34話 竜騎士と治癒魔法
→→→→→兄ターン
モグラ退治でガッポリ稼いだ俺達はちょっと余裕ができた。
そこで俺は物の試しに竜騎士職にクラスチェンジを狙ってみることにした。やるだけやるさ。
因みにカズネは「実績やステータス的にC級だが攻撃魔法ばかり覚えて片寄ってる」とギルドに突っ込まれ、治癒魔法の習得を目指すことになった。
ボルッカはなにやら自主練。
ナンクゥーは再び精霊使いの教官に呼び出し喰らってた。
ノッコは普通に休暇かな? 吉田ハウスにいるみたいだ。
「···ここか」
俺はギムリーの外れの養魚なんかをやってる区画にある家にやってきていた。古びた家の近くの草地に片足で乗れるくらいの様々な長さの柱が何本も建っていてそこだけ奇異だった。
「すいませーん! 冒険者ギルドの紹介で来ましたっ。竜騎士志望のヒロシ・タキガワです!!」
ノックしても反応がないので呼び掛けてみた。
やっぱり反応···おっ?! 上っ!
気配を感じ、頭上を見ると、平服に刃の無い鉄槍を構えたフェザーフット族の爺さんが勢いよく降ってきた!
「だぁっ?!」
回避するっ。避けた地点に魔力で強化した槍が直撃し、抉れるっ! 衝撃で玄関のドアもぶっ壊れた!! オイオイっ。
爺さんは槍を使ってエアステップして、さらに飛び上がり、もう一段飛んで、草地の柱の1つに降り立った。
「よく来た!『モグラ狩りのヒロシ』よっ。私は竜騎士職の教官、マッシモ・オッシモ!! 玄関の修理は後回しっ。まずは私から1本取って見よっ」
柱の上で歌舞伎みたいなポーズをしてくるオッシモ教官!
「いや、ネオ山梨、元気な爺さん多いなっ」
俺は背の収納鞄からショートグレイブを抜き、エアステップで草地の柱の1本へと跳びだした!
→→→→→妹ターン
私はギムリー支部の教官室の一部屋に来ていた。ギルドに色々言われて、町の魔法書屋で回復魔法の『アティ』を覚えようと思ったんだけど、攻撃魔法とやること真逆過ぎて上手くいかなくて、回復系魔法の教官シャウシャル先生に指導を受けることになった。
有料で! 結構お高い値段でっ。
「最初に言っておきましょう、わたくしは『転生パターン』でこっちの世界に来た来訪者です」
白人系ロングフットのハーフエルフらしいシャウシャル先生はお茶を出してくれたあとで藪から棒に言ってきた。
「ごほごほっ」
むせる私。
「しかも転生までして無能力者でした。記憶が戻ってからはそれなりにショックでしたが、ハーフエルフはやたら寿命が長く、魔力もそこそこ強く知力も高く見た目もエレガントだったので、20年ぐらいの葛藤の後、『これも現実』と結論に至りました」
「結構掛かりましたねっ!」
「だって普通、聖女かな? 悪女かな? て思いますでしょう?」
「ですよね〜。私なんてロッカーになんか禍々しい感じで吸い込まれて、そっから食堂の手伝い、掃除の仕事、蜂に追い掛けられて、顔グニャグニャの犬に追い掛けられて···」
「ねーっ! わたくしもわたくしもっ。なにかイベント始まるのかな? て思ったら13年くらい?『結構高く売れる魔法の糸を織る仕事』を延々手伝う日々で、もう途中で織り機を、うぅーんっ!! て蹴っ飛ばしそうになりましたわっ」
しばらく『全然それっぽくならないネオ山梨ライフ』に関する愚痴を言い合う私とシャウシャル先生!!
だったんだけど、
「はい」
手をパンっ、と叩くと急にクールな表情になるシャウシャル先生。
「お喋りはこれくらいにして、魔法書を開いて下さい。人体の構成に関し」
「いや急にレッスンですね?!」
「言ったでしょう? これも現実、と。ましてあなたはお兄様と地球に帰らんとする者。回復魔法の1つくらい覚えなくてはいけませんね」
シャウシャル先生は足元に魔力で魔法陣を描き、『山程の野菜くず』を召喚した。
「野菜のくず、ですか??」
「回復してみせなさい」
「へ?」
「野菜くずが傷んでしまう前に、アティの魔法で元通りの瑞々しい野菜に回復してみせなさい。まずはそこからです」
「え〜っ??」
いきなり高難度過ぎませんか? というか、温度差激し過ぎて動悸がっ。
私は冷や汗をかきながら、刻一刻と傷む野菜くずの山を前にマティな魔法書を読み込みまくった。
···『野菜くずを元に戻す方法』とかどこにも書いてないですけどっ?!




