50話 深部攻防
→→→→→カトウターン
···ポーションや魔法で簡単に体力が回復するデタラメな世界だが、さすがに疲れた。
廃棄品と有用品が入り交じる深部の部屋で、『万能錬成機』『万能組み上げ機』『万能解体機』等を操り、超低温を保った2つのヒヒイロ硬化グラスケース内でわずかに蠢く『機械の巨人の指』に少しずつ必須素材やパーツを供給し、補修してゆく。
森の遺跡の騒動で予定が狂った。機神教のヤツらの催促もうるさい。
私が操作できる争乱期の希少素材やパーツを再加工するには手間が掛かるが、そもそも素材やパーツの在庫が不十分では話にならない。
『争乱期遺物超感応』が私のチートだ。争乱期の魔法遺物を自在に操れる。
準備があれば文字通りチートだが所詮はクラフト系能力。戦闘系チートには敵わず、馬鹿みたいに鍛えた戦闘型の原住民にも勝てない。上位のモンスターの中にも異常な個体が多い。
私は早くに悟った。
これは『自衛手段程度』だと。
工夫すれば地球に還れそうなスキルでもあったが、私が冷遇され破滅させられた世界に戻るつもりはない。どうも過去の記録や他の連中の動向を探る限り、向こうじではこちらで高めた力は持ち越せないようだしな。意味ないだろ?
別の時代や世界線にもゆけるという話もあるが、地球ごときの固執すること自体が不愉快だった。
「···」
少し目眩がする。
別施設で製造を自動化させているゴーレム兵の量産は間に合いそうだが、連中が信仰している『神代の機械生物』の部位再生はまだ2割にも満たない。
こんな化け物なんのつもりか? というのが正直なところだが、相当な報酬が入る。加えて技術の流用も可能だ。ヤツらにコレを売った情報自体、交渉材料になる。
今の体制を築けるまでに少々派手に振る舞い過ぎた。別の大陸で仕切り直すにせよ、金と、交渉材料は必要だ。黒血同盟とはここまでだな。ビリアファミリーに目を付けられたはずだ。
クソ吸血種族どもを殺しまくる鉄砲弾の代わりはいくらでもいる···
「休むか」
『機神の二指』の復元作業を一旦止め、俺は霊薬を飲み干し、側に置いたロッキングチェアに座て『改造し小さく組み直した争乱期のただの目覚まし時計』を15分後にセットして目を閉じた。
不安材料は多い。
出入りの獣人商人と連絡がつかず、嗅ぎ回り出したギルドや衛兵対策に水晶通信で黒血同盟の連中を呼び付けても、ミノベとかいう新人がモルテマの売却に手間取ってるから明日まで都合がつかない、等と抜かしてきていた。
「チッ、役立たずどもっ」
苛立ったが、あまりにも疲れていて、すぐに眠りに落ちた。
······血の部屋、拘束、採血管、大量の増血ポーション、早々に壊れた理性、廃棄決定され植物系吸血種族と商談する施設管理者、ストックされた俺の血を吟味する吸血種族。部屋に、たまたま置かれていたなんの特殊効果もない争乱期の骨董柱時計。
初めて見た争乱期の品。出来るとすぐにわかった。理解が理性を呼び戻した。
砕け散る柱時計、全ての部品と破片は自在に飛び交う小さなナイフと化した。
それは、殺戮の渦を起こした。
この時点では俺は、自分の能力を骨董品を念力で操る能力だと誤解していた。
それでも私は嗤った。これで、全部取り返せると。
「ハッ!」
この感じ、結界か? 警報が鳴り、設備の自動解析装置がテレポート封じの結界が張られたことを示した。襲撃も知らされ、爆音と地響きも起こった。
テレポート封じまでする相手が地下の通路を押さえないワケはない。
今は昼間で、探知された強襲者の規模はそれほどでもない。地方の衛兵団の寄せ集めと冒険者ギルドの連中だろう。
B級以上主体なら為す術なしだが、自分はそれ程の大物ではない。
「今度も乗り切ってやる!」
私は探知機器の情報を必死で読み解き始めたっ。
→→→→→妹ターン
あれ? 途中まで快調だったんだけど、なんか急に敵の動きや配置が的確になったり、大雑多に撃つだけで殆ど機能してなかった『設置砲』もキッチリ狙い撃つようになってきて、破壊前にトラップが作動しまくり! 明らかに狙って采配されるようになっったから、進行速度が鈍ってきたよ。
段々先陣を切る群体モンスターが減って、ルートを変えるか? 陣立てを変えるか? いっそ、モルテマ坊っちゃんをもう投入して私達の団は陽動に専念するか? 仕切り直しを考えなきゃならなくなってきだけど、
カシュンッ。
いきなり施設の魔力灯の明かりが落ちて、またすぐ復旧すると、設置砲が敵同士で攻撃を始め、ゴーレム達の統率が乱れ、ゴブリン達のリーダー格達が水晶の通信機器を手に困惑しだした。
「『設備掌握隊』が上手くやってくれたようだ! 一気に詰めるぞっ」
間諜やギルドの調査部主体の隊だ。たぶんミノベさんもそこにいる。魔法とかあるなりに機械化するってことは工学的に無力化されるリスクもある、てことなんだろね。
「···吾輩、眠くなってきたから1回棺に入っていいか?」
自分の影から出した棺に入ろうとしだす坊っちゃんっ。
「寝ないで坊っちゃん! 棺運ぶの大変だしっっ」
だいぶ飽きてきちゃったモルテマ坊っちゃんを宥め、勢いを取り戻した私達11小団はさらに進んだ。
そうして、深部手前辺りで、体内に争乱期の魔法遺物を埋め込まれた正気を失った様々な種族の兵達が待ち構えるエリアに入った。
「酷いっ」
「ノッコもこうなりかけたんだな···」
「こんなん嫌や!」
既に召喚した群体モンスターはほぼ使い切っていた。
「深部制圧隊は先へゆけ! ここは我々が引き受けるっ」
「任せたぜっ」
「せめて安らかにしてあげて下さい」
私達は護衛隊と殿隊だけ連れ、この場は衛兵団主体の大半の人達に任せ、改造兵のエリアを強引に抜けた!
護衛隊と殿隊は振り切れず、半数くらい置いてくことになったけど···
そのまましばらく敵のいない、罠もない、通路を進むと、遠くで他の隊も深部を目指してそちらは交戦しながら進んでいる音と振動と気配がしだした。
「クク、競争であるな。お前達の仕事もすぐ先までであるようだぞ?」
徐々に魔力を高める坊っちゃん。
実際の少し進んで、カトウが作業していると想定される部屋の一段前で、私達の『最後のお仕事』が現れたんだっ。
超大きい『ムカデ型機械化ゴーレム』が2体も!!
「これはこれで面白そうだが、先へゆかせてもらう。···こんな玩具に殺されんようにな! ククク」
モルテマ坊っちゃんは血の吸血ゾンビ群を爆発的に影から喚び出し、それを津波のように操って、波乗りする感じで巨大ムカデ型ゴーレム2体をすり抜けていった。
猛烈な機銃、熱線、電撃、火炎なんかを撃たれまくってても吸血ゾンビ津波を盾にして強引に抜けて行っちゃったよ。
「護衛隊と殿隊は1つの隊になって1体引き受けてくれっ。俺達はもう1体を叩くから!」
「坊ちゃまを追おうとしてる! 急ぐぜっ?!」
「やっぱそうなっちゃうかっ、ナンクゥー足止めお願い!」
慌ただしく、反転しようとしたムカデ型ゴーレムと私達の交戦は始まった!
「花天月地、百花繚乱、鉄荊」
「ウチの後ろは安全やでっ」
ナンクゥーが出した鉄の荊で1体を縛り、ハードシェルを構えたノッコの後ろに控えてヒロ兄とボルッカが突進。
私も魔法式を編み上げた! いい仕事しちゃうぞっ。




