16話 一仕事
→→→→→兄ターン
「元気でねーっ!」
「帰りにすぐ寄りますし。でも、行ってきます」
なんだかんだで、百花繚乱なナンクゥーを仲間にした俺達はお姉さん達に見送られゼゼシュを出発。
そこからネルドーアの森をグルグルと回り道してゆく。
中間域に近付けば近付く程森の魔力は増し、林道の周りの風景はファンタジー度を増していった。
魔力の高まりによる発光現象。増えるモンスター未満の不思議生物達。植物の性質の小妖精グリーンピクシーに土の性質のブラウンピクシー。
使役されていない植物の精霊ドリアードもチラホラ。基本形は中性的な根、球根、茎、葉の特徴のある人形のような姿だが、物によっては草感強かったり蔓っぽかったり苔やキノコ、場合によって粘菌っぽいのまでいたりして『植物』の定義はざっくりしてるようだった。
土の精霊ブラウニーもいた。これも基本形は人形っぽい土くれだが、砂、泥、石、金属とバリエーションがあった。
「段々魔力に当てられて酔っ払いそうだな」
精油や発酵した土、花々、果実のニオイも強いんだよ。
「私、髪の毛逆立ってきてるよ!」
「次の野営地でゼゼシュで買った魔力酔い止め飲んどこうぜ?」
「ボクはむしろ調子いいです」
「「「へ〜」」」
ナンクゥーはハーフエルフだがストレートのエルフより魔力が強いレアケースなんだろな。
それから野営地でケロっとしてるナンクゥー以外は魔力酔い止めを飲み、気長にファンタジーな森の中夕方、どうにか目当てのエルフ族の村、ヤーシュにたどり着いた。
暮らしぶりはゼゼシュと似て素朴そうだったが、服装が古風で建物の装飾が凝ってる。使役してるゴーレムは素焼きではなく磁器で、シュッとしたデザインだった。
ここも農地は分散系だ。
共生してるらしい様々な系統のピクシー族もいくらかいた。
でもって、なにより!
「耳、長いっ!」
「『美形度』が芸能界!!」
ネオ山梨のエルフは耳がよく動き、やや小柄だった。魔力が強く賢く長命なのはノームと同じだが、自然との結び付きが強くその分、体力に難のある種族らしい。
「お前ら、ほんとエルフに関心あるよな···」
「村長のとこにゆきましょう。ボクの初陣です」
まだクエスト解決してないが、もう済んだ風にクールなポーズで花吹雪を散らすナンクゥーに促され、俺達は依頼人である村長の家に向かった。
→→→→→妹ターン
「D級冒険者で来訪者ね。で、ナンクゥーと···」
年齢不詳の迫力ある美人だったヤーシュの村長は二通の紹介状を手に言って、煙管煙草の煙を吐いた。セクシ〜。
「ま、とにかく一仕事しなさいな。話はそれから」
「了解です!」
「私達、いい仕事しますよっ」
「ま、普通にD級討伐クエストだ。普通にやるぜ」
「咲かせます。ふふ」
まずは一仕事となり、ヤーシュの宿に一晩泊まって、翌朝から村の自警団と組んで村の周囲で増えた下級モンスター退治となったよ。
ここはネルドーアの森の中間域だから本来モンスターは強いんだけど、村の城壁ギリギリまでそんな感じだとちょっとしんどいから、周囲には下級モンスターはすり抜けるけど強いモンスターは弾く縛りの魔除けの杭が打ってあるんだ。
両方対策すると結局コストが高い魔除けの城壁を拡大しなくちゃダメになって現実的じゃないから、村の周囲は簡易に済ませてあった。この杭、耐久値は低いみたいだから『エルフの縄張りを主張する』ことが主な目的みたいだけど。
「我々は裏門から反時計回りで。そちらは表門時計回りで。村の東側は大してモンスターは増えてない。クエスト外だ。合流ポイントは『ゴブリン』どもの頻出地。問題無いな?」
「わかった。追い込んで、同士討ちな」
自警団長のエルフ相手に緊張した顔のヒロ兄。
作戦は私達と自警団でゴブリン以外の下級モンスターを追い立てて、追い立てられた下級モンスターでそこそこ厄介らしいゴブリンの棲み処を挟み撃ちにして、消耗させ、最後に一気に叩く! という物。
ファンタジー名物のゴブリンだけど、エルフ達は近くに棲み処を作られて相当ストレスみたい。
「実質ゴブリン退治だったな。こういう現地に来てみると、ちょっと話違う。みたいなのはわりと多いからよ」
「話せるんだよね? 人型のモンスターはちょっとしんどいかも···」
「カズネ。ゴブリンはエルフを拐って奴隷商に売るから、ギルティでOKです」
フレミングの法則みたいなハンドサインしてくるナンクゥー。ネオ山梨的なサムズアップらしい。
「やるだけやってみるよ」
ずっとそうしてきたし、地球に帰れたら放送部の大会にもエントリーできそうな気がする私だった。




