70話 蘇生と依頼
→→→→→妹ターン
蘇生所は保存薬のニオイが凄いけど、腐敗臭もやっぱり少し混ざってる。
こう言っちゃなんだけど、ちょっとワインセラーっぽい造りだよね···
事後処理班が回収した石化犠牲者達の内、石化を解除すれば一発で復活できる人は稀で、むしろ半数近くが蘇生不可の判定だったけど、『解除後死亡するが蘇生は可能』と判定された人達の石化体は纏めてギムリーの蘇生所に集められていた。
私達はこの間のオーブを持ってたアクアピープルの人の石化解除と蘇生に立ち会うことになった。というか、私とナンクゥーは手伝うようシャウシャル教官とロヴミィ教官に言い付けられてたんだ。
「解除と蘇生の二重陣は組み終わってます」
「石化が絡むと錬成術の範囲になってくるがね」
「蘇生ですっ」
蘇生所の蘇生師の人に訂正されるロヴミィ教官。『蘇生観の相違』ね。
私とナンクゥーはオーブはテレポート魔法で回収済みのアクアピープルの方の石化体が中央に置かれた陣の所定の位置に着いた。
「カズネ頑張れよ」
「たぶん、身分高い人じゃねーかな?」
「なんであんなとこいたんやろなぁ」
陣には対価物も置かれてる。石化体の劣化や破損、整然のダメージ、中で停滞してしまってる魂へのカンフル···等々。
まぁ物理的な人体素材に、エリクサー、ゴーレムなんかにも使われる生命触媒の『ハートストーン』、水の種族だからブルーポーションとブルージェムも。石化解除に『ブラウニーとんかち』。他にもなんだかんだ置かれてる。
蘇生費込みで結構なお金が掛かってる。ギルドはこの人の身なりやオーブの希少性、状況の特異さ、を加味して一旦費用を被る判断をしていた。
「ではまず、石化解除を! 復元からっ」
蘇生師の方の合図で陣は起動するっ。私とナンクゥーも合わせる。ナンクゥー魔力つっよっ。
「ナンクゥー、合わせるんだよ?」
「了解です教官」
調整された陣が正常に働く! 陣の対価を消費して石化体の劣化、破損が回復してくっ。凄っ。
「ふぁーっ」
「カズネさん、集中」
はい、怒られた。でも綺麗に復元されると美人さんだ。この人。
「解除です!」
石化が···解かれた!! 魔力の奔流に銀髪がなびく。想定の2,5倍は美人さんだーっ!
でも長期石化の後遺症でお亡くなりになってるぅーーー!!
「蘇生に掛かります。脳、脊髄、心臓、そして当人の意識。特に注意して下さい」
連動した蘇生の陣も、残りの対価素材全てを消費して起動させるっ。
生命の鼓動が直に伝わってきてゾワゾワしちゃうっ。
「···ぅっ、ごほごほっ!! 痛いっ」
蘇生してすぐに噎せて、すぐに痛みを感じたらしいアクアピープルの女性。
「内部に損傷はない。復元箇所の神経だな。ナンクゥー、ドリアードを」
「やりましょう」
「カズネさん、痛みのケアを」
「は、はいっ。サティマ!」
「癒しの、百花繚乱」
私は女性に麻痺魔法を掛け、ナンクゥーは女性の復元箇所にドリアードの根を張らせてついでに全身お花畑にした!
「やり過ぎだよ?」
「この方が調子が出ますから」
「···あなたは冒険者ギルドに保護されて石化解除と蘇生処理を受けたところです。安心して下さいね。私の生徒が麻酔魔法を掛けてますから」
「掛けさせてもらいまっ、しゅ!」
噛んだわっ。麻酔掛けさせたもらってます。て言う人生になると思って中学生やってこなかったから!
とにかく、女性は落ち着き寝息を立てだした。実は陣に鎮静の素材も使われてから。蘇生後、デリケートな身体コンディションのまま混乱する人も多いそうだからね。
一息ついた私とナンクゥーはフレミングの法則みたいなネオ山梨式サムズアップを送り合ったさ。
→→→→→兄ターン
翌日、今度は蘇生所ではなく、ギルド系の治療院の特別室に呼ばれた。
部屋には人形殺し職の教官、ザミ・レンテ先生もいた。
身を起こしたアクアピープルの女性のベッドは細長いアクアピープル仕様だった。
「レンテ教官?」
戸惑うボルッカ。
「来たね〜。まずはこの方から話を聞いてみて。仕事の依頼だよ?」
俺達はアクアピープルの女性に向き直った。美人だな。
「皆さんのお陰で助かりました。私はミラリカ・グランリバー。ミラリカと呼んで下さい。私はずっと東のセノ川の上流で暮らすアクアピープルです」
国境の先だ。マノーラ草原のかなり先。正直活動範囲と思ってないから薄い知識しかないが、確かセノ川は大きく長く、上流は水の魔力が強く。淡水のアクアピープル達のテリトリーだったはず。
「私は今はこちらのギルドで預かって頂いてる水門のオーブを回収する為に旅をしていました」
「そのオーブがマノーラ廃市に?」
「端的に言うとそうなります。まさかカトブレパスの巣になっているとは思わなかったのですが···」
気の毒に。
「マノーラ廃市は掘り尽くされた遺跡。特別なオーブ等はもう無いはずですが? アレはとても強い水の魔法道具でした」
ミラリカさんはため息をついた。
「お恥ずかしい話なのですが···」
ここからミラリカさんが面目なさそうに話した内容は、
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まずミラリカさんのお兄さんが外から来た商人と交易のビジネス話に乗るが、これが詐欺! 大借金を負ったお兄さんは借金のカタに、商人とグルの金貸しに件のオーブを渡してしまう。
このオーブはミラリカさん達の氏族の家宝だった為、事態が知れるとお兄さんは投獄! 詐欺だったことも突き止められた為、ミラリカさんは兄の不始末を濯ぐ為郷から出された。
ここから3年! ミラリカさんは見付けた商人をとっちめて衛兵に突き出し、見付けた金貸しもとっちめて衛兵に突き出し(意外と武闘派なミラリカさん!)たんだが、オーブは宝飾品としてどんどん転売され行方知れずに。
さらに2年掛けてっ、オーブは移送中にゴブリン族に襲われ奪われたことが判明。さらにさらにゴブリン族間の物々交換でオーブは各地を転々! 意外と交易してるゴブリン族!!
そこから半年掛けてマノーラ廃市のゴブリン族が現在所有していることを突き止めたミラリカさんは、現地に乗り込みいよいよ回収に掛かったが、まさかのカトブレパスと遭遇! 石化対策してなかったミラリカさんは為す術なく···
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「というワケで、こんなことになってしまいました。面目ないです」
「詐欺られた段階で現地のギルドに依頼してくれたらね〜。衛兵は管轄があるから窃盗品だけだと頼りにならないにゃ」
「なるべく、内輪で解決したくて···」
「返って大事になったにゃ〜」
「···」
面目なさ過ぎて萎れてしまうミラリカさん。
「レンテ教官、その辺で。つーか、依頼っていうのは? なんだかんだで目的達成してるんじゃ?」
「はい。水門のオーブは回収できたのですが。実は時間を掛け過ぎてしまったようで、私達の故郷でトラブルが起きていて。カトブレパスを2体も退治した腕前を見込み手助けしてくれないでしょうか?」
「具体的にはどういったことですかね?」
「またカトブレパス狩りとか?」
「え〜、ウチ、アイツ苦手やー」
「違います!『リバーパイレーツ・ユケン一味』の退治を手伝ってほしいのですっ」
「「「ユケン一味??」」」
たぶん現地では有名なんだろうけど、遠過ぎて俺達はよく知らなかった。
「ユケン一味には貸しがあるからね〜? あたしも協力するにゃ!」
レンテ教官がやたらやる気だ。貸し?
リバーパイレーツ? てことは川で海賊行為をしてる連中てことだよな。
オーブの話とどう繋がるのかまだ把握できてないが、話を聞いてみることにした。
まーた対人戦になりそうだが···




