2.見えない思考
永遠と白が続く中を、ひたすら泳いでいく。
さっきまでいたあの小さな家は
もうとっくに見えなくなっていた。
「・・・何なの」
胸に黄色のブローチ・・・勇者の証をつけた少女、
メロン・ランプスィは立ち止まる。
ミラの軽い考え、
そして自分自身の無力さにイラ立っていた。
ソラトワプロジェクトとかいうヘンテコなものに
入る必要なんて何も無い。
呑気に宙の心配をしてる場合でもないのだ。
止まっていると雑念が頭を痛めつけるので
再び歩き始めることにした。
何処に行こうか、ぼんやり考えていると
何だか人の声が大きくなってくるのを感じる。
目の前に広がっていたのは、
この世界で一番人口密度が高いであろう町、レオン町。
ごちゃついた風景が目に痛い。
町の中へは行かず、
町を見渡せる丘へと動いた。
緩やかな丘を登り、頂点で腰を下ろす。
高い所から見下ろす人混みの町。
到底、いい眺めだなんて言えやしない。
行く宛もないし、このままぼんやりとしてようか。
「あっ!メロン!」
反射で振り向くと、やはり、セリスィだった。
「・・・何だ、お前か」
素っ気なく言葉を返す。
わざわざ私を追ってきたのか。
セリスィは呆れるほどに一途だ。
出会った時からそうだった。
よほど私を心配してるのか、よく構ってくる。
だが、私には理解出来なかった。
何故こんなにも彼は私に構うのか?
彼の考えていることがちっとも分からない。
冷たい答えにも関わらず、
セリスィはそっと隣に座った。
何故出ていった、家に戻ろう、などとも言わず
ただただ同じ静寂を共有していた。
二人きりの空間は、町のざわめきさえ忘れさせた。
それが何故か、不思議なほど心地よかった。
「いいのかー?家出とかじゃないよな?」
気だるそうに、サロスは尋ねた。
先程家を出ていったメロン、後を追ったセリスィを
気にしているようだ。
「大丈夫よ。あの子にとって家出なんて趣味みたいなもんよ」
「趣味感覚で家出って・・・」
軽く受け流すミラに対し、
やんわりとツッコミを入れるイレモ。
趣味で家出、なんて言われてももちろん納得は出来ない。
同じ勇者同士、メロンとは仲良くしたい。
だが、彼女は心を開いてはくれない。
出会った時から、何を考えているか分からなかった。
「・・・あー!やっぱ探そうぜ、イレモ!」
しびれを切らしてサロスは勢いよく立ち上がった。
あまりの唐突さに、呼ばれたイレモもびくびくしている。
「黙って待ってらんないぜ!セリスィも心配だし」
「そうね、行きましょう!」
二人は大きく伸びをして、ふぅと息を吐いた。
ミラとカルディアは顔を合わせ、もう何を言っても無駄だろうな、
と呆れつつも微笑んだ。
行ってきます、とサロスとイレモは駆け出した。
「本当、面白い子たちね」
口に手をあて、カルディアが呟く。
指の隙間から、にやけがちらちらと見え
失礼ながら変態チックである。
口にすれば怒られるので、ミラはあえて何も反応しなかった。
あの子たちは大丈夫。
不老不死だから、死ぬことはない。
ミラはそう考えていた。
だが、彼女は気づいていない。
彼女のその軽い考えが、彼らの命取りになることを。
取れない命が取られることを。
白い宙の下。
永遠の命は、ゆっくりと重なろうとしている。




