煮詰めた物に一晩昆布を浸した水…とからしい…。
るぅ自身は親から教わったらしいが、分量も適当で、塩水を煮て、塩が鍋の淵に着き始めたら火を止めたら冷まして、結晶化してない水の部分が「水塩」なんだと。
海水に昆布を浸したら出来たりしないのか…って、それ海水のままか?ミズキ的には昆布漬飽和食塩水にしか思えない。
「良くわかんないんだけど、るぅねぇに食事をたかるメグさん的にはどうなの?」
「あー…タコと玉ねぎのマリネだっけ?レモン風味のやつ美味しかったよ?それだよね?水塩は…トロっとした塩水みたいのだっけ?刺身とかもイケてた気がするっ!」
「そっかぁ…るぅねぇ、マヨネーズといい料理上手なんですね。調味料なんて買うもんだと思ってましたよ…料理する人はそういうのから作るんですねぇ…」
「…じょうず…なのかな…?」
「メグさんは美味しかったみたいだし。教えて貰うのも楽しみになりました。」
「…そうだね…ミズキちゃんも…おいしいものつくろ…♪」
「そうですねぇ。」
感心しつつもどこから調味料の話になったのか…ともあれ、当初の目的であった経緯の説明を、商業ギルドでの会話の前にする事が出来て良かったし、調味料の話も面白そうだ…と、これもギルドでネタにするかな…等と考えていた。
久し振りに料理ネタが出ました。
マイナー過ぎて…「そんなものあるの?」と思われるかも…
本来は手っ取り早く濾しますが、ミズキの理解力不足って事で…(笑)




