約束9
今日は遅番なので…早く帰れたらもう一話あげますねー
どうぞー
食堂へくるお喋りな子達が言っていた
現在城へ留まっているフィオレンティーナ有力と言われる候補は3人
その中に一人だけ、宰相推薦の庶民がいると
それは美しい大きな緑の瞳の少女が…
その少女らしき者が今目の前に…
「ミュレ嬢・・・申し訳ございませんが、アウレンティーニ様は本日お忙しくお会いになることはできないでしょう」
「え・・・どうしてそんないじわるな事言うんですか?」
ぷくっと膨らませた頬、尖らせた唇
16歳という年齢にしては幼く見えるその姿は、王城という場には少々そぐわなく感じる
なぜなら王城に入れるのはある程度の地位にある者の娘が多く
それなりのマナーを身に着けているからだ。
「いじわる・・・いえ、とにかく部屋へお戻りを、侍女と護衛はどちらに?」
ピクリと目じりが動くにとどめ優しげなほほ笑みのまま促す、が
「嫌です!一画へ向かってらっしゃるのでしょう?私も一緒に行きます!侍女なんて知りません」
今度は真っ赤に頬を染めついてくると言う
「それは・・・」
(いくら候補者と言えど、一画に容易く入れると思うとは・・・侍女を連れていない?)
早くミリアを連れていきたいルルシルだったが、この場でミュレを引き連れていくわけにも置いておくわけにもいかず、ふと二画の廊下へ視線を向けると
ちょうど二画よりこちらへ向かってくる一行がある
「ルルシル様?」
ある程度まで近寄り
すっと優美なカテーシーを見せ声をかけてきたのは薄紫の髪の公爵令嬢ニーナと紫の髪の少女伯爵家のクルルである
「このような場所で何を?陛下とご一緒ではないのですか?」
「ニーナ嬢、クルル嬢」胸に手を当て返礼するルルシル
この間、すっとルルシルの斜め後ろに下がって使用人のふりをするミリア
(候補者勢ぞろいといった所ね、この方が・・・確かに髪色は似ている、かな?)
「今から参る所でございます、貴女方はどちらへお越しですか?」
(こうなったらミュレ(この娘)を送る人員に侍女を貸していただくのも手か)
「私共はこれから二画の庭園へ行こうとしておりましたの、お声が響いておりましたので・・・あら?貴女は確か」
むっとした顔で、でも話が終わるのを待っていた様子のミュレに視線が向く、とニーナの表情が曇る
「貴女、確かミュレさんでしたか?どうしてここに?ルルシル様へご迷惑をおかけしてはなりませんよ?それに、私達候補者が出入りできるのは二画までです、この先へ行く事は許されておりません」
どうやら聞かれていた様子
「なんでですか?私は今日アウレンティーニ様とお話しできるお約束なんです!」
「・・・傍使えの者から何も聞いていないのですか?前王陛下からお声がかかるまで部屋におり、指定の場所へ向かうのが仕来りです、それに」
ふと視線をミュレの全身へ向けると
「仕来り仕来りってそればかり!今日、私は、アウレンティーニ様と会うんです!それを邪魔するつもりなんですか?」
ふわりと扇で顔半分を隠すニーナ
貴族社会での話たくない事の現れであるしぐさをするニーナ、まだ公爵令嬢である自身が話しているのに遮って声を荒げるミュレに対しての至極まっとうな動作だがミュレは理解していない
ただお高くとまった失礼な人!と考えていた
クルルがついで声をかける
「その恰好で前王陛下とお会いになるのですか?」
「え?」
「それに同伴の侍女がいらっしゃらないけど・・・」
「・・・この恰好じゃダメなんですか?」
「仮にも王族とお会いになるのです、貴女には王城が用意しているものがあるはずですが?」
「それはっだって私緑嫌いなんですもん、侍女さんも全然言う事聞いてくれないし、あの人ニコリともしてくれないんですよ?」
と優しげな雰囲気のクルルに不満を漏らす
一同絶句である
そんな中静かに事の成り行きを見ていたミリアは
(なるほど、これはびっくりね、この子も登城の際に基本的な規則は教えられているはずなのに、一画へ市民が入れることなどないし、貴族社会での序列についても、侍女や護衛がなんたるものかも理解していないなんて、まぁ突然こんな世界に入れられたらこうなるのも仕方ないのかしら?私にはフィオであった記憶があるので最初から大きな失敗はしなくてすんでるけど・・・)
「・・・侍女が仕える者へ無礼な振る舞いをする事はありません、あくまで仕事ですから
でもどう付き合うかは人となりでしょう。それに貴女の先ほどの言い分では秘密に部屋を抜け出したと言う事ですか?」
「秘密っていうか、ちょっと窓から」
「まど・・・」
(窓から出たの?!ふふっお猿さんみたいな方ね)
一人楽しげな雰囲気を出すミリアを薄目で見てとるルルシル
そこに静かにミュレに視線を向けるクルル
「侍女や護衛は、この城では常に傍に置かなければいけない存在です」
「そんなの息が詰まるじゃないですか!少しくらい自由にっ」
パンっと音を鳴らし扇を閉じるニーナ
皆の視線が集まる
「聞くに堪えません、自分より高位の者が話ているのを遮りあまつさえ窓から出て来たなどと野蛮な!」
「な!」
「いいですか!どなたもあなたに教えなかったのか、それともその小さな頭では覚えきれなかったのかしれませんが、貴族として公爵位である私が教えて差し上げます、王城で働く侍女や護衛は貴女の為のものではありません!すべて尊き王族の方方が守りたい者を守る為しいては王を守る為にあるのです、貴女が身勝手にも抜け出した場合何かあれば、いえ何もなくても貴女付きの侍女や護衛がその罰を受けるのです、その事をその小さな頭に入れておいてくださいませ、それが最低限上にあり仕えられるものの責務です!」
最初も憤慨していた様子だったミュレも、罰を受けると聞いて少し青ざめ大人しくなる
「そんな、そんな事言われても、何も悪い事なんてしてないのに・・・」
(あぁ、この子はここにいてはダメね、なぜこんな良い意味で純真悪い意味でおバカな庶民中の庶民がこの場に来ることになったのか、いくら緑の瞳と言っても)不思議と首を傾げたくなるのを我慢するミリア
「なんで、なんでそんな事で怒るんですか?意味が解りません!私はただ、ただアウレンティーニ様に会いたいだけなのに!」
ふえぇえんと廊下の真ん中で泣き出すミュレ
それを唖然とみる一同
(ニーナの言ってる事は至極まっとうよ?貴族として最初に教えられるものだわ、でも・・・きっとこの子には通じない、どんな言い方でもそれを教えてくれるのも優しさだと分かることはないわね)
とそこに
「皆、何をしている?」
アルレシオ陛下の登場である。
(アル・・・近くで見るとまた、素敵なおじ様に育って!)




