37話 怪鳥モー・ショボー 中編
→→→→→ずっと妹ターン
ナンクゥーの夜光花で照らしてもらいながら私達はヨス村を駆け、自警団に続いて現地に向かった。
他の村人は夜光花とノッコの足音に怯えて窓や戸口から様子を見ている。
「ここです!」
「もう飛び去ったっ、他に怪我人はいないが···」
先に来ていた自警団は悲痛な表情。窓どころか窓枠周辺の壁までブチ抜かれている。凄いパワーと大きさ! モー・ショボー本体は成体ても人の子供くらいのはずだけど···
中に入ると無残な男性2人の遺体があった。眉間を割られて中身を抜かれている。若い独身の兄弟らしい。
「カズネ、回復魔法じゃ無理···だよな?」
「うん。遺体が新しいから綺麗にはできるけど」
即席ヒーラーの私。ここまでの状態の人体は直視し辛いよ···
「蘇生所のある町まで運んでも、費用がない。それに脳が無いと難しいんだろ?」
先にいた自警団の1人が聞いてきた。慎重に応えないと。
「難しいです。蘇生させても元通りにするのも難しいし···あと、このモンスターの性質的に、相手を早く倒して魂を取り返した方がいいかも···」
「モー・ショボーめっ」
「許せねぇ!」
自警団の人達が段々ヒートアップしてくるっ。
「もう村中の女を監禁して監視するしかねぇ!」
「人の皮被ってんだろ? 腕を切って確かめようぜっ? 傷は助祭様か冒険者に回復させりゃいい」
「よろず屋がポーションをタダでよこさないのが悪いっ。アイツが手引きしたんじゃないか?」
「前に村に来た踊り子に首ったけだった! あの女、怪しいっ。よろず屋をタラし込んだに違いないっ」
「よろず屋を吊るし上げろ! 踊り子を匿ってるぞっ」
ちょいちょいちょいっっ。なんか『よろず屋』とか『踊り子』とか新ワード出てきてるしっ。
「ちょっと皆っ、落ち着い」
「吊るし上げはともかく、一度全員集まってはっきりさせるというのはいいかもしれないッスね」
軽く流れに乗っかりだすヒロ兄っ。
「ヒロ兄?!」
「オイラ達来たのに思ったよりモー・ショボーが止まらねぇし、いつ逃げられても不思議ねぇ。とっとと纏めちまった方がいいかもしれないぞ? 踊り子に関しちゃそれらしい捜索願いがここらで1件あるにはあるしよ」
ボルッカも小声で私に言い出した。う〜ん?
ここからの自警団の人達は凄い勢いで、村中の人を教会兼治療院の前の広場に集めた。篝火も焚かれたけど、明かりの足りない所にはナンクゥーが夜光花を配置している。
怪我人と子供と老人以外の女性は一ヵ所に集められて怯えてる。
よろず屋さんは問答無用に縛り上げられていた。既に結構小突かれてるみたい。うわ〜···
「勘弁してくれっ、俺がなにしたっていうんだ?! ポーションも今は原価ギリギリで売ってるだろっ?」
「モー・ショボーを手引きしたろっ?」
「踊り子だ! 踊り子に化けた女を引き入れたろ?!」
「知らないっ」
「白状しろぉーっ!!」
「コイツぅっ!」
自警団の人達、よろず屋さんをボコボコにし始めたよっ。
「ノッコ」
「うん。あかんて皆。やり過ぎやわ」
ヒロ兄に促され、自警団の人達をぬいぐるみかなんかくらいの勢いでポイポイ掴んで投げて引き離すノッコ!
「うおっ?? オーガ女!!」
「デカいっっ」
「力強っ」
私はすぐ駆け寄って、取り敢えず新しい打撲だけだったから軽くサティマで鎮痛してアティで回復した。自警団の人達を刺激したくないから拘束はそのまま。
「まぁ落ち着けって。ちょっと確認させてくれっ、その踊り子、てのを最近見たヤツはいるかい?」
ボルッカの呼び掛けに全員、応えられない。
「じゃあ、モー・ショボー騒動が起きる前に、なにか異変は? よろず屋を含めて。なんでもいい」
ヒロ兄も呼び掛ける。これに1人手を上げた。
「あなたは?」
「俺は村の大工だ。そのよろず屋とはたまに酒を飲む。騒動の少し前、いつもの酒場で飲んでたらよろず屋が酔っぱらって店に来たことがあった。どうも女の所で飲んできたらしく、香水の臭いがした。その時、『天国の女』がどうとか言っていた」
ざわめきが起こる。
「違う! いやっ、待ってくれっ。正直に言うっ。踊り子には会った!! だが違う違うっ」
なになに? 全員の注目がよろず屋さんに集まるっ。
「その、仕入れの帰りに、街道でたまたま例の踊り子に会ったんだ。村の近くだ。それでその、『いい酒がある』ていうから、その···村の城壁の外に作業小屋があるだろ? そこでまぁ、『御馳走になって』それだけだよ! 女は村に引き入れてないっ」
ええ〜?? 自警団の人達はまた殺気立ってる。
「だから一々物騒になんなって。あんた、その女になにか話したかい?」
ボルッカが自警団を諌めながらさらによろず屋に聞く。
「話す? いや、あの時は酒を飲んで、ぽわ〜っとしてたから···あ! しつこく村の城壁のこと聞くから近々城壁の一部補修がある。て大工のアイツから酒場で聞いたと、話した気がするっ」
全員の視線が今度は大工さんに集まる!
「俺?! いや、そんなの世間話だろっ?!」
「いやっ、お前が悪い! あの女がモー・ショボーならそれに当て込んで村に入って来やがったんだ!!」
「お前がタラし込まれるからだろうがぁーっ?!」
「俺が吊るされるならお前も吊るされろーっ!!」
「絶交だコノヤローっ!!!」
大工さんとよろず屋さんで罵り合いになっちゃったよ。
ええと、整理すると。
『モー・ショボーは踊り子に化けられる。でも目撃者は無し。これは中に入ってから目立つ必要ないからだと思う』
『大工さん経由でよろず屋さんが村に入り易いタイミングとポイントを相手に知らせちゃったけど、この2人が直接手引きした感じでもない』
て、とこかな?
ヒロ兄とボルッカは反感買わないように交代で呼び掛けたり質問したりしなが、たぶんよろず屋さんへのリンチを回避して、でも別の所に気を張りながら様子を伺ってるみたい。
ノッコは指示があればすぐ動ける体勢。ナンクゥーもドリアードとブラウニー両方出して、準備してる。
もうこの流れで決着つける感じだよね? 朝から順番に確認していってその都度するはずの意思確認ができてないから不安だけど、私は腰のウィッチウィップの留め具のボタンをそっと外した。




