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瀧川兄妹異世界転移する!  作者: 大石次郎


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60話 おどろ小路

→→→→→兄ターン



おどろ小路の調査隊の編成は、現地までの移送はともかく調査は待機組の中でも手練れ主体で行われることになった。


姫将軍も参加しようとしたが『現れたり消えたりする』くらいの認識だった、ぶくぶくフードの能力が『探知無効で姿を消す』であったことや、ただの眷属や愉快犯ではなく思いの外強い敵意を持っていたことから、野営地に残ってもらうことにした。


ちなみにもう回復したトルチャさんとミリーも野営地に残ってる。2人とも護衛隊員としてだが、トルチャさんは「サテュロス族の仕事じゃない」とだいぶ不満そうだったな。


で、現地の俺達はというと、


「ほっ!」


「ゴフゥッ?!」


俺はドラゴンハントハントで『トロル』の頭をかち割り、仕留めた。


トロルは体長3〜5メートルくらいの小型の巨人族だ。小型の巨人族ってのもなんだが。毛むくじゃらで頭身や頭部の形はわりとデタラメなモンスターだ。知性はゴブリン以下、猿以上。て感じかな?


仕留めると同時に加減してウォーロックサインを使うようにしてる。それでも魔力が足りない時はウィッチサイン。これは探知にも使えるから位置関係を整理できるメリットもある。


継戦能力高くなったと思う。


おどろ小路は巨大なトゲのある植物が目立つフィールド。いわゆる『ダメージ地帯多め』だ。

厄介な地形で、二百数十名の調査隊の前衛がトロルの群体に襲われていた。

なお皮が厚く痛覚が鈍く死なない限り再生力の高いトロルはトゲはあまり気にしてない···


「わーっ、臭い! めちゃ臭い! 見た目と動きと吠え方も無理!!」


人型&不衛生感&不快ムーヴが利いて、カズネは半泣きになっていたが、


「ゆけっ!『鉄人ノッコ』! ドカンっとやってやれ!!」


「どか〜〜〜んっっっ!!!!」


トゲ対策で珍しく長袖長ズボンにブーツのノッコが頭に乗せたザセウ王の檄を受け、ハードシェルでトロルを2体ぶっ飛ばしてトゲの巨木に磔にして、続け様に手近な1体の胴をハンマースタンプで横一文字に両断して仕留めた!


獲得したレアスキルでパワーアップしたノッコはいつも以上に大暴れだ。


ザセウ王が使役する『強いゴーレム』みたいになってるけどさ。


とにかく皆がんばって撃退できた。隊に怪我人も出たが、回復アイテムや魔法でフォローできる範囲だ。この段ではカズネも活躍。

こういう時、患者に礼を言われると「いえいえ」と必ず微笑んで『聖女ムーヴ』する我が妹でもあったが。


「それにしても、こんなとこ住まなくてもさ」


「異能が強力な潜行能力なら、これくらいの環境の方が『安全』に感じたのかもしれないわ。心が場所を選んだのよ」


画家らしい感覚なのかな?


「心ッスか」


俺も1人で、あんな姿になっていたら、トゲだらけのここを相応しく思うようになったのかもしれない···



→→→→→妹ターン



結構な頻度でそこそこ強いモンスターが出るトゲだらけの森を進んでゆくと、目撃情報はギリあった『ぶくぶくフードの家』らしきどう見ても廃屋の敷地の前に着いた。


「魔除けは内部から破壊、廃棄」


「しかし家自体が強い素材で作られている。周りのトゲの木達に飲み込まれてはいない」


「嫌な気配はするな···」


調査隊の探知系の兵達が警戒し、陣を倒した橋のような形に組み直して、私達はジリジリと怪しい気配の廃棄に近付く。


「無駄な抵抗はやめなさーい、とか呼び掛けないんだね」


「いや、カズネ。この嫌な気配は、姿を現した時のぶくぶくの人と違う。ジャバウォックの気配もしないし、それに、数多くないか?」


「それ私も思った!」


と言った側から、ドォッッッ!!!


廃屋の窓や煙突、ドア、隙間なんかを突き破る形で、人のような影のモンスターが多数っ、叫びながら飛び出してきた!


「『シェードスクリーム』ですねっ」


光のラカを召喚しながらナンクゥーが身構えた。シェードスクリームは確か負の情念の溜まった魔力の強い場所に発生する闇属性の霊体モンスターだ。


「綺羅星の、火樹銀花」


ラカは閃光の槍を放ちシェードスクリーム達を一掃した!


「また妖精界に伝説を残してしまいましたね。ハハハ」


花吹雪の代わりに謎の煌めきをラカに発生させて勢い付くナンクゥー。うん、いつも通り。


圧倒されつつ戸惑う調査隊の人達を促し、使役モンスターでざっと内部の様子を見てから、さらに選抜した数十名と共に廃屋に踏み込んだ。


「ん?」


「思ったより普通??」


もっと怪しい感じかと思ったら、放棄されてから年月は経ってる様子だったけどいたって慎ましい感じの、『童話の中の木こりの家』みたいな部屋だった。


「魔法の品が見付かったぞっ?!」


奥の部屋を捜索していた隊員の声がして私達も向かった。


そこにあったのは凄い禍々しい魔力を持つ奇妙な形の本だった。『見付けられたこと』に反応して浮遊して魔力を高めてる。


「バリバリ呪われてるが『不解錠』の構造がギッチリありそうだぜ? 呪いだけ解いてくれねーか? あとは全快したオイラの両手で解錠する!」


震えの止まった絶好調の手のグローブを取ってみせるボルッカ! カッコイイ。


それからシトリーさんと隊員達で呪い対策の得意な隊員が本の呪いだけはどうにか解いた。


「応援してくれっ、テンション上げる!」


「おっ、ボルッカ! 俺達のリーダー!!」


「タレップの従兄弟!」


「小っちゃいから抱えたらめちゃ怒る!」


「氷菓子の美味しさについてはもう一つ分かり合えないところですね」


「特別印象ないわ」


「雑務が早いことは評価する」


「ロクに褒められねーなっ! まぁいいけどよ!!」


怒っちゃったけどっ、集中したボルッカはフルパワーの解錠スキルで奇妙な形でギュウギュウに固められた本の守りを全て解体した!


「「「オォーーッッ」」」


歓声! で、埃っぽい床に落ちた本の安全を念入りに探知してからヒロ兄が拾って開いてみた。私も覗き込む。


「···日本語、だが」


「最初しかちゃんと読めないね。でもこれ、日記、だよ」


そう、それは震えるような筆致で、途中から字がめちゃくちゃになって読めなくなる、ぶくぶくフードの日記だった。

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