88.二人?の変化
なんか小難しい回です。
殴られてコークの教会に戻ったミズキは色々な出来事があり、何だかんだと濃密な時間を過ごした事で妙に疲れていた。単に生き返った直後の気怠さなのかもしれない。
起き上がって周りを見回すと、同様に何かしらの理由で死亡したであろうプレイヤーが同様に気怠そうに動いているのが見受けられる。移動が面倒臭くて死に戻るプレイヤーなんて他に居る訳でも無いが、何故か自分が注目を浴びている様な感じがして、そそくさと外に出る事にする。
初めて見えた教会の内側は、ステンドグラスを通った陽の光も合わさって荘厳な雰囲気を保ち、もう少しじっくりと見て見たかったのが残念だ。
本当なら、商業ギルドに立ち寄って、リチャードに色々説明をするべきかもしれないが、恐らく決定事項としてプロデューサーからワールドレイドの中止の連絡が入るだろうと勝手に判断して、直接宿泊所に向かう事にする…テンからも連絡が行ってるし充分だろうと。
自分の中では、この街に影響を及ぼすであろうイベントを回避できた事実が全てなのだ。
ワールドレイドが開催される事が無ければ、貴族の依頼である娘を守る件に対してもリチャードの顔を潰すどころか、貴族の娘に対しての事故が起こる可能性すら消えてしまうのだから。
まぁ…それを指示したのがリチャード…ひいては商業ギルドなのかを証明する術が存在するかなのではあるが、依頼が無かった事にされ様が非難を浴びる謂れはないはずだと確信している。
自分が行動した結果、争いごとが無くなった事の証明が必要になるならば、最悪はウィリアムにでも泣きついて、証明のお願いして貰えばいいと位にしか思っていない。正直、泣きつく事なんてしなくとも、ウィリアムは快く引き受けてくれるはずだが…そんな事をミズキは思いもしない。
侵略が起こらない、今後の水棲人による侵略も消えた。調和も生まれるらしい。
そんな満足を満喫するミズキに対して疑問を投げかける存在がある。
『あんたさ…他人に対して言ってる「欲」?は無いの?』
突然の問いかけにも慣れたもんで、ミズキは応対し始める。
(あるだろ?あるんじゃね?したい事、欲しい物だらけだろ、現状?)
『この数日の結果、あんた何も得てないじゃない。』
(いや、色んな物をもらってんだろ?これ以上ないくらいに。)
『未定な私の体の他にアンタが貰った物って何よ?』
(個人的にはお前の体だけでも、お釣り来るんじゃね?)
『ちょ…私で何する気?しかも、まだ決まってないし。』
(は?おれと一緒に、るぅねぇやメグミと話すんだろ?)
『それだけ…なの?』
(後はお前もだし、エマさんとか肉屋の親父、エリ―ちゃん、ウィリアムさん…ロッタさんとか、卵のおばちゃんとかさ。フィーナや酒場の親父とかもか。関わった連中が変わらないのって良くないか?)
『…それは…あんたの利益じゃないでしょ?』
(なんで?)
『私が変わっても、やる事は変わんないわよ、きっと。』
(お前、記憶力だけはいいんじゃねぇのか…?…ったく。まぁ、俺もそう思ってた訳だから感化されちまったんだろうな。)
『……あっ…るぅが言ってた…』
(んだよ。今のお前が居ねぇと俺の世界は回らんと思うぞ?それに、俺に媚びを売るようなテンは気持ちわりぃしな。それに他の連中もそれなりにな。)
『それでも…理解出来ない…』
(メグミも言ってたろ?しかも、お前に嘘付けねぇだろ?グダグダせずにいつも通りにしてろよ。)
『それは命令?』
(いんや、頼みだよ。)
『何それ…訳わかんない奴…』
(んなこた知ってるよ。散々、周りの連中に変だ変だって言われてっからな。)
『ふふっ……そうね。そんな奴だったわ。アンタ。』
(ま、これからも今迄みたいに世話してくれよ。それでいいじゃん?)
『はいはい。』
とりあえずの束の間のこの街の平和な生活と、関わり合ったNPCの保護が今回の行動のご褒美なのである。確定したり…物理的な…金銭的な…目に見える…そんな褒美なんてなくても、自己満足出来た事が今のミズキの中で充分だったりするのだ。
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この世界での記憶…抽象的だが大きな棚に沢山の引き出しがある様なもの。
現実世界での思考や思い出もDREAMに持ち込む事が出来るが、意識してその記憶の引き出しを開けないとこの世界で現実世界の記憶は顕現しない。
意識して、引き出しを開けて、思考となって、それを読み取る時間を経て、テンはミズキの思考をアバウトだが読み取れる。
ミズキがテンに対して強く意識すれば会話も出来るが、それほどでないとしても。
それとは別にこの世界の記録が存在する。行動記録・会話記録・イベント記録など様々な記録。それらの記録はテンにも記録・蓄積されていく。
そして過去の記録を基にテンの思考にも疑問を抱く事がある。
ミズキの発言した「欲」の話等がいい例で、人には「欲」を求めても、自分が「欲」を持たない。持たない訳ではないのだが、個人的過ぎる欲をテンが理解できないのか。そんな妙な矛盾がテンにも疑問を生んだ。
テンに知識はあれど、疑問や好奇心などは無い…以前にそんな様な事を言った。それがまた少しだけ変わりつつある。ミズキやテンにも自覚は無い、でも、それを望んだも者も居る。またちょっとだけ
世界が変わるかもしれない瞬間がここにはあった。
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話をしている最中に休憩所には既に到着していたミズキは、
(そんじゃ、疲れたから今日は帰るわ。次、多分土曜な。)
『レイドも無くなっちゃったのにねぇ。』
(またお説教喰らうんじゃね?リチャードに。)
『かもね。ともあれ、お疲れ様。』
(おぅ、お疲れさん。またな。)
そう言って、いつも通りベッドに横になり、ミズキはこの世界から離れて現実に戻る。妙に疲れてはいるものの、何とかシャワーを浴びた後、再び横になって闇に落ちた。
レイド潰しのまとめ回?
近い未来の土曜日の話…登場人物多くて、混乱しそうで怖い…です。




