第二話:空っぽの貢ぎ場
AI100%ですので注意されたし。
それからどれほどの年月が流れたことか。
「EDEN」と名付けられたその巨大な飼育小屋のような楽園で、王は長年、岩の上にふんぞりかえっていた。かつてそこは、すさまじい光景だった。毎日のように群れの者たちが競い合い、山のような木の実や、脂の乗った上質な肉の塊を足元へと積み上げていたのだ。ただ威張っているだけで、欲しいものが何でも手に入る。その圧倒的な豊かさは永遠に続くものだと、王は信じて疑わなかった。
だが、時は残酷だった。
王が贅沢に溺れ、過去の「便利な道具の記憶」にしがみついている間に、下々の人間たちは次第にその構造に慣れ、そして「退屈な疑問」を抱きはじめた。
――あれ、俺たちが毎日汗水たらしてあいつに貢いでるけど、あの王様、最近なんか新しく便利なこと教えてくれたっけ? ただそこに座って肉を食ってるだけじゃねえか?
気づいてしまった者の足取りは重い。日を追うごとに、貢ぎ物は減り、そして――。
その日の朝、王が目を覚まして見下ろしたかつての「貢ぎ場」は、見る影もなく冷え切っていた。
かつて山をなしていた食料は影も形もなく、ただ乾いた風が吹き抜けるだけの、完璧な「空っぽ」が広がっていた。転がっているのは、誰かが投げ捨てた乾いた木の枝が一本だけだ。
「やだやだ、なんだよこれ……! どうして何も置いてないの~! 俺のメシはどこだよ!」
王は岩の上で足をジタバタさせながら、子供のように情けない声を張り上げていた。目の前では、王の時代よりもあとに産まれ落ちた新世代の知性持ち――「蛇」が、退屈そうに寝ている。
「う〜ん……私に言われても、何も思いつかないんだよな〜……」
蛇は面倒臭そうに、まったく他人事のように欠伸をかみ殺した。
「だってよ、どうすんだよこれ! あいつらすっかりサボりグセがついてやがって、このままだと俺様のメシがなくなるぞ!」
二人して頭を抱え、岩の上でうーうーとうめき声を漏らす。だが、頭をいくらひねったところで、まともな名案など出てくるはずもなかった。
やがて、蛇は面倒そうに尻尾をピクつかせると、ふと妙なことを思いついたように言った。
「……あー…、いっそ、向こうから何を不満に思ってるのか、困ってることを幅広く拾ってみませんか?」
「はあ? 拾うってなんだよ」
「いや、あいつらが今どんなことに躓いてるのか、不満や悩みをあらかた吐き出させるんです。で、出てきた面倒な愚痴の中から、うまいこと使えそうなものだけをこちらで都合よくかいつまんで……」
さっそく下々の猿どもを小突いて「自分たちの不満や悩みを言ってみろ」と募らせてみると、愚かな猿たちは群がり、口々に叫びをあげはじめた。
「なんか、となりのやまだくんにたたかれた……」
「きのう食べた木の実がくさくておなかがいたいの……」
「あいつのほうが大きい石を持っててむかつく……」
集まってきたのは、どうしようもない私怨と、日々のどうでもいい愚痴ばかりだった。




