69話 カトブレパス狩り 後編
→→→→→兄ターン
カトブレパスの棲家に近付くと明らかに様子が変わってきた。
他のモンスター達が恐れてまったくいなくなった。近付く程、犠牲者の石化体があちこちに転がってる。大半はモンスターや野生の獣だが、地元の採集業者? らしき物も転がっていた。
「人間の物は事後処理班が上手く回収してくれたらいいんだが」
「風化や欠損が酷いと石化解除後、蘇生も難しいかも?」
「頭部が無事でも魂を感じない物も多いですね。昇天してしまったのでしょうか?」
「踏んでまいそうや〜」
「『黄金蜂の指輪』全員装備してるよな? アクセサリー増えたから間違えんなよ」
黄金蜂の指輪は石化耐性アクセサリーだ。今後も必要だろうからギルドから中古品を購入してる。
妖精界で使った雨蛙の指輪も結局買い直してるから、収納鞄の中はアクセサリーだらけだ。
···さらに慎重に近付くと、凄い音量の寝息と獣臭と樟脳が混ざったようなニオイが強くなった。いる。
めちゃくちゃに潰されたゴブリン族の集落跡の一角に一軒家くらいの大きさの灰色の豚のようなモンスターが寝ていた。脚だけみると象感もある。
頭部に長い髪があり顔は隠れている。カトブレパスだ!
そして、
「(小声)2体目?!」
大きな個体の陰に二回り小さな個体が、起きてた! 一つ目で物陰にいる俺達を見てるっ。
『石化の視線』の衝撃が俺達を襲うが黄金蜂の指輪の効果で耐える!
「バフォオオーーーッッッ!!!」
吠える小型個体! 大型も起きたっっ。
「マズいぜ?! 飛行絨毯使うかっ?」
「『石弾』で落とされちゃうよ!」
「カズネ、まずは守備魔法を掛けて下さい」
「そうだったぁっ、ドガラ!」
カズネが鱗状に発現する守備魔法を全員に掛けると同時に大小のカトブレパスは石弾能力を使って猛烈な石の弾丸の雨を俺達に放ってきた!
遺跡の残骸と守備魔法と咄嗟のノッコのハードシェルでどうにか受けきるっ。
「二手に分かれる! カズネとノッコは小さいのをっ」
「「了解!」」
「ボルッカは牽制っ、ナンクゥーは自分を守りながら効きそうな状態異常を頼む!」
「「了解!」」
ダブル石弾はキツいから二手に分かれた俺達だったが、
「バフォオオッッ!!」
この巨体で結構速く駆け回りだすカトブレパス! 地面が揺れ、遺跡があちこち壊れだす。地下のある部位はガンガン崩落するっ。
早速落っこちたノッコをカズネが慌てて念力魔法でレスキューしてるっ。
接地してまともに戦えたもんじゃないっ。
「作戦変更! ボルッカ、飛行絨毯で陽動してくれっ。ナンクゥーは取り敢えず浮いてくれっ」
「よっしっ」
「ウンディーネを『水の蛇』にしましょう!」
ボルッカは飛行絨毯で飛び回りながら手が回れば発破玉を投げ付けだし、ナンクゥーは蛇の形になって飛行するウンディーネの背に乗り合わせて光のラカを喚び出して隙を伺う。
俺はエアステップスキルで間合いを見る。
2体目がいたのは想定外だったが、カトブレパス! 生息地の環境込みだと資料よりずっと厄介だっ。
発破玉くらいじゃダメージは中々通らない。意外と速い。石弾の範囲が広く、念じた周囲のあらゆる基点から放出できる性質がかなりやり辛い。
目が弱点らしいが石化の視線はアクセサリーで防いでも衝撃があって一瞬隙だらけにされる!
ジャバウォック竜なんかを倒して修行もして自信を付けてたが『一撃で倒せる特殊武器』が使えるワケじゃなく、あくまで抜けてた点を埋めただけの修行で一気に強くなったワケでもないってのを思い知らされちまうな!
「···」
ボルッカが陽動してくれてる。ここはナンクゥーに繋げるのがベストだよな? 俺はエアマスターを左手に持ち替え収納鞄からジャベリンを3本抜いた。
→→→→→妹ターン
「バフォオッ!!」
「どぉあぷっ?!」
「あかーーんっ!!」
小さい方のカトブレパスっ、ウェイト足りない分揃えた前足で、どーん! とやって地面揺らして崩してくんのよっっ。
視線合わせるとアクセサリーあってもビシッて動き止められるし、石弾もキツいしっ。
私は守備魔法の維持と念力魔法も維持して自分の回避と、落下しなくても転ばされまくるノッコのレスキューでてんてこまいになってた。
「ノッコっ、転び過ぎーっ!」
「コイツ、苦手やーっ。思ってた運動と違うわ〜っっ」
戦う以前に転ばされ過ぎて半泣きのノッコっ。
「バフォオオーーー!!」
ダメだぁっ。
一方でヒロ兄の方は、ヒロ兄がジャベリンで口元を何回か狙って鬱陶しがらせて隙を作り、ナンクゥーが光の精霊に閃光を大カトブレパスの目に撃って視界と石化の視線を封じて攻勢に転じてた!
口ね···確かに目見なくていいよね。
「ノッコ! 1回我慢して突進してくれるっ?」
「やってみるわっ、コイツぅっ!!」
ノッコはどーんっ、てやられるタイミンで飛び上がり、盾で視線も防いでハードシェルで体当たりしたっ。
私はそれを念力魔法で押しつつ、横に回って、めちゃ見られてるけど目が合わないようにしつつ、ディフェンドウィップで『舌』をパチぃんッとはたいてやった!
「バフォッ?!」
痛そっ、でもって激怒して私に石弾の雨撃ち込んできた!
「どぉっ?!」
守備魔法破られながらなんとか念力とディフェンドウィップのガードで逃げ切るっ。
だけど今、ノッコがようやくフリー! で懐にも入ってるっっ。
「コンニャローっ!!」
ヘビィスタンプで一撃打ち据えるノッコ!
「バフォッ!」
間近で石弾のカウンターを撃つ小カトブレパス! ノッコは盾で防いだけど両足は撃たれ、右のハンマーは弾かれたっ。でも踏ん張って鉄の大護拳に持ち替えるノッコ!
「サティマ(麻痺)! アティ(回復)!」
ちょっと雑だけどノッコの両足を回復させるっ。ノッコは踏み込んで拳打を打ち出した!!
「ふぅああっ、これはウチの分! これもウチの分! さらにウチの分! 全部のウチの分やーーっっっ!!!」
よっぽど転ばされまくって落っことされまくったのが頭にきてたらしいノッコ! 力任せに小カトブレパスを殴りまくって突進し、遺跡の壁面に叩き付けて倒したっっ。
「ふぅぅ···っっっ、ダイエット、完了や!!」
振り返って火花を散らして護拳をかち合わせたノッコはすっかりいつもの体型に戻ってたよ。
ヒロ兄の方も、
ドゴォオオオンンッッッ!!!
地響きを立てて命中させたドラゴンハントで大カトブレパスを仕留め、飛び退いて着地しながらウォーロックサインで魔力も回収してた。
最近、ヒロ兄つっよっ。帰宅部だよこの人?
「片付いたね! ナイスっ、ノッコ! ちょっと脚、ちゃんと診るね、破片とか入ってるかもだから」
「おおきに〜」
無事クエスト完遂で、こっから他に打ち漏らしがないか確認して、発生源のゴミ捨て場に一応聖水撒いといて、カトブレパス2体の死骸の回りに簡単な魔除けの陣を張って死骸漁りやアンデッド化の二次被害予防をして一部を証拠に切り取って、あとは周囲の状況確認が済んだら、帰りはここから飛行絨毯に乗ろうってなったんだけど、
「おい、珍しいんじゃないか? コレ。なんか持ってんぜ」
ボルッカが陥没した遺跡から目敏くなにか見付けた。
全員で行ってみると、
「アクアピープルですね。こんな内陸の、淡水でもあまりいないはずですが? 所持品に強い魔力を感じます」
そこには石化した人魚の女性が転がっていて、その腕には石化を免れた奇妙なオーブが抱えられてた。




