21話 オーガ村へ
→→→→→兄ターン
さて、改めて4人で出発する準備は整った! 俺達はまずオーガ族の村バーデラの単純な討伐クエストを1本受注して、行ってみることにした。
少し贅沢をして、渡り場以外でも途中まで乗り合い馬車を使ってみる。
渡り場用の馬車と比べると華奢な物で、地球の北海道辺りにもありそうな感じ。座席は板の長椅子が2脚どーんと固定されてるだけ。
ただすっかりネオ山梨に慣れてしまった俺達瀧川兄妹は、
「うおーっ、椅子だぁーっ!」
「歩かずに移動できるなんてっ、進歩的だね! ヒロ兄!!」
まぁはしゃぐよ。
「お前ら、他の客もいるから大人しくしろ」
「じゃあ花吹雪を···」
「なんの『じゃあ』だっ、あちこちで色々するのやめろっっ」
とにかく乗り合い馬車は最高だった。
···そんな楽しい乗り合い馬車の旅も半日で終わり、俺達は野営地で、他の客達を乗せ近くの村に向かう乗り合い馬車を見送った。
「ありがとう馬車!」
「カムバーーック、馬車!」
ちょっと追い掛けたくなる瀧川兄妹。
「···さ、ここの野営地のスライム式トイレの状態確認をしましょうか」
「そこは切り替え早いのな」
幸い野営地に他の旅人はいなかったのと井戸もあったから、そこそこ遠いバーデラまでもう一泊しなきゃならないし、持参の布とロープと東屋の柱を使って目隠しを作って、お湯で身体を拭くくらいはすることにした。
さっぱりしてから滋養円盤にスープの簡単な夕食を取る。
「ボルッカ。オーガ族ってどんな感じだ? いや資料では知ってるけど」
「デカい。あといつも腹ペコだ。滋養円盤で交渉できる。交渉用に200枚買い溜めしたかんな?」
「へぇ〜?」
「滋養円盤硬くて苦手です」
「私、なんか慣れてきて、美味しくないのかなんなのか? よくわかんなくなってきた」
「···」
若干カズネが不憫な兄なのさ。
→→→→→妹ターン
岩場が多くなってくる中、強いモンスターが出るっていう渡り場は避け、私達はグルっと大回りをして行商の人達もいた別の野営地でもう一泊し、その先のちょい強いけどいけないではないモンスターが出るらしい渡り場に挑むことになった。
近くに郷がなくて魔除けの馬車は使えないけど、距離的にはたった2キロくらい。真ん中に緊急避難用の小さな野営地が1つ。
「ボルッカはナンクゥー。俺はカズネと組むか」
「今回は金に余裕あるし、一気に抜けちまおう」
「了解!」
「いいでしょう」
温存しっぱなしで古くなってきてる聖水もヒロ兄達2人に集めることになった。瓶の仕様次第だけど基本的には効力は段々下がるっぽいから。
私達は渡り場に駆けだした! GO!!
すると、気配! 足音っ。右手側っ! いる! 牙だらけの牛並みの大きさの猪のモンスター『ファングビースト』が3体!! 蹄で地面掻いてるっ。
「ヤバそっ、ナンクゥー! 眠りの溜め頼む」
「ゴブリン退治の時とはパワーが違いますよ?」
「アレ、加速するとマジぃぞ?!」
私は特に追加指示ないから、ムートの魔法式を練るっ。ここ小石が多いから!
ファングビースト3体は私達が中間野営地に引っ込まずに抜けると、一気に突進を始めた!!
「ムート!」
私は念力で、周囲の小石を次々とファングビーストに速射したっ。んんん?? 牙はいくらか砕いてスピードは落とせたけど、1体も倒せない! 硬っ。
「眠りの、百花繚乱!!」
ある程度距離を縮められたところで花吹雪と催眠花粉を放つナンクゥー! 1体は眠らせて派手に転倒させ、そのまま眠らせたけど、あとの2体は耐えたっ。
「オイラは聖水投げる暇ないなっ」
走りながら必死で癇癪の実をパチンコで撃って牽制するボルッカ!
だいぶ距離を稼げたけど···走りながら私とナンクゥーがもう一撃魔法や特技を使うのはちょっと大変だ。癇癪の実に耐え、ぐんぐん近付くファングビースト2体!
ヒロ兄は聖水を3本気前よく逃げ付けて2体を青い炎で怯ませると、
「ド根性っ!!」
私にショートグレイブを押し付けると、右腕でボルッカとナンクゥー。左腕で私を抱え、たぶん魔力を足に集めていきなり高く飛び上がった。ええっ?
さらにエアステップスキルで、2段、3段、4段、5段と宙を跳び、そのまま渡り場の先の魔除けの街道の端に着地した!
「だぁっ! 思ったより遠かったっっ」
バテバテになるヒロ兄。ファングビースト達は寝てたのも起きて、悔しげに去っていった。
「ヒロ兄がんばった!」
「ナイスジャンプです。『運び力』も評価します」
「はぁはぁ、そりゃどうも···」
「ここのファングビーストはその内討伐対象になるだろな」
とにかく渡り場を抜けた私達。あとは真っ直ぐオーガの村バーデラに行くだけだね。




