約束26ー気づけるかー
お待たせしました、どうぞー
貴族たちの反応に苦笑しつつ
小首を傾げ大事そうに絵を抱えるミリアは、アルレシオへ話を続ける
「陛下?僭越ながら申し上げますと、このような場でフィオレンティーナをお探しになるなど無意味かと・・・」
「なに?」
「だって、生前フィオレンティーナが好んでいた食べ物や、好んだ色、芸術品など皆存じ挙げておりますわ」
「・・・」
「その情報量でお決めになるのですか?それでは、それが本人かどうかなど関係の無いものではありませんか?」
「それは・・・」
「そう例えば、幼いフィオが好んで過ごした離宮の湖畔で見つけたただの石のコレクションであったり」
「石?」
「ただの石?」
ぼそりと貴族の席より声が上がる
そんな中ほほ笑みミリアを見つめるニーナ
「幼いフィオが好きに書けばいいと言われ、書いた可愛い猫ちゃんの絵だったり」
「え、まさかあれ?」
「あれ猫でしたの?」
芸術鑑賞のテーブルに好んでたむろしていた貴族女子からいくつか声があがる
(な、なぜ)
「ま、まて、なぜそれを知って」
(は!ルルシルか!)
きっと己の護衛を振り返るアルレシオ
だがルルシルはぶんぶんと音が鳴るんではないかというほど首を横に振る
そのやり取りを見た貴族たちは何かを察する
幼い頃から近くにいた騎士団長が己の推薦する候補者へ情報を渡したのだろうと
「ですので、この様な場は不必要ですわ」
「・・・確かにそなたの言う通りやもしれないな、私達しか知らないと思うモノを紛れさせる事により
探し当てようとしたのだが、近くに裏切り者がいたとは・・・」
「陛下!私は話してなどおりません!」
(そう、そうとるのねアルレシオ)
今になってルルシルに間を持ってもらおうとした事があだになった様だ。
ふぅとため息を吐き、茶会の解散を宣言するアルレシオ
「では、今回の茶会はこれまでとしよう・・・クルル嬢は残っていただけないか?父上に確認していただこう」
「はい」
にっこりとするクルル
陛下の宣言に逆らう事はできない、貴族たちも帰宅の途につく
そんなアルレシオを見つめ、少しさびしそうなミリアとその横顔をみるルルシル。
(フィオレンティーナ様・・・陛下、今私がこの方の話をしても信じてはいただけまい、どうすれば)
会場にいる騎士達の中、前に出ようとした者もいたが、それよりも先に
すっと前に出たのは
「・・・陛下、退城の前にミリア様と少々お話をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ん?ニーナ嬢?」
「はい、陛下、是非この王城でお過ごしになられていたミリア様に令嬢としての心を今少しご教授願いたいのです。」
「教授・・・だがその娘は・・・」
「はい、その立ち姿だけでもとても美しく、拝見しているだけでも勉強になりますわ」
コクコクといくつか壁際へと立つ侍女たちが激しく同意を示す
「・・・立ち姿だと?」
ぐっと眉間に皺を寄せるアルレシオ
現公爵令嬢ともあろう娘が庶民の娘に何を言っているのかと・・・
だが・・・
確かに振り返り見たその姿は、どこか威厳を感じさせる立ち姿
(ど、どうしたのニーナ様)
「ニーナ様?」
「ミリア様、そちらの絵はとても素敵でございますが、なぜその絵を?」
「え?あコレ?」
頂くと宣言した大きな絵の額縁をなでて
「昔から龍種が好きでしたの、どっしりとしたものもよろしいですが、羽もないのに優雅に空を泳ぐ様に飛ぶと言う細く長いものも・・・ですから、最初にうった刺繍は空へ絡み合いながら駆け上がる二頭の龍でしたわ、ふふ、でも誰にでも初めは下手でございましょう?ですから私もうまく出来なかったのです」
ふふふと苦笑を乗せるミリア
「笑われてばかりの私を不憫に思ったのでしょう、プレゼントする事はできないが参考にしてはどうかと
この絵を見せて下さったのです」
誰がとは言わないがとても幸せそうに記憶を語るミリア
「この絵の、ココ」
と絵の龍の喉元の鱗をさしつつ、ふふふーと幸せそうに触れるミリア
「この一枚だけは本物なんです!本物の龍の逆鱗が使われておりまして・・・価値なんて付きませんの!!」と胸を張るミリア
「まぁ!」本当に驚いた様子を見せるニーナに
「えぇ!素晴らしいでしょう!」頬を染めしきりに絵を褒めるミリア
そんな二人を見てふと何かが記憶に引っかかる
「刺繍・・・?龍の刺繍だと?」
(陛下!!)
「ルルシル!お前その様な事も話したのか」
グッと怒りに目を吊り上げ己の友を見るアルレシオ
「陛下、何度も申し上げますが私は誰にも私達の思い出を話したりなどしておりません」
「嘘を付くな!では何故石の事や絵!それにあの刺繍の事を知っているのだ!」
「ご本人の記憶でございますれば!知っていらっしゃるのも当たり前でしょう!!」
「馬鹿を申すなっあの娘はどこもフィオの色を持っていないではないか!」
はっとしてアルレシオを見るミリア
(アル・・・)
あんなに一緒に過ごした彼が、こんなにも私を見てくれない・・・
アルの中では私はフィオレンティーナになりえないのだろうか
では、アウレンティーニ様は・・・
彼にも私はあんな風に・・・
私は・・・耐えられるだろうか・・・私はどこにでもいる娘で
もう綺麗な髪も目もない
後数話で完結予定です!ゆっくりと仕上げてますので、もう少々お待ちください(*´艸`*)




