75.悔しさとご褒美と
そして蜥蜴達はまだまだ驚きに見舞われる。
突然5人の目の前に現代のスーツを着た人間が現れる。例のプロデューサーである。
「やぁ、ミズキ君。色々やってくれてるねぇ。」
「何だコイツ?どっから表れた!?」
「あ、Pさん。何となく来そうな気がしてましたよ。」
「お前の知り合いかよ…お前自身も、知り合いも、変な奴ばっかだな。」
「あれ?君達はPさん経由じゃないんだ?」
「運営でも、この世界に関与してるのは私だけではないからね。」
まぁ、確かにこの広い世界をたった一人で担当するのも無理があるだろうとそこに居る面々も納得する。目の前の男はミズキに話を持ち掛けた運営側の人間だと理解する。そして、ミズキの口調が出会った当初の丁寧気味な口調に変わった事でその場の空気を三人も読み取る。
変な服を着た大人に対して訝しがるのはエリザベスだけだが、当たり前ながらNPCが運営のアバターにどうこう言う仕様は構築されていない。
「で、今回は文句でも言いに来ましたか?」
ミズキは自分のやらかした事が、運営のレールを壊したのではないかと思っているのだ。
「んー、それより契約違反じゃない?スキルバラしちゃダメでしょ?」
「彼らがこれ以上は拡散しないですよ。ちゃんと彼等が運営に絡んでるのを確認してから話してるし、彼等も運営に絡んでる以上は似た様な契約してますよね?」
「あ、わかる?」
「ギリギリでしょうけどね。でも、在り来たりな流れより、イレギュラーが有った方がこの世界も盛り上がりませんかね?」
「はぁ…まぁ、いいか。そんな訳だから、君達も彼の事は他に言っちゃダメだよ?」
と、蜥蜴達に向かって注意を促す。
蜥蜴3人は声に出すわけでもなく首だけ縦に振り意思表示をする。
「まぁ、遅かれ早かれ、共通の敵を出す予定だったから何とかなるんだけどね…あんまり無茶しないでよ?」
「自分のテリトリーというか、コークが平和なら基本的には出しゃばりませんよ。」
「あ、そう?じゃ、そこは気を向けとくよ。」
ミズキの行動理念の一端を聞き、これ以上厄介事を起こさない様に注意を向ける…ミズキはそう受け取った。そして、ここぞとばかりに追撃をかけてみる。
「で、聞きたい事が有るんですよ。」
「なんだい?」
「俺、経験値が入んないんです。」
「うん、知ってるよ。」
「……あー、そうですか。じゃ、いいです。」
運営が把握していないのであれば、また難癖付けてみるかと思ってはいた。把握しているのであれば自分は泳がされているのだと理解して流すのだが、納得いかない者が脇から横槍を入れる。
「はぁ!?何が良いんだよ?お前、ずっとレベル1なんだぞ?それでいいのか?」
マイクだ…さすが戦闘馬鹿とでも言うか、強さに対して頓着の無いミズキが理解出来ずに勝手に反論してしまったのだ。しかし、ミズキはサラっと言い放つ。
「良いですよ?困りませんから。」
「なら、何で聞いたんだよ…ホントに訳わかんねぇ奴だな…」
「貴方にわかる様に言うなら、俺がバグ的な存在なのを運営は認知している上で俺を使ってるんですよ。」
「どーゆうこった?」
「だから、スキルも都合よく変えてあげたでしょ?君は別方向に変わると思ってた節が有るけど。」
「やっぱり、ワザとですか…はぁ…まぁ、良いですけど…変だと思ったんですよねぇ…と、そーゆう事ですよ。」
「でも、それを使って暴れてくれれば良かったんだけどねぇ…君、平和主義者や非殺生主義とか何か?」
「んー、気に入った物を壊しに来るなら、徹底抗戦しますよ?」
「なるほどね…力を振り回してくれないのは面倒臭いねぇ。」
どうやら過分な能力を与えた上で何か変な目論見が有った様ではあるが、ミズキの行動はその目論見に沿わなかったのだと感じさせる。
「今の処、俺はコークで飯を炊いて上手い飯を食うのが目標なんで。」
「で、今回の件の上手い治め方とか提案出来るかい?」
「そっちならありますよ。」
そう言ってミズキは自分の考えを述べる。もともと自分から交渉する際に言おうと思っていた事なので手間も省けると流暢に話し出す。
・争いは戦う事での決着だけが手段ではない
・今回の水棲人とグランド王国との争いはとあるプレイヤーの働きで治まった
・その為に今回のグランドに於けるワールドレイドは発生しない事とする
・貢献値は停戦に関わったプレイヤーに配分され、関わらない者には発生しない
貢献値の扱いについて、ワールドレイドイベントそのものが無くなる件に関しては、早期に発表する事でグランド側のプレイヤーが他国のワールドレイドに参加出来る様に派遣される形で対応すればいいのではないかと。
前提が水棲人とグランド王国との和平成立なのでミズキ的にはここからが面倒ではある。
「って感じでどうですかね?まぁ、俺は今からエディンにエリザベスを送りに行った上で、コークなのかパディンだかに和平の申し入れに行かなきゃ行けないかと。」
「いいよ…そんな事しなくても私が承認するから。」
「はぁ?気前がいいですね?」
「まぁ、戦闘だけが解決手段じゃないって案は面白いと思ったからね。一応、グランドで参加出来ないプレイヤーへの配慮もあるし、何でも出来ると唄うこの世界で和平や停戦が出来ないのも悔しいし。」
「悔しいんですか?」
「あぁ、悔しいよ。ゲーム内で運営の提供する戦争イベントを事前に止められるって発想は私にはなかったからね。だから、これは私からのご褒美だよ。水棲人側は君達リザードマン達がトップでしょ?グランド側のトップはNPCだからね、どうにでもなるよ。殆どのプレイヤーは運営側がこうでした…って発表すれば勝手にイベントだとか深読みして、勝手に納得してくれるものだよ。多少の文句は出れどね。」
そう言って、プロデュ―サー権限なのか何なのかは知らないが、Pさんはミズキの心配事の大半を吹き飛ばしてくれると断言してくれたのだ。
前回の話。
蜥蜴三人が「そうじゃない」…的な発言を一人一回しているのは…たまたまです(笑)
今回の話、実際はどうなんでしょうね…こうなったら…とか考えてしまいますが。




