19話 先輩
→→→→→兄ターン
数日後、俺達瀧川兄妹は無事、もらった奥義書と魔法書を修得! ゼゼシュ郷の人達に郷の広場でお披露目となった。まずは俺だっ。
「よっ、ほっ」
取り敢えず木剣片手に宙を飛び跳ねる。やんやの喝采(拍手はネオ山梨でも変わらず。ただ笑う時に特に手は叩かないっぽい)だ。完全に大道芸···
「ボルッカ! いいぞっ」
「よしきた」
ボルッカが小石を俺に投げ付けだし、俺は宙で飛び跳ねながら木剣で払う。また喝采。最後は大きく飛び跳ねて、魔力を込めた木剣で等身大の藁人形を真っ二つにして、二重に展開した魔力の足場をバネ状にして接地の衝撃を和らげ、距離を取って飛び退き、着地した。
大・喝・采っっ!!
もうこれで食べてけそうだ···
ま、ともかく、次はカズネ!
「ムート!!」
カズネは積んだ小石を念力魔法で操って数個ずつ高さ距離包囲がバラバラの的の中心に当てまくりっ、さらに積まれた知恵の輪十数組を念力で次々と解き、最後はドリアードで花吹雪を撒くナンクゥーを操って宙を円形に一周させ、これまた大喝采を浴びた。
最後にナンクゥーも防具を付けて木の小剣を一本持ち、すっかりコーチ役のボルッカに「気張れ」等と激を飛ばされながら、布巻きの棒切れを持たせた小型素焼きゴーレム3体と対決したんだが···
まぁポコポコ殴られながらもゴーレム1体は魔力の高さからくる『ブッパ攻撃』で粉砕したんだが、そこまでに殴られ過ぎて、最後に一撃っ革張りの兜の頭をゴーレムに小突かれると、
「痛いのですっっ!!! ふんぬーっっ」
半泣きで使用禁止のドリアードを暴走させ、巨大花の蔓でゴーレムを叩きのめし、そのまま暴走が止まらないからその場の全員が焦ったが、
ザシュッ!!!
『しゃもじ』に魔力を乗せたナンクゥーの姉さんが巨大花を全て仕留め、後は後は郷の魔法使い達総出でナンクゥーとドリアードに眠りの魔法『オルベン』を掛けて眠らせ、事なきを得た···
「やればできる子なんだけど···」
「ギルドの教練所に連れてく前にもそっと基礎練させねーとな···」
苦い顔のお姉さんとボルッカだったが、お姉さん何者??
→→→→→妹ターン
なんだかんだで、ゼゼシュのみんなで百花繚乱亭の裏手を会場にして、夕方から送別会を開いてくれた。
寝てる間に回復魔法とポーションでダメージを全快させて着替えさせてから目覚めてもらったナンクゥーは、まだ熱があったからドリアードに氷嚢(スライム皮)を持ってもらいながら、好物らしい蜂蜜アイスクリームを姉さんに作ってもらった、小さい桶に入ってるのを匙でエンドレスで口に運んでる···
「ナンクゥーの姉さん、ヨンクゥーさんはもとB級冒険者の剣士職だったんだよ。今は地元に帰って家業継いで、結婚もしたようだがよ」
「ああ、そう言えばお子さん2人がいらっしゃるよね」
ちょっと東洋っぽい雰囲気もあるけど、小さくなったお姉さんみたいな双子ちゃんが百花繚乱亭にはいた。民宿だからちょいちょい顔を合わせるんだよね。
「旦那さんはどんな人なんだ? いつも忙しそうなのと、基本的に厨房担当だから後ろ姿しか見てないんだが」
串焼き食べながらヒロ兄も話に入ってきた。
「そういやオイラも知らねーな。確か郷の連中は真面目だけどシャイって言ってるけどよ?」
「ふーん? よし、カズネ。明日には出立だし、挨拶行っとくか」
「え? そうなんだ。いやいいんだけど。あ、待ってヒロ兄っ」
ずんずん宿の勝手口の方に歩いくヒロ兄。こういうとこあるんだよね! 私とボルッカはあとに続いた。
ヨンクゥーさんの旦那さん、と思わしき男性は今も厨房で忙しく働いていた。バンダナをしている。たぶんロングフット族。私達は顔を見合わせ、
「あの! ヨンクゥーさんの旦那さん、ですよね
?」
ヒロ兄いったっ。
「はい?」
振り返ったのは中年の、アジア系の風貌のロングフット族···いやっ、日本人に見える!
「えっと、ヒロシ・タキガワです」
「カズネ・タキガワです」
「ボルッカ・ティティスだぜ」
「あ、こりゃどうも。ご挨拶が遅れました。シンイチ・サミアンといいます。ヨンクゥーの···夫です。はは」
照れ臭そうなシンイチさん。でも、シンイチ?!
「あのっ、シンイチ、さんって」
「ええ、僕も来訪者です。と言っても僕は地球に帰ることをやめてしまいましたが」
「ええ···」
思わず声出ちゃった。
エプロンしたゴーレムが仕事を手伝う、スパイシーな料理の匂いと熱気の立ち込める厨房で、ほろ苦い顔で、でも意志のある目で、10年は先にこの世界に来たシンイチさんは私達を少し眩しそうに見詰め返していた。




