芋のつるでモグラが釣れた。
洞窟の入口から昇る細い煙を、セツナはじっと見つめていた。
『ここでじっと待っているんだぞ。勝手についてきては駄目だ』
そう言い残してサードが洞窟へ入ってから、ずいぶん長い時間が経っている。
不安になったセツナが立ち上がろうとした、その時だった。
洞窟の暗がりから、サードが姿を現した。
「……サード様!」
セツナが駆け寄る。
サードはすぐには何も言わず、その姿をじっと見つめた。
毛並みには、まだかすかに煤の匂いが残っている。
やがてサードは、セツナの身体へそっと寄り添った。
「……待たせたな。何もなかったか?」
「はい、大丈夫です。サード様」
「そうか……それならよかった」
セツナは少し不思議そうにサードを見つめた。
「あの……洞窟の中には、何があったのですか?」
サードは一度だけ背後を振り返った。
洞窟の入口から、ひと筋の白い煙が静かに空へ昇っている。
「…………」
ほんの少し間を置いて、セツナへ向き直った。
「何でもない。ただの古い廃墟だった」
「そうですか?」
「ああ。もうここに用はない。我が主人、サイカのところへ戻るぞ」
サードはセツナの前で身体を低くした。
「しっかり捕まっておくのだ」
「はい!」
セツナはサードの背中へ乗り、いつものように毛並みにしがみついた。
サードはゆっくりと立ち上がる。
行きと同じはずのセツナの重みが、なぜか今は少しだけ重く感じられた。
「……行くぞ」
サードは地面を蹴り、山道を駆け出した。
その背後では、洞窟から昇る白い煙が、少しずつ空へ溶けていった。




