六話目 八百万神務庁祭祀管理課は総合窓口
「なー、知ってるか。昔は草木も眠る丑三つ時て本当でな。人間たちはみーんな寝てたんだ。例外はあったけどな。」
「例外って何?」
「丑の刻参りとか、そういうもの。」
「なるほどね。で、何で今その話したの?」
「寝てれば人間は静かだろ?つまり……現代の人間、夜は寝ろってことだよ!」
バン!と音を立てて卓を叩いた兎の神使に
「本当にそれな?!」
とその場にいた神使たちは満場一致で同意した。
ここは八百万神務庁祭祀管理課。ここはこの庁の総合窓口とも呼ばれ、人界から八百万神務庁へ寄せられる祈願・祭礼・奉納などの多くは、まずここを通る。
ここでは日本全国で日々行われている数えれば気の遠くなるほどの、"人間と神様との縁に関わるもの"が昼夜問わず持ち込まれ、それを大まかに調べて適切な場所に送っているのだ。
「ねえ、明日までの祈願窓口増やせない?」
「簡単に言わないで?!見ての通りどこも忙しいの!そもそも今もう日付変わったから。今持ってきたってことは直近の祈願でしょ?"明日まで"ならまだ時間あるでしょ?!」
もう日が変わった時間だというのにも関わらず、窓口へズラリと並ぶ神使たちとそれに対応する神使たち。
窓口へ並んでいる神使たちは
「今の鈴の音、日が変わった合図だね。」
「変わっちゃったか……。あとどのくらいで戻れるかな……。」
などと話をしていた。
そんな中、窓口を増やしてほしいと発言した神使に受付をしていた馬の神使が応える。
「いや、だってこれ日付的には今日……。」
「どういうことなの?……待って、どういう内容?」
「時間が二十三時五十八分、内容は願い、"明日も良いことあれば良いな"。神様への指名は無し。近くを通った私がそれを今ここに持ってきたところ。……これって明日まで班で良いんだよね?」
「…………今日までの滑り込み班行きー!」
「またなの?!」
「はい、あなたは今声が上がった窓口に行ってください。」
「え……窓口の内、何処から今の声がしたかわからないんだけど……?」
猫の神使は周りを見回す。そこには見切れるくらい膨大な数がある窓口が広がっていた。
「わからないなら入り口の案内板を見てください。」
「ここにきて入り口に戻るのか……。」
猫の神使はそう言うとトボトボと案内板を見に行くのだった。
「うーん……。」
「統括、何を悩んでるんですか?」
「窓口もう少しわかりやすくした方が良いかな?」
「……つまり……?」
「席順から全部見直しにはなるけど、"近い関係"の窓口をまとめてみたり、入り口時点でもっと各窓口の位置をわかりやすくしたいよね……あとはその他もろもろ、みんなの要望に沿って統括会議に出してみるよ。」
「……統括ー!!」
「しょっちゅうこういうことあってごめんね。あとで意見箱用意しておくから周知お願いできる?」
「もちろんです!」
「……今度は稲荷部から一枠でも窓口要員確保できれば良いのだけれど。」
祭祀管理課統括はそう呟いた。
八百万神務庁の総合窓口、祭祀管理課には今日も多くの祈願が届くのであった。




