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30.意地っ張り

30話到達です。

内容の進行は遅いかなぁ…

 そうして始まった模擬戦ではあるのだが、あっという間に大勢は決した。


 現状、ミズキは開始位置から動かずに直立したままメグの様子を見ている。

 対するメグミはと言えば…開始位置の中間辺りで両手のひらを地面につき、両膝をついた四つん這い状態のままでミズキをにらんでいる。

 開始直後に素早くダッシュしてミズキに接近を試みるも、躓き、転び、手と膝を着いたのだ。


「まいったでしょ?」


「僕に何をしたんだよっ?」


「そりゃ、秘密ですよ。メグさん風に言えば「手品」ですかね。」


 直ぐに起き上がって再度飛び掛かろうと試してはいるが、手も足も地面から離れない。

 魔法を使われた様子もない、罠を仕掛けられた様子もない。爪先、指先の感覚はあるので麻痺をした訳でもない、体や頭などは自由に動けるし話も出来る。…でも、現状動けない。


「なんでレベル1なんかに動きを封じられるんだよ!?」


「なんか…とか、言ってるからですよ。まぁ、るぅねぇも動けませんでしたし。気が済んだなら降参してくれませんか?」


「うるさいっ!僕はまだ負けてない!」


「はぁ…その状況でなんでそんな言葉がでますかね…」


 ミズキは溜息をついて考え込む。動けなくすれば直ぐに負けを認めると思っていたのだが、メグミの妙に負けず嫌いな性格を読み違えていた。

 恐らく殴った処でダメージを与えられる訳でも無く、どうすれば負けを認めさせるかを考えた後に脇でオロオロとしているだけのるぅに尋ねる。


「仕方ないんで…ちょっとお仕置きしてあげてもいいですか?」


「…おしおき…?あんまり、酷いことしちゃダメだよ…?」


 直接的な肯定はされなかったものの、否定もされていないので実行する事にした。


「じゃ、降参するまで話でもしましょうか。」


「降参なんかする訳無いだろっ!」


 あくまで強気なままのメグミの傍に寄り観察する。


 足は紐で縛るタイプの革のブーツ。膝丈より少し短めのハーフパンツで腰の後ろには革の鞘入のナイフを携帯し、そのすぐ脇には興奮しているのか覗かせている尻尾をピンっと立てている。上半身は長そでのインナーの上に革で出来たベストの様な物を着ており、赤毛の頭には茶色い縞柄の可愛い耳を立て、短めのポニーテールが揺れている。


「何見てんだよっ、すけべっ!」


 動けない事に腹を立て、間近でじっくり観察される事に苛立ちを募らせ、怒鳴り散らすメグミの前にしゃがんで視線を合わせ「にっこり」という表現が合う表情で微笑みながら話しかける。余裕をもって、不遜な態度で接する事が一番のお仕置きだと思った上の態度だ。


「こんなに可愛い猫耳っ娘なのに頑固ですねぇ…しかし耳も尻尾も何でこんなに癒されるんですかね?」


「可愛いとかいうなっ!アバターなんて誰だって可愛いだろっ!」


「まぁ、確かに俺も鏡見て、自分が可愛いと思う位ですし。」


「とりあえず、離せよっ!」


「嫌ですよ、離したら襲いかかって来るでしょ?」


「当たり前だろっ!」


 そんな会話の中、不意にミズキはメグミの側面に回り頭を撫でたり、耳を触り始めたのだ。


「うぅー…なにすんだよっ!」


「頭撫でたら、落ち着かないかなーって。」


「こんな格好で落ち着くわけないだろっ!…ひゃっ!」


 そんな会話の最中に唐突にミズキが右手で尻尾を握る。腰の下辺りから真っすぐ立っていた尻尾がさっきから気になっていた。るぅに断られていた為に、それはもう余計に好奇心を煽っていたのだ。


「意外と固いんですね、尻尾って」


「あぁぁ…触るなぁ…離せよぉ…」


 尻尾を握った事でメグミの勢いが衰えたと感じたミズキは、「ニマッ」…というのが相応しく悪戯

っぽく笑って、目を合わせ、そして話始める。諭す…と言うよりは、挑発に近い方向で。


「あれ?何か大人しくなりましたね…降参したくなったでしょ?」


「だ…誰がぁ!…っ…うーっ…」


「早く降参すればいいのに。「まいった」…って言えば止めますよ?」


 そう言いつつ、立っていた尻尾に左手を添えて右手で優しく撫で続ける。くすぐったいのを我慢でもしているんだろうと、ただただ優しく撫でる、撫でる、撫でる…そうしているとミズキの肩にるぅの手が置かれて話しかける。


「…もぅやめて…?…めぐも、いじはるのやめよ…?」


「じゃあ終わりましょうか、キリ無いし。」


「…めぐは…?」


「うぅ…負けましたぁぁ…僕の負けでいいですぅ!」


 それを聞くとミズキは立ち上がり、るぅの手を引き少し離れた。そうするとメグは四肢の拘束が解ける様に地面にうつ伏せにへたり込み、その後180度回転し天を仰いで話し出す。


「もぅ…なんなんだよぉ…君はぁ…」


「だから、初心者ですってば。全く…何でもの件は貸しですからね?」


「うぅ…これ以上なにされるのさ…?」


「まぁ、るぅねぇに感謝して下さいよ?止められなかったら、多分まだ撫で続けてますよ?」


「ひぃっ!…ありがとうね…るぅ…」


「…うごけないの…こわいもんね…」


 るぅも謎の拘束の経験者なので、理解の出来ない拘束に対する恐怖感を同じ様に持ち合わせている。

 ミズキはそうでなかったが、相手がロクでも無い思考の持ち主であれば何をされるか分かったものではない。「規約では厳罰に処される」とはあるものの、規約を破る輩と言うのはどこにでも居るものだ。ましてや、ミズキのレベルはレベル1なのである。これが指し示す恐怖をるぅは今ひしひしと感じる。


 そんな事とは微塵も知らず、単純に人に知られて利用とかされたくないなぁ…程度の思考の持ち主がこの発想の持ち主で良かったと感じる存在が近くに居る…テンだ。るぅとの実験を報告した段階で運営が懸念していた事だが、監視を指示されていたテンは、現在の状況を緊急を要する事案に変化したと判断し、唐突にミズキにコンタクトを取る。


 ---


『ちょっといい?』


(なんだ?)


『あんたの固有スキルの能力、ギルド長とは違う理由だけど口外しないで。』


(おまえも、ギルド長も一体何なんだよ?)


『いいから。お願い…』


 いつもと違う雰囲気のテンだ。こちらの質問に悪態つきながらも答えてくれるが、自分から何かを頼むのは珍しい。それを察してかミズキも素直に応対する。


(お願い?お前が…?わかった。二人にも頼むか?)


『そうね。お願い。』


(理由は?)


『危険だからよ。』


(後で説明しろよ?)


『二人は多分もう理解してる。そう言えば解ると思う。』


(俺だけかよ…まぁ、いいや。任された。)


 それだけ言うと、テンは静かになる…そしてミズキもすぐ対応に意識を移す事にする。

シャワーより、こっちのほうがいい感じに出来たかなと。

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