↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/238

31.ミーティング

 ミズキとの模擬線を終え、憔悴しきった表情で天を仰ぐメグミは、手を伸ばしたミズキの手を取り起き上がる。いまだに何故負けたのかの原因や理由を掴む事すら出来てもいない。


「もぅ…訳わかんないなぁ…まったく。」


「そう?冒険者なんて、もっと凄い魔法とかスキル持ってそうですけどね。」


「あるよ?あるけど、君レベル1なんだよ…使える訳ないんだ。」


「ネタはスキルですけど、るぅねぇが低レベルで蘇生する事と似てません?」


「あれは、ちゃんとリスクも設定されてる…ポンポン使うべきじゃないんだよ?」


「あぁ…言われれば俺のはノーリスクですねぇ。」


「レベル1でレベル40超えの私達をノーリスクで拘束出来るのがおかしいんだよ。」


 その言葉がいい話のきっかけだと「テンからのお願い」…このスキルの内容を秘密にして欲しいと言う事を切り出す。誰からという問いに、ヘルプボットから…と伝えると不思議な顔をされたが、「危険だからと伝えれば理解してくれるはず」…と付け加えるとお願いに関しては了承してくれる。


「確かに君じゃなかったら…と、思うとゾッとする…」


「はぁ…?なんでです?」


「君がそこで疑問に思う人だからかなぁ。」


 メグミは無知なミズキに説明をする。


 プレイヤーキルは道徳的視点を除けば可能であるが、性的行為は年齢条件かつ同意無しでは不可能な仕様ではある。それでも戦闘を含めて体が触れ合える以上、ハラスメント行為は可能だと。体に触れる事自体はグレーであり、受けた側の報告によって運営が対象の履歴を調べ判断される。

 結果、悪質だと判断されれば、一定期間のアカウント停止や剥奪等の罰則に繋がる。報告を悪用しての冤罪を抑制する為に、嘘の報告に対しても罰則が生じるそうだ。

 

 基本的には、力の強いプレイヤーが低いプレイヤーに行う事が多くみられるが、高位のプレイヤーはそれまでに育成した成果の剥奪を考えるとそうした乱暴行為はあまり行われてはいない。


 これを前提にレベル1のプレイヤーが、レベル40…もしくは更に上位のプレイヤーを簡単に拘束する事が出来るとすると、初めにスキルを得る為にキャラクターメイキングを繰り返す事になったとしても、アカウント剥奪を気にせず非道な行為を実行に移すプレイヤーが出てくるんじゃないか…と言うのだ。


「…ミズキちゃんは…だいじょうぶだよ…?」


「そうだね…ちょっとエッチだろうけど、悪い人じゃないね。」


「褒められてるんですかね?けなされてるんですかね?」


「褒めてるよ?」


「ならそれでいいですよ。ただ…エッチってなんですかね?納得いかないんですけど?」


 その言葉に逆に驚き、理解していないミズキに半ば呆れて溜息をつきながら「獣人の尻尾を撫でる行為が、その人のお尻を撫でる行為とほぼ同義」…である事を教えると、知らなかった事とは言え、今更ながらに申し訳無さが込み上げて、なんとか謝罪の言葉を絞り出す。


「ぅぇ………なんか…すいません…」


「知らなかったみたいだから許すけどさ…君の為に尻尾穴付の服を仕立てたるぅが可哀そう。」


「んっ?あっ!」


 広場でるぅを見つけた時の違和感の正体をたった今理解した。尻尾が出てるんだ…と。

 その尻尾は軽く左右に振れているので怒っている訳ではなさそうだが、以前の言動が失礼になるのだと知った今は早めに謝罪すべきだと判断する。


「前回、触らしてとか言って…ごめんなさい?」


「…うん…」


「ねぇ?君は実際にさーんざん尻尾を撫でくり回した僕にもっとキチンと謝罪すべきだ。」


 以前るぅに投げたでっかいブーメランが戻って来たもんである。

 無知とは言え初対面の女性の尻尾を撫で回すと言う行為を、お尻を撫でまわしたと認識し直してもう一度きちんと謝る事にした。


「あ…メグさん…拘束した挙句に尻尾を撫でまわして、すみませんでした…」


「ん、よろしい。まぁ…るぅが言う様に君がおかしいのは理解できたよっ!」


「変とか、おかしいとか…やめません?」


「考えとくよ…それじゃ、ここから出て、そろそろ商業ギルドに話を聞きに行こうか。」


「…そうデスね…ちょっと落ち着いたらいきましょう。」


 二人共、心の底から怒っている…と、言う訳ではなさそうな雰囲気に安堵し、わざわざ話題を変えてくれたメグミに便乗する形で一休みしてからPvPフィールドを出て、商業ギルドに向かう事にした。


 ---


 そんな三人の会話と同時刻、DREAM内スタッフルーム


 テンから挙げられた情報を基にDREAMのスタッフ数人による緊急ミーティングが行われる事となる。内容はスキルのバグとその修正の対応に関してだ。


 前回のミズキの実験時に検索した情報の延長で、あのあと引き続き「次元収納」に関しての調査は行われていた。もともとベーシックなスキルではなく、レアなスキルに分類されていた為に所持者が少ない事、戦闘に属さない収納スキルであった事、ミズキを除く対象スキル所持者が普通の思考の持ち主で通常以外の利用方法を行っていなかった事、これらを基に過去の記録を洗いだした処、幸運にもミズキ以外に特別・特殊な利用方法を行っていない事は確認されている。


 これらの事実をベースに、既存の「次元収納」のバグを修正し、トラブルの無いスキルへする事は特に問題ないと判断されたのだが、一つだけ問題は残る。このバグを見つけ出し、器用に使いこなしている新人プレイヤーへの対応だ。


 特に問題も起こしていなければ、記録を見ても悪用している様にも見えない、その上でスキルを活用しているのであれば本人にだけ継続させるべきだという意見もあれば、一律で性能ダウンさせるべきだという意見も出る。後者の場合に苦情が挙がる事も考えられるが、バグの一言で片づけるべきなのか、説明をするべきなのか…等、の検討が行われた。


 DREAMが始まって半年弱、今まで見つからなったバグを見つけて活用したプレイヤー。

 しかも既にたった3日のログインで、ヘルプボット活用と類を見ないAIの成長の変化を生じさせ、アルバイト環境の申請を挙げてくるきっかけを作った履歴もある面白い存在でもある。DREAMも変わり続けなければ廃れて行く事に違いはないのだ。


 現状でもスタッフやNPCからの吸い上げはしているものの、プレイヤーからの直接の意見と言えばメールでの苦情や意見箱への投稿レベル位なのだ。そういう意味で始めたばかりの、奇妙な視点を持つプレイヤーに意見を貰うのは面白い…と、短時間のうちにプロデューサーが一つの判断を下し行動に出る事になった。


 そうしてミズキ達の知らない処で新たな話が立ち上がると共に、この後の商業ギルドとの話し合いで、飄々と立ち振る舞うミズキをよそに、るぅとメグミに考えられない驚きをもたらされる。

前半部分と後半部分は同時進行している感じです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。