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瀧川兄妹異世界転移する!  作者: 大石次郎


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49/90

49話 気分による存在

→→→→→兄ターン



3箇所あるカトウの拠点への突入は明日の午後に決まった。思ったより早い。


俺達と坊っちゃんはカトウがいる可能性が最も高い、収集した魔法遺物を研究改造している施設へカチ込む団に加わることになった。


とは言っても出発は明日の早朝。今日は1日休みだ。昼間の内に寝溜めや、装備の補修、やや高い物を含めた消耗品の買い足しを済ませた。

夜になると翼はキッチリ消してもらった坊っちゃんを連れて、平服に軽く護身用武器を携帯するくらいでリラキアの夜店市に向かう。


「ほほう! 人間達の夜店市等、数十年ぶりだなっ」


ほとんど口に合わないから買い食いはできないが、夜店市自体は楽しんでもらえているようだ。


「坊っちゃん、何歳なんッスか?」


「吾輩、今年で116歳であるっ」


他の長命種を参考にした想定の最大値の倍くらいきたこれ。


「ハーフでも人生長いッスね···」


「赤子の時代は人間と大して変わらなかったようだがな、そこからが永いこと! 永いこと! ハーフは成長が安定しないのだ」


「それ、わかりますね。ボクも『幼児期』が長くて、中身はそうでもないのにずっとお子ちゃまで、日々困惑してました」


「ほほう?」


「でも、ナンクゥー、今もヘンテコだから結局よくわかんないよねー」


なんかパチパチしてる綿菓子的なの食べながら言い過ぎだ、我が妹よ。


「カズネ、語弊がありますね。長期の『休眠期間』を経て、ボクは『百花繚乱』のボクへと大成したのです。ハハハ」


「中々見所のあるヤツ! ククク」


「ハハハ」


「ククク」


「ま、大きな括りでは『同じグループ』だと思うぜ?」


「ウチはずっとこんな感じやで?」


「「「あ〜」」」


だろなぁ。


「ほほう」


そんなラチもない話をしつつ、買い食い以外にも、『蹄鉄投げ』、金魚掬いならぬ『釣りのポップ釣り』、モグラ叩きと同じ理屈の魔力動力の『ワーム人形叩き(ワームの人形がキモい)』、太鼓打ちグループに飛び入り参加、吸血鬼連れだが縁起物の仮面舞踊にも飛び入り参加、地球のと違い結構本気の作りのお面やなぜか売ってる被り物を買う等もした。


坊っちゃんがなにも食べられないのも可哀想だから、昼の内に作っておいた血の成分に近い栄養構成の『ブラッディキャロット』と『ブラッディ棗』のアイスクリームと、元々飲めるらしいトマトジュースに血液剤を溶かした物を、夜店の灯りと虫除けの香の置かれた屋外休憩席で飲み食いしてもらうことにした。

俺達も軽くそれぞれ好みの物を飲み食いする。


特性アイスクリームとドリンクを完食完飲すると、モルテマ坊っちゃんはスプーンを置き満足気にため息をついた。


「吾輩、生涯最大に満足である···瀧川兄妹とその仲間達よ、思い出、を、ありが、と、う······」


微笑み、キラキラとした光に包まれ天に還ってゆこうとするモルテマ坊っちゃん···てっ!


「ちょーいっ、なに自主的にターンアンデッドされてるんッスか?!」


「あーん? なんだヒロシ、吾輩が気持ちよくなっておったのに」


よし、キラキラ消えたぁ!


「吸血鬼って人生満足すると消えちゃうんだ」


「アンデッドですからね」


「腹八分目にしとかんとあかんやん」


「坊ちゃま、明日は頼みますぜ?」


「任せておけ、大して血を補充しておらんが、過去最大に吾輩の魔力は高まっているぞっ?! クククッ!!」


確かに坊っちゃんは凄い魔力の高まりを見せていた。アンデッドは根本的には霊体だから、バンパイアは結構気分による存在なのかもしれないな。



→→→→→妹ターン



翌日、とうとう私達はカトウが魔法遺物を研究している施設の側まで来ていた。


今頃、他の団はそれぞれ居住施設と、ゴーレム量産施設を囲んでるはず。

ゴーレム施設に関してはそのまま突入すると酷い消耗戦になるから、国軍の『飛竜部隊』を投入して空爆で片付けちゃうみたいだけど···


とにかくここでは衛兵団と冒険者隊はそれぞれ配置についてる。小さな野営拠点じゃなく建物や城壁の守りが強いから、初手で外から広域デバフを仕掛ける攻撃は中々機能しない。


最初に見た時みたいにテレポート系の設備や魔法遺物で逃げられないように、転送系術妨害の結界を最初に張りはするみたいだけど効果は40分持つかどうか、てとこ。そんな余裕はないんだ。


各ブロックごと制圧突破して、カトウがいると想定される深部エリアに3隊ある『深部制圧隊』のいずれかを速やかに突入させる。それが今回の作戦。

私達、というか私達が露払いするモルテマ坊っちゃんはその1隊だ。


よ〜し、ちょっと可哀想な経緯の同じ来訪者でもっ。行状と、ノッコをボコボコにして拉致ろうとしたこと! 見過ごさないからっ!


···衛兵団による魔法道具を使った転送妨害の結界が展開された!!


同時に飛行絨毯隊が空中から攻撃しまくって突入経路を確保するっ。


「11小団(しょうだん)、突貫!!」


私達の小団だっ。後ろに配置されてるけど周囲の物陰から、衛兵の人達を先頭に施設へと突入を始める!


城壁外に配置されてるのはトイトイゴーレムより大きな古風な争乱期のゴーレム群! 現代的な兵器は装備してないけど大きな個体が多く、頭部から溜め動作後に熱線を撃つ能力があった。


でも飛行絨毯隊の奇襲でだいぶ減って損耗しているっ。衛兵の人達が数と勢いに任せてガンガン破壊してゆく。

後続の私達は突破する中で左右や後方から追い縋る相手への対処するだけ。それも殿隊や左右に付いてくれてる護衛隊がいるから、今の段では取り零しに少し対処するだけだった。


「城壁、越えるぜっ!」


「坊っちゃん短気起こさないでねっ、まだだから!」


「考慮するっ」


「ボクとカズネは流れ弾に気を付けましょう」 


「うん!」


「ノッコは足場踏み抜かないような!」


「えーっ? どうしたらいいかわからーん!!」


城壁を突破! 敷地内に入ったっ。中は武装したオーク族と黒い影みたい犬、『ブラックドッグ』が守ってる。

これも飛行絨毯攻撃で減って損耗してるけど、ゴーレムより臨機応変で、ブラックドッグは速い! あとワンちゃんだから姿勢低いのやり辛いっ。


前衛の衛兵の人達が手間取り、左右や後方にも回り込まれがちになってきた!


「ここで1回、ふんぬっ! を入れておきましょう」


ナンクゥーはグリーンポーションをドリアードに振り掛け、自身と呼応させた!


「眠りの、百花繚乱」


輝く粉と共に花吹雪を吹かせ、周囲の8割方のオークとブラックドッグを眠らせた! しゃっ。


11小団は一気に私達のルートで屋内に雪崩れ込んだっ。

通常の攻略じゃないからここからのトラップ対策は中々豪快だった。


ズバリ、召喚系能力の団員が群体系使役モンスターを喚び出し、物量で罠を発動させまくりつつ破壊してゆく! 管理できないから長くは残らないはずの毒ガストラップは風魔法で後ろから散らすっ。

内部には使用人としても働いてたらしいゴブリンと、狼商人が使ってたものより簡素な機械化ゴーレムも配置されてた。これも物量でガンガン押してくっ。硬いゴーレムは群体相手にまごついたところを衛兵の人達が仕留めてく感じ。


「ヒロ兄っ、今のところ、大体凄いマラソンしてるだけだね!」


「ああ。ノッコ、ポーション飲んだらいいよ」


「ふひーっ、助かるぅ〜。長い距離走るの苦手や〜っ」


「くぁ(あくび)···吾輩、退屈してきたぞ?」


「坊ちゃま、そんな感じで油断しまくって1回封印されたんだから、堪えて下さいよ?」


「うっ···2度と、同じ手はくわないし···」


モルテマ坊っちゃんには大人しくしてもらいつつ、群体系モンスターを消費しながら私達は進んだ。


団全体としては他にも深部制圧隊が2隊あるけど、他の団の動きはちょっとわからない。


でも、わからなくても、私達は私達のルートをゴリゴリ掘り進むだけなんだ!!

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