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瀧川兄妹異世界転移する!  作者: 大石次郎


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56話 ヴォーパルの剣

→→→→→兄ターン



トンボ人間のガリィヤックさんの案内で、大気の魔力が強過ぎて制御が難しそうな(運転手はボルッカ)飛行絨毯に乗った俺達は姫将軍という人の所に向かった。


妖精界は妖精王が治める物らしいが今は衰えていて、代替わりの直前! 姫将軍はその跡目だとか。


と、前方の地上に広大な魔除けの結界の光が見えた。


「あれかな?」


「のようだな、国軍でも中々見ない結界だ」


「姫将軍様の野営地だぜ?!」


千人は越える軍勢の野営地だったが、難民キャンプも兼ねているようだ。そっちは3千人はいるんじゃないか? ピクシーなんかの小型種族も含めるともっとだろう。逆に大型の種族もいくらかいた。端には様々な家畜らしき生き物のエリアもあった。


「こりゃ輝きの森の西側の地上にいる話せる住人は殆ど来てるぜ」


「姫将軍、張り切ったな。弟や従姉妹も跡目を狙ってるんだろう? 今回しくじったら面白いことになるかもなっ」


「···」


「ザセウ王、そんなん言うたらあかん」


「ふふん」


ある程度近付いて高度が下がると、軍勢の中から他の虫の兵や鳥人間の兵等が飛び上がって着地場所を指示してきた。


俺達は大人しく指定の場所に着地した。


「トルチャーっ!」


1体の女のピクシーがこちらに飛んできた。あちこち怪我の手当ての跡があるが凄い勢い。


「ミリーっ!! 生きてたのかよっ」


「ダメ元で自分にズマ(風魔法)を掛けて吹っ飛ばされたんだ! 私達軽いからっ。生き残ったよ?」


「ムチャしてよっ」


サイズ差はあるが、2人は抱き合うように再会を喜んでる。


「···純愛っぽくしてるわね」


「···どのタイミングでチクってあげましょうか?」


「···エッチ山羊はお仕置きやっ」


「とう!」


不穏な空気と矛先が自分に向くのを避け、ザセウ王はノッコの頭からカズネの茄子帽子の上にジャンプした。


「レプラコーンの王に強そうな人間の戦士達! これでひと安心だねっ」


「皆の分まで仕事しないとな···姫将軍は?」


「テントにいらっしゃると思う」


「ではゆこうトルチャ。ザセウ王様も」


「うむ。苦しゅうない。外交外交! ナハハッ」


ザセウ王が我が妹の頭の上でいい気になりつつ、俺達はさらにガリィヤックさんの案内してもらい、姫将軍のテントに向かった。



→→→→→妹ターン



野営地内でも主に兵士や侍従としてよく見掛けた妖精界を統べる種族は、パッと見はエルフとフェザーフットのハーフに見えるけど背に蝶の羽根を生やした人々『ハイランドピープル』だった。


妖精界でしか生きられないがエルフの数倍の長命種で、エルフ族とフェザーフット族の先祖という説もあるみたい。


奇妙な形の多い凝った調度品と甘い香の香りが印象的なテント内の最奥の豪奢な椅子に座ってらっしゃったのはそのハイランドピープルの女性!


姫将軍様だ。カワ〜っ。

ナンクゥーがアンティークショップで見付けた不思議可愛い人形だとしたら、姫将軍様は百貨店に飾られてる特別セレブレティなお人形って感じ。


強い魔力の動き易そうなドレスを着てらっしゃり、側にはさらに強い魔力の彼女用の鎧もトルソーに掛けられてあった。


ガリィヤックさんが片膝をついたから、ザセウ王以外の私達も習った。


「皆様、よくこの窮地に来て頂きました。トルチャもミリー達と共に使命を果たしてくれましたね」


「いえ、ボサっとしてたら郷丸ごと焼かれるだけだったんで! 仲間の仇もとりますっ」


「ええ···そして、久し振りですね、ザセウ王」


「とんだことになってるな、姫将軍!」


姫将軍様は『姫将軍』呼びでいいのかな??


「はい、父上が臥せっておられなかれば、『遠雷の(あるじ)』の封印も強固であったはずだったのですが···」


ん?


「遠雷の主? ジャバウォック竜じゃなくて、ですか?」


「はい。詳しくは話してなかったのですね」


「いやっ、遠雷の主の封印は俺もよくわかってなかったんでっっ」


「しょうがない。俺様がそこんとこ詳しく解説してやろう。とう!」


ジャンプして姫将軍様の腿の上に着地して、私達に向き直るザセウ王。


「あなた、詳しく話せたんですか?」


「ワインはすぐ出しましたが、情報は小出しですね」


10倍ワインのせいで攻撃力上がりがちなシトリーさんとナンクゥーっ。


「落ち着け! 遠雷の主は数代前の妖精王が封印した妖精界の負の力が集まったの悪の大精霊だ。マジで凶悪なヤツさ。コイツを封印するに当たって、当時の妖精王は6体の不死身の魔獣の魂を利用することにした。その1体がジャバウォック!! コイツをぶくぶく野郎が野に放ったせいで他の封印も緩みだしてるってワケだ」


「そんな危ないのおったんや〜」


「不死身の竜すら封印の一部ってのは相当だな。今のオイラじゃ絨毯の御者がいいとこだが···」


「残る5体の魔獣の封印は妖精の騎士団を送って守られせています。まずはジャバウォックを討たねばなりません。小さなザセウ王、ヴォーパルの剣を貸して頂けますね?」


「勿論だ! 元々ハイランドピープル同士の戦争に使わないよう、俺様達が預かってるもんだからなっ。それ!!」


絵のような多層魔法陣から1本のペーパーナイフを取り出すザセウ王。


「それがヴォーパルの剣、ですか?」


ペーパーナイフだよ??


「ふふん。甘いぞカズネ。よし、ヒロシ!」


ペーパーナイフなヴォーパルの剣をヒロ兄に念力で投げ渡すザセウ王。

ペーパーナイフはいきなり大きくなって突槍の形に変わった!


「ぅぉっ??」


焦るヒロ兄。


「ヴォーパルの剣は変幻自在! 竜騎士が持てば、槍にも変わるさっ」


「そうッスか···」


ヒロ兄が掲げるように持ったヴォーパルの剣は柔らかく、虹を固めたような淡い光を放っていた。

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