5.絶望の教え
5話では、「殺す」という単語が出てきますが
残酷な描写はありません。
それでは、フォーエバー5話お楽しみください
とある記憶が映しだされた。
セリスィとメロンが初めて出会った時のこと。
勇者になるほんの少し前のこと。
彼女と過ごした時間が頭の中を巡る。
終始ツンとした態度であったこと。
初めての戦いで助けてくれたこと。
その中で最も強く、深く、浮かんだことは
メロンの手を握れなかったこと。
これは、二人きりで話していたときだろうか。
彼女の目的が知りたくて、協力したいという思いで
手を差し伸べた。
だが、メロンはその手に触れなかった。
少し寂しい思いをした思い出。
…でも、何か違和感があった。
その得体の知れない違和感が何かを主張してるようだ。
まるで、気づかぬ矛盾があったような……
バチバチバチィッ!
「いぐっ!……っ!」
「…ち、ちょっと!起きちゃったじゃない!」
目を開けると、変わらず白い宙が広がり
女三人がセリスィとメロンを囲んでいた。
全身がいうことをきかず、動かない。
気を失っている間も、
電気女のエルピダに縛られていたのだろうか。
首さえ動いてくれないので、
眼球だけで辺りを見渡してみる。
メロンのカチューシャが視界に入るが、
これ以上は眼球が引きちぎれそうで見れなかった。
「ふふーん、どぉ?何も出来ない気分はいかが?
所詮、勇者なんていってもこんなチョロいのね♡」
「あんた、何もしてないけどね」
「ムキー!何よぉ!」
困ったものだ。
体は動かず、逃げることも戦うことも不可能な状態。
死なないのが唯一の救いだろうか。
今ある小さな希望は、誰かの助けを待つこと。
いや、だけどその助けは来るのだろうか。
勝手に家を飛び出したのは、俺とメロン。
サロスやイレモは、カルディアに止められていた。
ミラは、あの様子だと追いかけてくるはずはない。
正直、希望より絶望に近いかもしれない。
「聞いて聞いて、勇者さーん」
この声は、幼ガラスだろうか。
声だけなら可愛らしく思えるが、中身はかなり黒い。
「んー、この子はまだ意識が戻ってないみたいね」
メロンのことだろうか。
彼女の表情は、気を取り戻してからは一切見ていない。
だが、心はともかく体はか弱い彼女だから
本当に気絶したままなのだろう…。
「まぁいいや。じゃあ、あんた…セリスィだっけ?
あんたに話をしてあげるー」
「…話?」
思わず、言葉が漏れた。
一体、何が話されるというのか。
「あたし達インフィニティはね、ある『教え』に
従って戦いをするの」
カラスは何故か少し楽しげなトーンで話しだした。
「その『教え』、知りたい?」
「…どうせ、話すつもりで言ったんだろ。さっさと話せ。」
何を考えてるんだ。話を聞きながら
彼女達の思考を探ってみる。
「まぁそーね。んじゃ、教えてあげる!
仲間の勇者さんにも伝えといてねー」
すると一転、ほんのわずか沈黙が流れては
カラスはセリスィの顔を覗き込みながら話し出した。
今までとは違う、恐ろしい目つきで捕らえられ
目をそらすことなど出来なかった。
「私達は、あんた達を殺すつもりで戦っている。
けどね、不老不死でしょ?だから最初聞いた時戸惑った。
でも、ちゃーんと教わったの。
『命は殺せなくても、心は殺せ』
…ってね」
言葉が出てこない。
正直、何を言いたいのかははっきりと分からなかった。
だが、ニュアンスはその目力からも伝わってくる。
「…………っ!」
恐怖で、顔が強張るのが自分でも分かった。
殺されかけたことは何度もある。
だが、その度に「不老不死だった」と思い出し、恐怖を逃がしていた。
今は、その逆だ。
「不老不死だから」という考えが、余裕があった。
だけども、今は理解出来ている。
逃がしていた、殺される恐怖というものが
自分自身にまた逃げ帰ってきたことを。
不老不死でも、殺されることを。
「うん、分かった?
てことで、あたし達があんた達のその心を
二度と立ち直れないほどの絶望に陥れてあげる!」
「そして、感情も、希望も、愛も、未来も。
全部全部、壊してあげる」
「これが、私達の戦闘なのよっ!」
あぁ、これはヤバイな。
三人の殺気を感じる。
空気が重く、視界も暗く、何か迫っているようだ。
死にたくないなぁ。
心が殺されてしまう。
でも、どうにも出来ないなぁ。
だって、俺に希望じゃなくて絶望が……
ドンガガドッカァーンッ!!
「…痛っ」
「んもぉ!一体何なのよぉ!!」
その場にいたものは、皆、唖然とした。
意識のないメロンと、突如現れたただ二人を除いて。
「そっかそっか!俺ら飛べたんだもんなぁー
教わったの忘れてたぜ」
「…着地方法はまだでしたけどね」
さっきまでの空気が、まるでリセットされたような。
大胆ながらも、希望は突然降ってきたようだ。
「…助けにきたぜ、お二人さん」
白い宙の下。
永遠の命は、絶望に対峙する。




