59話 フェアリーキャンプにて
→→→→→兄ターン
「ウンディーネ達よ、解毒の雨を!」
姫将軍は水の力を宿したオーブを触媒に多数のウンディーネを使役し、ジャバウォックが毒の炎で焼いた森を鎮火し解毒した。
「森の再生には時が掛かります。食べられ、焼き尽くされ、毒で溶けてしまった者達は蘇生できません···」
沈痛な表情の姫。どうしようもない。
ジャバウォックを撃退はできたが横槍で倒し切れず、俺達と姫将軍の大飛行部隊は野営地に引き返すことになった。
損耗しても全員無事で撃退や鎮火&解毒の成功は難民や残した兵達を喜ばせたが、討伐失敗はそれなりの衝撃と落胆を妖精界の人々に与えてしまったな。
「無事だったかよっ」
「惜しかったね!」
「どうだ? 俺様が授けたヴォーパルの剣は? ふふん」
トルチャさん、ミリー、ザセウ王は概ね労ってくれた。
それから姫将軍や側近と協議したが、元々人前に滅多に出てこないぶくぶくフードが直接悪事を働いたのはこれが初めてで、姫将軍達も困惑するばかりだった。
それでも、ぶくぶくフードの棲家があると噂される『おどろ小路』と呼ばれるモンスターだらけのエリアを、数時間の休息の後、隊を組み直して調査することにはなった。
だが! 俺達はノッコ以外はその数時間を使って、修行や治療を行うことになった···
野営地の一角の空き地で、そこそこ姫の軍のギャラリーがいて気恥かしいが、俺はカズネと姫将軍からもらったエリクサーをまず一気飲みした!
「ふぉおおっ?」
「ゲームだと温存しちゃうけど最後結局余るヤツっ!」
なんとも言えない感覚だったが、瀧川兄妹は全快した! 気疲れはあるが一旦忘れるっ。
「よし、カズネ。俺の未完成な『ウィッチサイン』スキルを『ハメ技仕様』で習得する! 打ち合わせ通り頼むっ!」
平服の俺はシルバースピアを構えた。
「じゃ、いくよ? 加減が···こうかな? エル!」
俺の周囲の中空に数十の炎を灯し、合わせてその内数個を消したり灯し直したりするカズネ。どよめくギャラリー。
目を閉じてそれを感じる。俺の魔法適性じゃ『わからんでもない』くらいだ。
俺はシルバースピアを基点に、ウィッチサインを発動した。ウォーロックサインと違い周りの環境から魔力を吸い出すスキルだ。
「むぉっ?! ヒロ兄っ? これ私がしんどいヤツ!」
エルの火がもろに全部補足されて魔力吸われるかんな。
「耐えてくれ! やっぱり普通に探知するより周囲の魔力の流れや反応がよくわかるっ、吸った魔力をカウンターにも使える。だけどっ!」
俺はスキルを解除し、その場で吐いちゃったぜ。
「オロオロオロっっ」
うへぇっ、て反応のギャラリー! 魔力を吸い過ぎて全身発光してる。キャパ越えたか···
「ちょっと大丈夫? さっきシトリーさんから借りたの使ってっ」
「お、おお」
『チャージジェム』だ。魔力を充填できる魔石。俺は余剰魔力をジェムに吸わせた。
ついでに吐いたのでハーブ水もごくごく飲む。
「ふぅ···先にいくらか抜けた状態じゃないと危ないな、よっし。も1回だ、カズネ!」
「え〜、吐いたばっかだよ? 体育会だー」
マジックポーション飲みながら戸惑うカズネだったが、ぶくぶくの『消える力』はたぶんチートだ。対策が必要っ。今、物にしとかないとな!
→→→→→ボルッカターン
自分達のテントでオイラは、トルチャとミリーが「待ってる間に作ってみた」という『手の痺れを治す秘薬』で満たされた壺を前にしていた。
異臭。でもって火に掛けてないのになにやら煮えてる風で、帯電までしているっ。
「おい、これダメなヤツだろ?」
「大丈夫だって! エクスポーションと『麻痺消し薬』と器用さを上げる『ハイランドワキワキ草』と神経を刺激する『ハイランドビリビリ草』を合わせてってからっ」
「ピクシーの秘密の薬も入れたからイチコロだよ!」
「イチコロっておかしいだろ? たく、マジかぁ? え〜??」
オイラは、怪し過ぎる薬の壺に袖をまくった両手を···
「だぁうぬぅおほぉああ〜〜〜っっっ??!!!」
想定の3,5倍くらいの衝撃にっ、オイラの絶叫がテントに響いた!!
→→→→→シトリーターン
ナンクゥーは姫将軍から光の精霊ラカが宿る『流れ星のワンド』を貸与されたから、使いこなせるよう私が稽古をつけることになったわ。
魔法の指導はお手の物! 本業は画家だけどねっ。
「じゃ、さっそくラカを出してみて? 流れ星のワンドと呼応して、明かりをイメージして呼び掛け」
「疲れて眠いので小一時間寝ます」
「え?」
さっきエリクサー飲んだよね?? ナンクゥーは問答無用に野営地の端のこの草地でポテっと横になって眠ってしまった!
なるほど、直感に従う系ねっ。そんな感じだと思ったわ。私は取り敢えずケッチを描いたりしてナンクゥーが起きるのを待った···
小一時間後、ナンクゥー起床。
「おはようございます」
「はい、おはよう。じゃあ、改めて杖を」
「火樹銀花」
流れ星のワンドを掲げ、光の精霊ラカを喚び出すナンクゥー! ラカはナンクゥー仕様の花の装飾を持つ姿に変化したっ。
「植物の力をベースとすると、光、水、土の力を合わせると上手くゆきそうです。···百花、繚乱!」
ラカ、ドリアード、ブラウニー、ウンディーネを纏めて喚び出し、草地に凄い魔力の巨木を発生させるナンクゥー!!
人が集まって来ちゃったわっ。
「環境もありますが、中々良い霊木が育ちました。この木の苗や実、挿し木する等して輝きの森の復興に役立てると良いでしょう。ハハハハハ」
木の枝を操り乗って花吹雪を撒いて喝采を浴びるナンクゥー。
うん。天才。教えることなかったわ。ただいいスケッチを描けた時間だったわ···
→→→→→ノッコターン
休憩時間。ウチも修行しようかと思ってんけど、
「違うだろ? ノッコ。お前にしかやれないこと、あるだろ?」
てザセウ王に誘われて、姫将軍とお付きの人らも一緒に難民キャンプの出店通りに来たんや!
「姫将軍様、鑑定した物をお食べ下さいっ」
「は、はぁ」
「姫将軍だ!」
「姫将軍様ーっ!!」
お付きの人らはピリピリしとって、キャンプの人らは大喜びや。でも、それはそうと、
「ノッコ! 正確な商品名はややこしいから『ハイランドな食べ物』食べまくれっ! 俺様はお前の才能を直感してるぜっ?」
「才能? でも食べるでーっ!!」
焼き鳥みたいなん、焼きトウモロコシみたいなん、バターポテトみたいなん、炙りソーセージみたいなん、なんかの煮込み、変な魚の塩焼き、光るフルーツを飴で固めたん、綿菓子かと思ったら甘い霧みたいなん、どんどん食べたーっ! 美味しい〜〜っっ!! そしたら、
「んん?」
なんや、力が漲って、身体ピカピカしてきたわっ!
「来たぁっ、姫将軍、スキル鑑定道具だぁ!」
「私ですか? ええと『スキルソムリエグラス』を」
姫将軍は遠眼鏡みたいな魔法道具を受け取ってウチを見いやった。
「これはっ?『快食成長』スキルと『快食充填スキル』に覚醒していますっ」
「なんなんです、それ?」
「機嫌よく食べたら滋養を生かして成長を促進する力と、機嫌よく食べたら滋養を生かして力を蓄える力だ。どっちも素直な者にしか身に付かない、この世の祝福の側のレアスキルだぜ?」
「ふ〜ん?」
なんや美味しく食べたらパワーアップできるようになったみたいやっ!
ほな、もっと美味しく食べよ!! 最高やっ!




