81話 これから
→→→→→兄ターン
回復薬類の使用過多と診断されて治療着の下に無難な成分の湿布薬を全身に貼られ、包帯で固定され、さらに回復効果の札を糊でペタペタ貼られ、(俺、封印されんのかな?)て格好で似たような状態の仲間達と一緒に敷布の上に転がさられていた。
「はぁ〜···」
ため息一つ。
解決できたワケだが、ソーマセノ郷に戻って来ると俺達最初の突入隊もレンテ教官達の増援隊もボロボロだった。
救護所になっていた講堂で大なり小なり受けたダメージの治療をすることになった。
生け捕りにできた幹部や5層の強壮な団員を含めたユケンの手下達は郷に残ったギルド職員や冒険者達によって念入りの拘束されたまま護送されていった。
1人5層の強壮な団員が逃げてるから警戒MAXだな。
「そういやユケン一味の川の拠点を国軍だか領兵が同時強襲する、って話はどうなったんだ?」
誰にでもなく聞く、別動だったレンテ教官、先に戻ってたナンクゥー、重傷気味のボルッカと回復薬過多が酷かったカズネ、わりと元気だったから戻ってから救護所周りの重量物運びを手伝ってるウチに具合悪くなってきたノッコ、戻ってから里長と協議したりしていたミラリカさん。
ちなみに俺はダメージの具合が『そこそこ』だったから、一通り治療処置をさっさと終えると、地元ギルドの動ける人達とルートビア飲みながら話し込んでいたら「寝てろ、勝手に炭酸とか飲むな」と人魚の治療師に怒られて今の状態だ。
と、まぁバラバラになるタイミングがあったから各自の持ってる情報にバラつきがあった。
「概ね上手くいったそうだよ? いくらか逃がしたり、思った程財宝がなくてどっか隠してあるってザワザワしてるみたいだけどにゃ」
「戦闘員は百数十名と把握されていましたが、非戦闘員や準構成員をふくめるとちょっとした町の総人口ぐらいあったそうです。どうもユケン一味はどこかに『自分達の国』を作ろうとしていたようですね。私達の秘宝に不用意に手を出したりしなければ···」
「国王が代替わりして、取り締まりが厳しくなって川の海賊業が難しくなってた、て話もあんな。教官の仇のヤツとか凶暴な団員も多くて、今さら普通の水運業とかに専念できない、みてぇな」
「無理な攻略で団員半減したと思われてたけど、商才のある団員が十何人か? 祠から抜けさせて関連のビジネスの方に回してた。みたいな話もあったみたいだよ」
「なんや、衛兵や役人で繋がってた連中も今、バンバン捕まってるみたいやで?」
「そんな感じかぁ」
思い付きは思い付きなんだろうけど、経緯はあったのか。
汚職連中は普通にギルティだが、案外ユケンは戦いしかできない連中を今回間引きしてたのかもな。往生際は間違えてたが···
「あ、2つ思い出しちゃった」
不意に我が妹。全員寝てるからモソモソと寝たまま注目する。
「モルテマ坊っちゃんそろそろ起きるよね?」
「「「あ〜」」」
「誰です?」
「ハーフの吸血鬼だよ。あたしは直に会ったことないにゃ」
「へぇ?」
坊っちゃんか、癖強いんだよな。
「あと、B級になったらまた来いってネルドーアの森のエルフの族長に言われてなかったっけ?」
「あったなぁ」
「ボクも一度お姉ちゃんに旅の成果の報告をしたいところです」
「行くん?」
「ちょっと休まねーか? ヨシダの爺さんも放ったらかしだし」
「休息も大事ですよぉ」
「まずギルドのギムリー支部に報告もにゃ。今のあんた達ならB級認定に昇格できるよ?」
ちょっとやること多くなってきたぞ?
取り敢えず、話してる内にすんごい眠くなってきたな···
→→→→→ミラリカターン
翌日、ささやかな宴会のあと、ギムリーの冒険者の皆さんを里の飛行絨毯や飛行モンスターの発着所まで見送ることになりました。
私の他に里長とお付きの方々、まだ手枷と看守ピクシー付きですが牢から出された愚兄、地元のギルド方々も何人か来ています。
姪っ子も飛翔金魚を何尾か連れて来ていました。
「本当にお世話になりました」
「いやぁ、ほんとごめんね! 僕はセノ川下流の水族館で働くことになったよ···ビジネスしたいんだけどなぁ」
「そッスか···」
「案外合ってるかもしれないぜ?」
最後まで困惑させてしまう愚兄クオリティですっ。
「氷穴の祠は炎魔の杯を失い、魔力バランスが崩れてしまった。周辺に凍結害等をもたらさないよう、年月を掛けて再調整する必要がある! もはや我々だけでは管理できんので、この国の冒険者ギルドと共同管理することになったっ。これもまた、よし!!」
これに関しては収まるところに収まりましたね。
「ユケン一味の残党やちょっかい出してくる国や領主対応のフォローもきっちりさせてもらうよ。この辺りのギルドは運営資金難だったから助かるしさ」
ギルドのB級リーダーの方、正直でよろしい。
「ソーマセノの収入が減る分は私達の一族が発展させた飛翔金魚の養殖業を郷に譲渡して補います」
姪っ子! 淡白なのねっ。
「郷に貢献できて、光栄ですっ。ううう」
「ミラリカ号泣してるやん?」
「似た者兄妹ですね。ハハハ」
「そうだろう? ふふ」
「似てません!!」
取り乱してしまいましたが、いよいよ飛行絨毯は高度を上げだします。
「ミラリカさん! 皆さん、またね〜!!」
「元気でにゃー!」
手を振って、皆さんを乗せた飛行絨毯は高度を上げ、
「ありがとう! 遺跡で見付けてくれたのが皆さんでよかった!!」
飛び去ってゆきました···
よ〜し、次は『プラチナ鱒』の養殖で我が一族の復権を目指しましょう! うふふふっ。
→→→→→妹ターン
忘れてたけどセノ川からギムリーまでめちゃ遠っ。体調が万全じゃないこともあって、途中の郷で結局1泊することになって、ギムリーに着いたのは翌日の昼になっちゃった。
そっからギルドに報告やレポートを書いて、他国でも有名なリバーパイレーツ退治に貢献したから衛兵署から表彰されて同席した町長から小声で「悪目立ちしてるね」と言われたりして、日報誌の取材を受けたりもして、レンテ教官とも一旦お別れして、なんかもう全員ぐでんぐでんに疲れて夕方ようやく吉田ハウスに帰ってきたんだよ。
夕飯作ってくれてるみたい、少し風味がネオ山梨だけど炊いたお米と醤油とお味噌と出汁の匂いがした。
と、玄関前で頭の上でザセウ王居眠りさせながら剪定した果樹の枝葉の始末をしていた土器ゴーレムが私達に気付いた。
「オヤ、オ帰リナサイデス。ますたー達にニ知ラセマショウ」
「お? なんだ? ヴォーパルの欠片の気配がするぞっ?? お? お?」
ザセウ王を寝惚けさせたまま、土器ゴーレムは家の中にスーっと浮遊して呼びにいってくれた。
「お帰り! 私っ、凄い絵が描けたわっ! 売れるかもっ」
来てたシトリーさんがいきなり顔を出して野心メラメラっ。
「ノッコ! 飯の支度を手伝えっ! 唐揚げがあるぞっ?」
吉田さんの声が中から響くと、
「じじのカラアゲ好きや〜っ!!」
ノッコの全力ダッシュに私達はす〜〜〜っごく! 脱力して、笑っちゃったよ。
···ただいま。
→→→→→レンテターン
ギムリーの転送門にボルッカくんが見送りに来てくれたにゃ。
「全員、来れたらよかったですけどね、B級認定取るのにまーた色々課題が出やがりまして、大変なんですよ」
「ボルッカくんもでしょ?」
「いや、オイラ、結局転職もしないんで他のメンバーより軽めで」
暇じゃないのは稽古着でそのまま来てるのを見てもわかる。
あたしは平服の旅装でも身に着けてる補修した収納ポーチから『ブルパリィの奥義書』を取り出してボルッカくんに渡した。
「元教官だから余計なお世話だけど、あたしが生成してみたよ。前衛に出る時、君は小柄だからこういうスキルは必要だにゃ」
「···覚えます。お達者で」
「姐御みたいに言っちゃって」
「いやぁ」
「じゃあ皆によろしく。瀧川兄妹も、どんな決断をしても手助けしてあげてね」
「はい。これまで見た来訪者で滅びたヤツらは、どいつも1人だったんで」
にゃー、いい子だよこの子。
「じゃあね」
「はい」
あたしは担当者に転送門を起動してもらった。
そこからいくつか転送門を経由して···
その街の転送門施設から出た。言う程長い年月じゃない。あまり変わらない風景だね。風のニオイも変わらない。外れにある私の生家跡は肝試しのスポットにされてるらしいよ。
「ザミお嬢様」
「え?」
高齢のワーキャットの男性が帽子を取り、座っていた近くのベンチから杖ついて立ち上がった。
ガフー。生家の執事長だ。あの時、たまたま外出して生存していた。
深々と一礼してから顔を上げるガフー。
「御家族と家の者達の仇討ちを果たされましたね···お帰りなさいませ。ずっと、お待ち申し上げておりました」
物凄く老け込んでいる。
負けっぱなしのこれまでが脳裏を過ぎて、また泣いちゃうにゃ。あたしはヨロヨロとガフーに歩み寄った。
「全然上手く、いかなくて、復讐なんて望まれてない、とか色んな人に言われて、あたしっっ···大変だったにゃうううっっっ!!!」
しがみついて子供みたいに泣くあたしの背中を支え、
「ええ、わかりますとも。これからです。これからです」
そう言い続けてくれた。




