80話 吹雪の決戦
→→→→→レンテターン
ありったけの飛行絨毯と使役飛行モンスターを駆って、あたしは地元冒険者選抜と里長含むソーマセノ郷の若年と高齢者多めの再選抜隊員合わせて四十数名と氷穴の祠の2層ショートカットルートを越え、3層に突入していたにゃ。
「ううむ! 多少引っ掛かって目減りしてもっ、ここに至っては間に合うことを先決とする!! 3層はモンスターのいるエリアを越えて、さらに近道しようっ!!」
「異議なしっ! 案内してくれっ」
「あたしも賛成!!」
里長の案に地元冒険者のB+級のリーダーと、あたしは賛同して、少し厳しめのルートでさらに急ぐことになった。
装備はあり合わせでもまだやれるよ!
「···皆、待ってるにゃ」
3層の守護モンスター群の最中に突っ込みながら、あたしは飛行絨毯の操作に集中したっ。
→→→→→妹ターン
本隊に合流すると、人魚の人達はユケンの手下を1人倒し、2人捕獲していた。1人は脱出の鏡で逃げられたみたい。入口の人達もだいぶバテてるけど合流できてた。
「カズネ」
ヒロ兄が高級な『ハイミックスポーション』を渡してくる。
「···今日、回復薬飲み過ぎで具合悪いんだけど?」
「回復しないと着膨れして転がり回るしかできなくなるぞ?」
「頂きます···」
飲むよ! うわっ、凄い回復の魔力っ! むぐぐっ、飲み難いけど飲む!!
シュワワ〜ン。
回復は、する。胃と頭がちょっと痛くて動悸がするから、徹夜してから海外メーカーのエナジードリンク飲んだみたいなヤバみを感じるけど···
「攻撃の要はナンクゥーのウンディーネだが、水属性やおそらく氷も、弱点属性なら結構通って復元も遅いみたいだ。脚も遅い。後退しながら削って、最後にナンクゥーに大きく削ってもらい、あとは」
ヒロ兄は子猫の牙をエアマスターの穂先に吸収させた。虹色の淡く輝きだす。
「ヴォーパルの力で仕留める! カズネは守備魔法はもういいから、念力で援護だな」
ヒロ兄は氷触媒の『ホワイトジェム』がずっしりな袋も私に渡す。色々準備してたんだね。
「わかった。やるだけやってみるよ!」
このクエストの最終段だねっ。火の巨大魔人は、ゆっくりと見えるけど歩幅が違うから結構速くこちらに迫っていた!!
→→→→→ミラリカターン
愚兄っ、愚兄愚兄愚兄愚兄っっっ!!!
無事帰ったらどうしてくれましょう?! 凄く頑張って、石にされてっ、どうにか家宝を取り返してきたのにっっ。
私が父から引き継ぎ姪っ子に託していたコツコツ拡大させた高級鑑賞『飛翔金魚』の養殖事業を手放すことになりそうです···うぬぬっっ。
「はっ?!」
戦闘中でした。
「ンンンッッッ」
火の巨大魔人と化した愚かなユケン。これだけ大きく、踏み締めるだけで蒸気爆発を起こす始末なので、遠距離以外は地表で応戦することは困難です。
戦力のリソースを割いても、飛行絨毯が足りない分は使役飛行モンスターの召喚や水による飛行スキルに使わなくてはなりません。
ただでさえ、負傷で捕まえたユケンの手下と共に離脱する者も少なくなかったので、人員は限られていました。
自力である程度高速戦ができる私やヒロシさんは飛行絨毯から降り、ナンクゥーは組んでる精霊使い系の人魚数名と後方配置です。
ボルッカさん、カズネさん、ノッコさんは引き続き3人で組んで飛行絨毯での立ち回りですね。ノッコさんはブルージェムと爆弾は温存して、本隊が生成していた『槍状氷柱』を収納リュックから取り出して投擲してます。砲筒のような勢いです···
「えいっ!」
私もボロボロになってるサハギンキラーで水の刃を放って威嚇しますっ。
ヒロシさんの『不死殺し』を付与した槍の一撃の威力はさすがで復元もできないようですが、核に当たる部位が不明。これ以外に切り札がないので慎重に立ち回ってますね。
「っ!」
火の雨がきました! 集団で取り囲んでるのでこれが一番厄介ですっ。
自分に火を当てることで復元力を高めるんですよ。
充填の間を差し引いても魔力も無尽蔵で、デタラメな回復ルーチンです。
どうにか凌ぎますが、数名、今ので里の仲間が離脱してしまいました。
それでも直りかけの右腕は傷口をヒロシさんが不死殺しで破壊してくれたから、それ以上は戻らなくなっています。
右側の炎の爪攻撃はなくなりと、打撃のリーチはいくらかマシになりました。
全体的に右半身に多くダメージを残せてますが、下がりながら戦っているので既に廟と4層へのショートカットルートへの入り口まであと4割程に詰められていました。
しかしこの調子で削っていけば···
「ンンンッ!!」
不意に、火の巨大魔人は四つん這いになりました。
「「「?!」」」
大きな的が急激に下がることもあって、私達が虚を突かれていると、速度を上げて後衛のナンクゥーさん達に迫り始めます!
前衛の私達は一時的に振り切られてしまいますっ。
知性が戻ったのか? 単純に水の力に反応したのか??
いずれにせよ、このままあの巨体で少数の後衛に突撃されては敵いませんっ。
ウンディーネに力を集めていたナンクゥーさん達は、まだ少し早いですが攻撃の構えを取りました!
私達はやむなく射線の推定影響下から離れますっ。
ドォッッ!!!
ナンクゥーさん達は『水の龍』を放ちました!
→→→→→兄ターン
四つん這いになった突進する火の巨大魔人に水の龍が激突! 水蒸気爆発も相当だが、突き抜けた当たれば致死的な熱水になったらしい激流の放射状の余波は魔人が踏み荒らした道筋を上書きして、後方の雪原の雪を消し飛ばし、すぐに凍り付きだし氷の道を造った。
蒸気の向こうから上半身が吹き飛び、尻餅をついた魔人が見えた。復元は遅い。
「核はどこだ? ジャバウォックとは仕様が違うのか??」
俺はミラリカさんと飛行絨毯のカズネ達と合流しながら、魔人に近付いた。
蒸気と吹雪でわかり辛いが、ナンクゥーは気絶して、後衛隊と共に脱出の鏡で離脱したようだ。お疲れ。
「ヒロシ! 傷口を不死殺しで削れっ。また上半身が生えてきたらやり直しだぜ!!」
「おうっ」
「断面が広過ぎるので脊髄を狙いましょう!」
「了解!」
ミラリカさん案採用! 俺は脊髄狙いでドラゴンハントの構えを取ったんだが、
ボッ!! ヤツの下半身全体が燃え上がり、続けて無数の火の粉? に分散した?!
「えっ??」
それはマグロサイズの『燃える骨の魚』だった!!
一斉に俺達、人魚隊にてんでバラバラに襲い掛かりだすっ。
「マジかっ?!」
一体一体は弱いが、数がっ。
「私達でも倒せますね!」
ミラリカさんや他の仲間達でも普通倒せてる。不死じゃないな。これは···
「んー、状況違うが、ジャバウォックの分体パターンか?? 本体があるはず···カズネ! 探知してくれっ!」
「多いよっ! 何千体レベルだよコレっっ」
「ウィッチサインでどうこうできる規模でもないか···」
向こうから来る感じでもない。特殊なヴォーパルを上手く認識できず、単純に属性相性だけで反応してる感じだ。妖精界由来じゃないからか? いや今はそれはどうでもいいっ。
このままじゃジリ貧だ···と、そこへ!
「「「オオォーーーッッ!!!」」」
雄叫びあげながら、飛行絨毯と飛行モンスターに駆る冒険者と人魚達の集団三十名くらい? がショートカットルートから飛び込んできた!
レンテ教官や里長もいるっ。
何千の火の魚達を総攻撃で削っていく!
「ヒロシくん状況!」
「これ、魔人化したユケンの分体ですっ、本体割り出し中です! 分体は普通に倒せますっ!」
「了解! 減らすにゃっ!!」
増援のお陰で元からいた人魚の兵達も勢いづいて再攻勢に出る!
よし、ガンガン減りだしたっ。
「カズネ! 改めて探知だっ」
「私かな? 探知系の人の方がよくない?」
「いや誰が誰やらだし、ジャバウォックで不死の気配も慣れてるだろ?」
「そういうもんなのかな??」
ぶちぶち言いながらも目を閉じ探知態勢に入るカズネ。
「う〜んっ、う〜〜んっっ、う〜〜〜〜んんっっっ!!!」
探知し過ぎて鼻血が出るカズネっ。
「いた! あっちっ」
「任せろっ!」
カズネが指差す方へ飛行絨毯を急行させるボルッカ! 多くの人の怪魚が逆巻く球体があったっ。あの中かっ。
「これで最後やーっ!」
発破玉とブルージェムを投げ付け球体状の魚群をほぼ打ち払うノッコっ。中心に暗く燃える骨の怪魚がいた。
「あれか!」
「露払いしますっ」
残りの怪魚はミラリカさんに蹴散らしてもらいっ、俺はホップリングで多少強引に自分を加速した。
本体の暗い怪魚は『負の火炎弾』を撃ってきたが、エアステップで変則的に躱す!
「ユケンっ! 終わりだ!!」
ヴォーパルの輝きの穂先を撃ち込む!
「オオッ、陸デクタバルノハ、上手クネーナ···」
正気を取り戻したらしいユケンは自嘲し、消し飛んでいった。




