第九話:新時代
AI100%ですので注意されたし。
アダムたちが追放され、うるさい若者たちが一掃された楽園は、一見すると平和そのものだった。
もっとも、その実態は最初から歪みきっていた。あの新王誕生の裏取引の瞬間から、現王は初代の死体の秘密を盾に蛇を完全に握りつぶし、「おい、さっさと俺を敬え! もっと豪華な貢ぎ物を用意しろ!」と、ずっと蛇を脅し続けて好き放題に振る舞っていたのだ。
「……へいへい、おっしゃる通りでございますよ、王様」
蛇は現王の脅しに屈し、渋々その言いなりになりながらも、頭の片隅で冷ややかにそれを見つめていた。
現王は脳筋の兵たちを従え、大衆の猿たちに「初代様からのお告げだ!」とさらに過酷なルールと査定を乱発する。だが、それは劇的な崩壊ではなく、もっと底冷えするような、緩やかな衰退の始まりだった。
数年が過ぎるうちにおかしなことが起き始めた。
誰も新しいものを生み出さず、ただ過去のルールに従って「減らされないこと」だけに怯える日々。若者という新陳代謝が絶たれた楽園では、猿たちの顔から次第に生気が失われ、ただ老いぼれていくだけの時間が流れるようになった。
「一日の決められた行動以外は禁止」
そのルールがお告げとして発せられ年々厳格になり、大衆の猿たちは生きるために動くことすら恐れ、自分の巣の隅でじっと縮こまるようになる。外に果物を取りに行く者も減り、貢ぎ物は日に日に細っていった。
しかし、現王と脳筋の兵たちは、細る一方の現実から目を背け、相変わらず「もっと貢げ」「ルールを守れ」と喚き散らすばかり。
蛇もまた、現王に脅されるがまま、乾いた砂を噛むような日々をただ惰性でやり過ごしていた。誰かが声を大にして反逆するわけでもなく、ただ「明日も今日と同じように怯えて暮らす」「ルールを破らなければ初代様は助けてくれる」という怠惰と恐怖とかすかな信仰心が、国全体を腐らせていった。
ある日、貢ぎ所。
いつの間にか、誰一人として貢ぎ物を持ってこなくなって久しい玉座の岩の上で、あんなに威張っていた現王が、誰にも看取られず、干からびた小枝のように一人でこと切れていた。
ロープの囲いの中で、あるいは巣の中で、動かなくなった猿たちがそのままミイラのようになって点在している。誰もそれを片付けようともせず、ただ静寂だけが広がっていた。
劇的な破滅の瞬間などなかった。
ただ、誰もが思考を放棄し、ルールという名の鎖に絡め取れたまま、音もなく、数年のうちに、果樹園の木々が枯れるようにこの国は死に絶えていったのだ。
――静まり返った、廃墟の楽園。
残されたのは、無機質に張り巡らされた色褪せたロープと、猿の干からびた死骸だけだった。
支配する相手も、脅す対象も、もうどこにもいない。
ただそこにあるのは、完全なる静寂という名の終着点だった。
誰もいなくなった広場の隅で、蛇は小さく、あの日と同じように誰にも見られることなく、小さく、息を、吐き出した。




